【鬼滅の刃】劇場版第一章 猗窩座再来時点 しのぶと義勇、なりたかったもう1人の自分・前編【考察】
鬼滅の刃は、だいぶ前に借りた本で最終回まで1回読んでたのですが、最近になって、キメツ学園だけでなく原作漫画までまとめ買いしちゃいました。
読み返してみると、1回読んだ程度じゃだいぶうろ覚えやったわ。(残念な記憶力)
せっかくなんで、今回は劇場版第一章 猗窩座再来時点までのしのぶの考察。比較対象として義勇もセットで考察しましたが、そちらは後編に。
- 『劇場版「鬼滅の刃」第一章 猗窩座再来』までのネタバレ含みます
- 劇場版の二章以降のネタバレはしていないので、アニメ勢も安心です
- 個人の感想です。需要と供給のバランスなんぞ知ったこっちゃありません
しのぶのしんどい笑顔
記憶がない間の無一郎が、有一郎そっくりになることで自分の心を守っていたように、笑顔でいることで孤独から自分を守っていたのがしのぶだったと思う。
しのぶが慕われてたのはあの笑顔があったからだろうし、そうでなきゃ、めっちゃ近寄りづらくて、良くて『高嶺の花』、悪くて『お高くとまってる』とか言われて孤立しそうだもんなぁ。
まあ、しのぶ的にはしんどかったと思うけどね。元々いつも仏頂面だった子が、いくら姉のためとは言え、常に笑顔キープしなきゃいけないとか。
自分の怒りを見抜いてくれた炭治郎に、多少は弱音も吐きたくなるじゃろうて……
感情むき出しに生きた世界線のしのぶ
怒りを押し殺して生きるのは実にしんどいとは思うけど、とはいえ、自分の感情剥き出しに『笑顔を消す』ってことは、『カナエ姉さんの気持ち』を踏みにじることになるし、周囲の人も怖がって遠巻きになりそうだし、色々気ぃ使われて、孤立しそう。
ん? この世界線だと、『拙者不幸でござる』顔するのはしのぶで、『しっかり者』が義勇になるのか……そして『そんなんだからみんなに怖がられるんだ』と義勇に言われちゃうしのぶ……
しのぶ「私は怖がられてない」
そして四日間、しのぶをストーキングしそば早食い競争仕掛けるたんじろー。
義勇「なんで?」
しのぶと義勇って、どっちも『天然』で『お姉ちゃんっ子』で『劣等感』があってと、割と『似たものどうし』だよね。(なのに『自分が持ってないもの』を相手は持っている)
しのぶがよく義勇にちょっかいかけてたの、無愛想で孤立しがちな義勇に、『なっていたかもしれないもう1人の自分』を見たからなのかなぁ……
しのぶと義勇、なりたかったもう1人の自分
しのぶは『人も鬼も仲良くすればいいのに』と言いつつ鬼を●し、本音は『鬼に同情』なんてする気はないし、『仲良くなれるわけねーじゃん!』とも思っていた。
![鬼滅の刃 第28話 緊急の呼び出し[吾峠呼世晴 / 集英社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/kimetsu028_01.jpg)
鬼滅の刃 第28話 緊急の呼び出し[吾峠呼世晴 / 集英社]
『鬼は嘘ばかり言う』なんて言っといて、自分に『嘘』をついてたのはしのぶ。
一方、『鬼と仲良くなんて無理』と言っときながら、鬼(禰󠄀豆子)を助けたのは義勇だった。
柱でありながらしのぶの目の前で堂々と隊律違反犯してまで、二度目の『鬼助け』しちゃうし。
図らずも、しのぶが叶えたかった『カナエの願い(人も鬼も仲良く)』を叶えたのは義勇。
憎む相手は鬼か自分か
義勇が憎んでいたのは、『鬼』ではなく『弱い自分』だったんだろうね。蔦子姉さんの時も、錆兎の時も、『怒り』の矛先は常に『弱い自分』に向かっていたし。
![鬼滅の刃 第131話 来訪者[吾峠呼世晴 / 集英社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/kimetsu132_02.jpg)
鬼滅の刃 第131話 来訪者[吾峠呼世晴 / 集英社]
だけどしのぶの『怒り』は、『鬼』に向かっていた。
『姉の意思』を受け継ごうと、姉のように振る舞ってみても、その気持ちとは裏腹に、どうしても『鬼と仲良く』なんて無理だった。
しのぶは真面目で責任感のある子だからなぁ……
背負えば背負うほど『そうなれない自分』に追い詰められ、結果、自分に嘘をつく『悪い子』になってしまった。そしてそんな自分に、ますます怒りが募る。
そらしんどいわな。
![鬼滅の刃 第50話 機能回復訓練・後編[吾峠呼世晴 / 集英社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/kimetu050_01.jpg)
鬼滅の刃 第50話 機能回復訓練・後編[吾峠呼世晴 / 集英社]
カナエ姉さんも、『自分の理想』のせいで妹が苦しむのは不本意じゃろうて……
しのぶって、余裕そうに見えて、メンタルは常にギリギリだったんだな……本来なら、キャッキャしてる年頃のお嬢さんなんだよこの子……
なのに、姉と共に『鬼殺隊に入る』と誓った日から、顔も知らない『未来の誰かの幸せ』を守る責任を背負って戦った。背負いすぎだよお嬢さん方……(『運命の殿方見つけるため』鬼殺やっちゃう人もいるってのに)
胡蝶姉妹と義勇の違いって、たとえるなら、『たくさんの不幸な猫ちゃん』をなくすために、『保護猫活動』に身を捧げるのが胡蝶姉妹。
道ばたに捨てられた『1匹の不幸な猫ちゃん』拾って、その『1匹』の幸せのために身を捧げるのが義勇って感じかな。
『多く』を救えるのは胡蝶姉妹だけど、その分『我慢』も多いし、毎回『救える』とは限らないし、手に負えなくなった時の罪悪感もでかい。
傍目には『そこまでせんでも』なんだけど、姉妹共々『知ってて何もしない』が出来ない性分だった模様。たまたま通りすがったカナヲを金投げつけて助けちゃうくらいだもんなぁ……
『1人が背負える量』なんてたかが知れてるのに、しのぶはそこに『姉の想い』まで無理して背負い込んだ。そらしんどいよ。
だから荷物の一部を、炭治郎に託すことで楽になった。
炭治郎の存在は、しのぶにとっては大きな救いだったかも。
『心のまま』か『感情まかせ』か
『自分の心に正直に生きる』って、ある意味『理想的』に思えるけど、しのぶの場合は『感情に振り回される』ことに繋がりかねなかった。
たとえば蜜璃の場合は、『自分の心の内側』から湧いてくる『素直な心』のままに生きてるけど、『鬼への怒り』が満ち溢れたしのぶが『感情のまま』に生きちゃった日にゃあ、『鬼への復讐』に生きそうで怖いよ……めっちゃ苦しんで●ぬ毒作りそう。(手段が目的に)
それは『心のままに』生きてるんじゃない。『感情の主導権』を『鬼』に奪われているだけ。
『生殺与奪の権を他人に握らせるな』は義勇さんのお言葉だけど、『感情の主導権』も、『他人』に握らせちゃダメ。
『感情の主導権』を『他人』に握られてしまうと、『自分の機嫌』を『他人』に取らせるようになる。
自分の『幸せ』は『他人任せ』にし、『自分の不幸』は『他人のせい』にする。
当然嫌われて人は離れて行くけど、本人はそれすら『他人のせい』にし、自分をかえりみなくなる。それこそ『感情の主導権』を取り戻さない限り。
そうして、『感情の奴隷』が出来上がる。
慶蔵の笑顔の秘密
『感情の主導権』を他人に握らせなかった人として、恋雪パパこと慶蔵氏がいる。
女房入水自●、娘は病でずっと寝てる、隣の道場からは嫌がらせされ門下生みんな逃げると、割と不幸に見舞われてるのに、それでも不気味なくらいずっと笑顔。
一周回ってむしろこれ無表情なんじゃないかってくらい表情があんま変わらん人だった。
![鬼滅の刃 第154話 懐古強襲[吾峠呼世晴 / 集英社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/kimetu154_01.jpg)
鬼滅の刃 第154話 懐古強襲[吾峠呼世晴 / 集英社]
『拙者不幸でござる』顔しててもいいはずなのに、笑顔でいたのは、やっぱ恋雪の存在だろーなぁ……
少なくとも父親である彼が笑顔を失うと、恋雪的には『父親から笑顔を奪った悪い子』になっちゃうんだよね。本人がなんも悪いことしてなくても。
恋雪ママがどんな人だったのかは不明だけど、『娘の死を見るのが嫌で先に死んだ』と娘本人にまで思わせてるってことは、母ちゃんは悲観的で、それを顔に出してたのかも。
そして慶蔵も、本心では『娘は長くない』と覚悟していた。でも、顔には出さないようがんばっていた。恋雪には見抜かれていたようだけど。
子供にとって、親の表情って『ご褒美』にも『罰』にもなる。
母ちゃんが死んだこと、恋雪にとっては『罰』のようなもんだってのに、父ちゃんまで不幸顔しちゃったら、恋雪はますます『自分さえ生まれてこなければ』と自分を責めてしまう。
慶蔵は、それを『知ってる人』だった。だからどんなに辛くても、父として、娘に『お前は誰も不幸になんかしてないよ』と、言葉ではなくその『笑顔』で示し続けた。
感情の主導権も他人に握らせるな
しのぶも慶蔵と同じだった。
しのぶも、姉が好きだった『しのぶの笑顔』を守ることで、自分の感情に振り回されず、その主導権をがんばって握り続けた。
![鬼滅の刃 第131話 来訪者[吾峠呼世晴 / 集英社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/kimetsu132_01.jpg)
鬼滅の刃 第131話 来訪者[吾峠呼世晴 / 集英社]
もししのぶが、怒りの感情剥き出しに鬼殺隊やってたら、柱になるどころか、その辺の鬼すら倒せずお亡くなりになっていたかもしれない。孤立し、嫌われ者になったかもしれない。
そうなれば、カナエは自分を責めることになると思う。鬼退治なんて無理だったんだって、後悔するハメになる。
だけどしのぶは、『感情の奴隷』にはならなかった。
たとえ心の深い場所には怒りと憎しみが渦巻いていたとしても、それでも『笑顔』を守ったから、仲間達から信頼され、愛され、次に託して最後まで戦い抜いた。
そういう意味では、しのぶが孤独にならないように、カナエ姉さんがずっと守ってくれていたと言える。
とはいえ、しのぶが仲間達に向けるやさしい笑顔は、本心から来る『本物』だったと思う。
それでは今回はこの辺で。
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