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【風と共に去りぬ】感想と考察 その3 幸福の守護神メラニーと幸福クラッシャーのスカーレット

風と共に去りぬアイキャッチ

マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の感想と考察その3。
今回も前回に引き続き、メラニーメイン。

  • 個人的な感想を交えた考察です
  • 読んだのは新潮文庫版(全5巻)です。名前などの表記は読んだ本に合わせています
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新潮社
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宗教のメラニー

『風と共に去りぬ』を読み終わって思ったのは『人は自分の見たいようにしか他人を見ず、信じたいようにしか他人を信じない生き物なのだ』ということ。
その『象徴』とも言えるのがメラニーだった。

メラニーって、一言で言うと『宗教』だった。
作中では周囲から聖人のように慕われて、嫌っていたのはスカーレットくらい。なぜならスカーレットは神様を信じないし、むしろ『自分が神だ』というくらいの超・自己チュー女。

実はメラニーも、スカーレットに負けず劣らず『自分が神だ』というくらいの超・自己チュー女だった。
そう思ったのが、5巻でスカーレットとアシュリの不倫現場をインディアに目撃され、言いふらされたあたり。

メラニーは、とにかく夫アシュリとスカーレットの不倫を『信じなかった』んですよね。メラニーが信じない限り、『あったこと』は『なかったこと』にされる。

そしてそれは、自動的に『嘘をついてない人』を『嘘つき』にすることでもあった。

なもんだから、メラニーの信奉者達はどんなにスカーレットが怪しくても、『まあ、メラニーがそこまで言うんなら……』とメラニー側につき、嘘をついてないインディア側を誰も信じなくなっていった。

それってもはや宗教。

メラニーはメラニー教の信者であり教祖であり神さまだった。ただ、それまでは周囲に対し害がなかっただけ。そもそも『宗教』ってのは人の心を救うためにあるもんだし。
しかし、メラニーにとって『都合の悪い話』、つまり『メラニー教の教義に反すること』が出て来た途端、怒り狂って排除した。なぜならメラニーは夫であるアシュリを信じたかったしスカーレットも彼女にとっては命の恩人であり義理の姉であり『一番の親友』として今後も付き合い続けて行きたい人だったから。だからインディアを『異教徒』として弾圧した。

……まあぶっちゃけ、なーんももってないインディア信じて超金持ちのスカーレットと縁切るより、インディア切って超金持ちのスカーレットと仲良くし続けたほうが得ではあるよなぁ……そこまで考えてやってたのかどうかは知らんけど。

『幸福』の守護神

この出来事で思ったのは、メラニーにとって『真実』って『どうでもいいこと』なんだなってこと。

インディアはきっと、メラニーに『真実』を突き付けることで、自分と一緒に大嫌いなスカーレットを糾弾して『スカッと』したかったんだろうね。なぜならこの人も『自己チュー』な人であり、『自分の見たいようにしか他人を見ず、信じたいようにしか他人を信じない人』だったから。

ところがインディアの予想に反して、メラニーはインディアのほうを糾弾した。

インディアがそうだったように、メラニーもまた『自分の見たいようにしか他人を見ず、信じたいようにしか他人を信じない人』だったから。

まあ、インディアの期待どおりの展開になったところで『インディアが気持ちよくなるだけ』でメラニー的には『夫と親友に裏切られた哀れな女』という屈辱しか得られんもんな……つまりインディアの『正義』には、『メラニーへの思いやり』が欠落していた。
だからメラニーの『正義』によって、インディアは『成敗』されてしまった。

意図的か天然かはさておき、結局、『真実』なんてメラニーには関係なかった。スカーレットが本心ではメラニーを嫌っていようが憎んでいようが、『知らなければないのと同じ』である限り、彼女を慕い続けた。
なぜならそれが、『自分の幸せ』を守ることに繋がるから。

これはこの時代だからよかったけど、現代みたいに写真や動画で突きつけられたらどーだろーなぁ……いやでも、メラニーは物的証拠を突きつけられても『こんなのAIに決まってるでしょ!』言いそうで怖いな……

ぶっちゃけ、メラニーが守ったのはスカーレットじゃなくて『自分の幸せ』だと思うよ。
この辺は、『さすがチャールズの妹』って思うわ。

本音のメラニー、建前のスカーレット

チャールズもそうだったけど、メラニーも『相手の言葉をそのままの意味に受け取る』ところあるよね。

スカーレットは『淑女のたしなみ』として『本音』を言わなかった。なもんだから、相手の言葉も『建前前提』で聞いていて、『言葉の裏の真意』を読み取ろうとした。
アシュリに関しては特にそう。アシュリの言葉を『言葉そのままの意味』で受け取れば完全にフラれてるのに、その後も『もうっ、アシュリったらホントは私を愛してるくせに!』と都合良く曲解して受け止めた。
そして腹の中ではメラニーを哀れんだり憎んだり優越感に浸ったりした。『アシュリにふさわしいのは私だ!』と。

『永遠の二番手(愛人)』の思考回路……!

『風と共に去りぬ』って『スカーレット視点』の物語だから、スカーレットが悪女でメラニーがお花畑に見えるけど、これが『メラニー視点』の物語だったら、スカーレットって『見栄っ張りなところもあるけど、いざと言う時は超頼りになるツンデレ姉御』なんだろーなぁ……
だってスカーレットが密かにメラニーを憎んでいようが『●んでくれ』と呪っていようが、メラニーは『知りようがない』んだから。

スカーレットが本音ぶちまけたら、そりゃあメラニーは死ぬほど傷つくだろうけど、プライドが無駄に高く、『淑女のたしなみ』を大事にするスカーレットは絶対そんなことしない。
チャールズに対してもそうだったけど、スカーレットって自分のプライドのために、わざわざ他人の『(都合の)いい人』になるよね。その結果、自分の『幸福』を壊しちゃう。
レット・バトラーに対しても、スカーレットにその気はないのに『淑女らしからぬ女性』という『レット好みの女性』になっちゃってさ。

その結果、『正直』に生きるメラニーは幸せで、『建前』で生きるスカーレットだけが損してる。

チャールズといいメラニーといい、『幸福な生き方』してるんだよなぁ……
メラニーは『人のいいところ』を見ようとする人だったけど、言い方を変えると『人の悪いところを見ようとしない人』だった。だからスカーレットを疑わないでいられる。
一見、『だまされてる愚か者』に見えるけど、でもその『真実』って、知ってしまえば損しかしない真実。
そういう意味では、うまいこと『損』を回避してる『かしこい人』。

おかげで、スカーレットは『しっかり者』としてメラニーに頼られてしまい、アシュリにまで『メラニーを頼むよ』なんて頼られてしまった。
スカーレットは腹の中ではメラニーを嫌い、馬鹿にしつつも、それでも『自分の本心』がバレないように苦心してた。なんかそれ、一周回ってメラニーの手のひらの上で踊ってるみたい。
だってスカーレットがどう思ってようと、得してるのメラニーのほうだもんな……

得もせんのに相手の本心を知りたがるのって、『自分のプライドのため』なのかも。
チャールズといいメラニーといい、知らないから『幸せ』でいられた。そして、わざわざ知りたがるようなこともしなかった。『重要』ではなかったから。

でもスカーレットは、そんな『不都合な真実』を知りたがった。『プライド』が高かったから。
もちろん、メラニーに『プライド』がなかったわけではなく、スカーレットの持ってる『プライド』とは『種類』が違ったんだろうね。

スカーレットとメラニーのプライド

スカーレットの『プライド』は、『自分を良く見せるためのもの』だった。平たく言うと『自己中』で『外面の良い人』。
だから自分が恥をかいたり笑いものにされるのが許せず、愛してもいない男と結婚してしまったり、フラれてるのにそれを認めず、都合よく曲解したりした。すべては自分の『プライド』を守るために。

一方、メラニーの『プライド』は、『高潔な志』を貫くためのものだった。
『外面』をよく見せるために我慢したり嘘つくよりも、『自分の心』に正直で、自分が心地よく生きることを大切にした。

例えるなら、表彰してもらうことになり、賞金や商品を喜ぶのがスカーレットで、表彰状や勲章に誇りを抱くのがメラニー。
これは『どっちが正しい』ってわけではなく、価値観や好みの問題。スカーレットは『物質的な豊かさ』を重視し、メラニーは『精神的な豊かさ』を重視していたんだと思う。
『どっちか片方だけあればいい』ってわけではなく、状況によって比率が変わるだけ。

作中でも、息子を全員失い、生活が苦しい中でも立派な墓を建てたご婦人に対し、当時『物質的豊かさ』がなかったスカーレットは『こんな無駄遣いするなんて!』と、別に自分が損したわけでもないのに腹を立てた。
『物質的な豊かさ』を重視する彼女にとって、『精神的豊かさ(すでに死んだ人)』のためにお金をかけるなんて無駄でしかなく、『無駄遣いをした人』に同情したことですら後悔した。

フツーに性格悪い……!

いや、『自分に余裕がないと人にやさしくなれない』ってのはわかるよ?
でも、スカーレットにも子供がいるのに、子供に対する愛がびっくりするほどないんだよなぁ……外面はいいから、かわいがってる『フリ』はするけど……

もしスカーレットが息子を亡くしたご婦人の立場だったとして。
お金(物質的豊かさ)に余裕があれば、盛大な葬式と立派な墓を建てただろうけど、でもそれすらも『自分をよく見せるため』なんだろーなぁ。
で、逆にお金がなければ、コソコソ質素に済ませるんだと思う。『物質的豊かさ』重視だから。


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次回はアシュリとレット・バトラー。

前回はコチラ

【風と共に去りぬ】感想と考察 その2 天然か養殖か 本当は怖いメラニーの人心掌握術

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