【風と共に去りぬ】感想と考察 その4 ダメ男アシュリともう一人の守護神レット・バトラー
マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の感想と考察その4。
ラストの今回は、スカーレットに振り回されたアシュリとレット・バトラー。
- 個人的な感想を交えた考察です
- 読んだのは新潮文庫版(全5巻)です。名前などの表記は読んだ本に合わせています
スカーレットとアシュリの想像力
無理して他人に『親切』にすると、自分が苦しくなるというのは紛れもない『事実』ではある。
スカーレットは戦争帰りの人が家に立ち寄るのを本心では嫌がった。ただでさえ少ない食料を分け与えなくてはいけないから。
だから自分達を守るために、こっそり提供する食事を少なめにしたりするのは『正しい』。『人助け』なんて、本来、余裕がある人がするべきものだし。
一方、メラニーは自分の食事を減らしてでも彼らに与えようとした。誰かを助けることで自分の大切な誰かが助けられているというのもまた『事実』。
現に『訪れた者をもてなす』という、スカーレットにとって迷惑なこの『風習』のおかげで、アシュリは帰ってくることが出来たわけだし。
ただ『想像力』のなかったスカーレットは、メラニーに言われるまでそれに気づかんかったようだけど。
戦時中、スカーレットもメラニーも、どっちも『正しいこと』をしてた。ただ『生きてる時代』によって『有利』か『不利』かが入れ替わるだけ。
スカーレットは戦時中とか貧しい時代はたくましくて『有利』だけど、みんなに余裕がある豊かな時代だと、ぶっちゃけただの性格悪い人なんだよなぁ……最初の『良い時代』のスカーレットは、典型的な『女に嫌われる女』だったし。
だから『貧しい時代』に適応しきれないアシュリは、スカーレットを『うらやましい』と思ったんかな。『ライオンの心臓を持ち、想像力というものをみじんも持たない』から。
それ悪口……!
『やらなきゃやられる』という状況では、想像力、すなわち『他者への思いやり』を持ってるほうが損をする。判断を誤るから。
アシュリはそれがあったから、戦争が余計辛かったんだろうけど、しかし口ではなんだかんだ言いながら、結局スカーレットに手ぇ出しちゃってんのはなぁ……『これはメラニーへの『甘え』であり、自分への『甘やかし』だ』という『想像力』まではなかった模様。
むしろ『妻がいながら美女に求められちゃう罪づくりなオレ☆』に酔ってる感がして、正直キモかった。(辛辣)
アシュリ、1巻時点では『ちゃんとした人』に見えたんだけどな。物語が進むにつれキモくなっていき、最後は完全にダメ男に。
やはり男として、女に言い寄られるのは悪い気がしないってことかな……『スカーレットがアシュリをダメ男にした』と言えんこともないけど、本物の『いい男』は何度でもキッパリ断るから、『元からダメ男だった』と……(白目)
スカーレットのアシュリ愛
スカーレットもスカーレットで、最後、メラニーがお亡くなりになった途端、アシュリに冷めた。あなた、かつては『メラニーがいなくなってくれれば……』なんて呪ってたくせに。
結局、スカーレットの『アシュリへの愛』って、『この私が男にフラれるなんてありえない』『この私に恋しない男はいない』っていうプライドから来る『執着』だったんじゃない?
『アシュリを幸せにしたい』んじゃなくて、『自分のプライド』を満たして『自分が幸せになりたい』だけだった。
だってアシュリは好きな人と結婚して、すでに『幸せ』なんだから。
『アシュリの幸せ』を願うなら、潔く身を引くのが『愛』でしょ?
なのにスカーレットは、横槍入れて、アシュリの『今ある幸せ』を妨害して壊そうとした。さすが幸福クラッシャー。
スカーレットはアシュリのこと、『自分が幸せになるためのアイテム』と思って見てたんだよ。スカーレットの幸福はアシュリに恋して始まり、不幸はアシュリにフラれて始まったから。
だから手に入れようと執着した。『自分が幸せになるため』に。
『禁断の愛』と言えば聞こえはいいけど、『単なる不倫』という形で、スカーレットは『アシュリの愛』を得たように思っていたけど、実際はアシュリの『息抜き用』の『都合のいいアイテム』にされていただけだった。まー、どっちもどっち。
スカーレット自身、念願のお金持ちになり、すでに『幸せ』になってるはずなのにね。なのに満足しないから、ズルズル続けちゃって。
で、本当なら、インディアに不倫バレした時に、『アシュリとの関係』も『今ある幸せ』も壊れるはずだったんだけど、幸福の守護神・メラニーが、『今ある幸せ』を守ってくれた。彼女たちの幸福は、『メラニーあってのもの』だった。
だから守護神・メラニーがお亡くなりになった途端、『今ある幸せ』はあっさり壊れ、過去形になった。
もう一人の守護神・レット・バトラー
レット・バトラーにとって、スカーレットは『魅力的な女性』に違いなかったけど、『妻』とか『母親』としては『ダメな人』だったよなぁ……その役割の人が『子供』であってはいけないから。
女は常に『男にとって都合のいい女』でいるよう厳しく躾けられてる中で、スカーレットはその暗黙のルールを破り、アシュリに愛の告白をし、本心をぶつけた。
結局、『幼稚な恋』は破れたけど、ルールを破ってでも本心をぶつけられる『勇気』を持つ女性だというのは間違いない。
だからレット・バトラーは、スカーレットに心惹かれた。
アトランタで2人が再会した時も、未亡人らしく振舞うことにスカーレットは不平不満を抱いていた。
レット・バトラーにとって、『おかしなことをおかしい』と気づけるのは、それはむしろ『かしこい』ことだった。
実は他のみんなも『おかしい』と思ってはいるのかもしれないけど、隠すのがうますぎて、もはや『おかしい』と思っていることを『ないもの』として処理しちゃってるだけなのかもしれない。なぜなら『大人』だから。
だからこそ、レット・バトラーを嫌うんじゃない?
彼の言葉を聞くことで、『おかしなことをおかしい』と気づいてしまったが最後、女にとっては『これまでの自分』を否定しまうことになるから。
男達にとっても、女に『おかしい』と気づかれてしまうことは、『都合の悪い』ことだから。
幻想の世界で生きていたい人達にとって、『現実』を見せつけてくるレット・バトラーは『悪い人』であると同時に『魅力的な人』だった。
人の目を気にして『良い子』に振舞おうとするのが人間だけど、『悪いこと』に惹かれてしまうのもまた人間。
だから『悪い子』だったスカーレットは、レット・バトラーと踊った。
自分の力で自由を手に入れられる勇気を持った女性。それがスカーレットであり、その『勇気』を開花させるべく背中を押したのがレット・バトラー。
そんなスカーレットを彼は愛してしまったけど、悲しいことに、スカーレットは『愛人』としては最高の女だけど、妻として、母としてはダメダメな人だった。
なぜならスカーレットは妻や母親をやるには、あまりにも『子供』だったから。
『大人』になったレット、『子供』のままのスカーレット
レットって一見『大人』なんだけど、スカーレットと同じ子供っぽいところがあった。ルールに従順な大人達を見下してバカにしたり、スカーレットを欲しがったり。
でもレットとスカーレットには、『決定的な違い』があった。レットが本当に『スカーレットを愛していた』ということ。
スカーレットを愛していたから、彼女のピンチには力を貸したし、彼女の幸せも守ろうとした。
アシュリを手に入れたいがために、メラニーに『死んでくれ』と呪っていたのがスカーレットだったけど、スカーレットの幸せを守るために、夫のフランクを助けようとしてくれたのがレット。
メラニーはスカーレットの『幸福の守護神』だったけど、レットもまた、スカーレットの『幸福の守護神』だった。ただメラニーは、『自分の幸福』を守るためでもあったのに対し、レットは完全に『スカーレットのため』だったよね?
惚れた女が他の男と結婚しても、離れたところからその幸せを邪魔しないよう見守り、ピンチと知れば助けに来るって、それ『愛』じゃん……
スカーレットって、惚れたアシュリの言葉は言葉通りに受け取らず『ありもしない言葉の裏』を妄想したけど、嫌いなレットの言葉は言葉通りに受け取って『言葉の裏にある愛情』は想像しなかったよね……
『私を振る男はいない』という『プライド』、『こんな男、私は好きにならない』という『プライド』がそうさせ、レットはそれを知っていたから、『愛していないフリ』をせざるを得なかった。
いつもスカーレットを助けてくれたのがレットで、アシュリがスカーレットを助けたことってほとんどなかったのにね。(むしろスカーレットがアシュリ助けとる)
この幼稚なプライド、もはやスカーレットの『不幸の元凶』になっとる……
スカーレットがそんなだから、レットの愛はボニーに向けるしかなかった。
でもレットがボニーを愛したのは、『愛するスカーレットが生んでくれた子』だったからこそじゃないの?
レットを完全に『欲しがる子供』から『与える大人』に育てたのが娘のボニーだった。愛を与えれば愛を返してくれる娘のためなら、レットは『それまでの自分』でさえも捨てることが出来た。
だけどスカーレットは、3回も結婚し、3人の子供を生んでもなお、『幼稚なプライド』に支配された『欲しがる子供』のままだった。
ブレないスカーレット
スカーレットが『欲しがる子供』だったおかげで、『物質的な豊かさ』を手に入れたのは事実だけど、そのワガママが致命傷となって、最後は『幸せ』を自ら壊しちゃったよね。アシュリとの関係も、レット・バトラーとの関係も。
ボニーの事故死だったりメラニーの死だったり、レットと悲しみを分かち合い、互いに寄り添うことが出来ていれば修復できたかもしれない。だけど『自己中』だったスカーレットは、『自分の感情』ばかり訴えて、ただでさえ弱っていたレットにトドメさしちゃった。アシュリの言うとおり、『想像力』が欠落してる人だったから。
レットとよりを戻すために、『もっかい子供作ろう』的なこと言っちゃうし。『子を失った人に言っちゃアカンセリフトップ3』に入るセリフを、『子を失った母』であるはずのスカーレットが言っちゃうんだもんなぁ……完全に子供を『アイテム』として見てますねあなた……(白目)
レットはスカーレットのことを『愛する者を傷つける人』と言ったけど、それってまるで、『親の愛』にあぐらをかき、暴言吐き散らかす反抗期の子供みたい。
でも実の親でも、子の態度があまりにひどすぎると心が折れて愛情も消え失せる。まさにそうなってしまったのがレット・バトラーだった。
そして『愛』を失って初めて、『愛』の存在に気づくのがスカーレットだった。そりゃあレットがどんなに尽くしても、スカーレットは今ある『愛』の存在に気づかないから、『愛』が返ってくるわけなかった……!
失ってから慌てて『愛』を返そうとしても、『それ、自分が愛してもらいたいからそうしてるだけですよね?』としかならんって!
そしてラストは『実家に帰って乳母に甘えてこよう。英気を養ってもう一度レットを落とそう(要約)』だった。
この期に及んで『与えること』より『もらうこと』や『手に入れること』を考える。
『過去は振り返らない』と言えば聞こえはいいけど……あなたのそーいうとこ、最後までブレませでしたね……(嫌味)
それでは、『風と共に去りぬ』の感想と考察は今回で終了です。
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