【風と共に去りぬ】感想と考察 その1 幸福なチャールズと自分を粗末にしたスカーレット
今回はだいぶ古い作品ですが、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の感想と考察。
だいぶ前に読んで感想も一通り書いてたんだけど、公開のタイミング逃して長いことほったらかしになってたのを最近になって思い出した……
需要なんぞ知ったこっちゃありません。
- 個人的な感想を交えた考察です
- 読んだのは新潮文庫版(全5巻)です。名前などの表記は読んだ本に合わせています
『風と共に去りぬ』のざっくりとしたあらすじと感想
物語の舞台はアメリカ、南北戦争があった時代。日本だと江戸時代の終わり頃から明治あたりですね。
奴隷とかふつーに出てくるけど、その辺の歴史問題語る気ゼロなんで(よく知らんし)、あくまで登場人物の感想を書いてきます。
1巻の前半は説明が多くてちょっと退屈だなというのが正直な感想ですが、レット・バトラーが出て来たあたりから面白くなってきます。
ざっとした話の流れは、
物語の始まりは戦前の豊かな時代
↓
結婚出産南北戦争やら夫と死別やら
↓
戦後の貧しい暮らし
↓
二度目の結婚出産
↓
実業家として成功
↓
また夫と死別
↓
三度目の結婚etc……
最後まで読んだ感想を一言で言うと、
登 場 人 物 全 員 自 己 中
って感じかな……特に主人公が……(白目)
幼子抱えて戦中・戦後を生き抜くたくましさ、当時は根強かった『女はこうあるべき』という同調圧力をはねのけ、『実業家』として成功しちゃったり、金にせよ男にせよ、欲しいものは手に入れようとする、主人公・スカーレットのそのバイタリティはすげぇと思う。
なんだかんだ言っても、『時代』を切り開くのは『こういう人』なんだろうな……
でもその一方で、フラれた腹いせで、好きでもない男(チャールズ)と結婚したり、金目当てで妹の彼氏(フランク)たぶらかして結婚しちゃったり、自分が生んだ子供を内心邪魔と思ってたり、アシュリとも『いやあんたら純愛ぶってるけどそれ不倫ですよね?』ってよろしくやってんのがなぁ……
『自由奔放』と言えば聞こえはいいけど、シンプルに『性格悪い』としか……
とりあえずスカーレットの長男・ウェイドくんは将来きっとグレる。(確信)
幸福なチャールズ
スカーレットは3回結婚するんだけど、最初のお相手が、メラニーの兄・チャールズ。
スカーレットが彼と結婚した経緯が、『アシュリにフラれたあてつけ』という、チャールズ的にはなかなかひどい理由だった。
しかも結婚してすぐ戦争に行って、すぐ病死するし。
とまあ、一見『かわいそうな人』であるチャールズだけど、でもこの人、実は『超勝ち組』で、すげぇ『幸せな人』だった。
だって誰と結婚したところで、チャールズは戦争に行ったわけでしょ?
結果論とはいえ、結局死ぬ運命であったなら、チャールズ的に『スカーレットとの結婚』って最高のものだった。本来なら『叶わぬ恋』が叶ったわけだから。
スカーレットが手に入れることが出来なかった『好きな人と結婚出来た幸せ』をチャールズは手に入れ、ついでにスカーレットに言い寄ってた男達を『ぐぬぬ……』させることも出来、そりゃもう最高に気持ちよかったと思う。
しかも実戦経験する間もなく病死。戦場の恐怖を味わうことも、厳しい現実に打ちひしがれることも、そしてスカーレットへの『疑念』を抱くヒマもないまま逝けた。
おまけに、ちゃっかり子孫(ウェイド)まで残すことも出来たし。
死んだ後も、外ヅラのいいスカーレットが『夫の死を悲しんでる妻』のフリしてくれてるおかげで、周囲の人達からは『よっぽどいい夫だったのね』と株が上がる上がる。
うーん、これは勝ち組ですわ……
チャールズの鈍感力
チャールズって『自分の幸せ』が一番重要だったから、『スカーレットが幸せかどうか』に興味がなかった。
いや『興味がない』というよりも、『自分がこんなに幸せなんだから相手も幸せに違いない!』と信じて疑ってなかっただけって感じかなぁ……『あれっ?』と思うことがあっても、結局は都合のいいよう解釈して自分を納得させてたし。
第一、『スカーレットの不幸』は『スカーレットの身勝手の代償』であって、チャールズ関係ないのよね。
むしろチャールズは『スカーレットの身勝手』に巻き込まれた被害者で、別になんも悪いことしてない。鈍感なだけで。
チャールズとスカーレットって、『結婚』に対して『幼稚な妄想』してたところは似てると思う。(まあ、十代の若造なんてそんなもんだろうけど)
ただ、その『幼稚な妄想』が、現実のものに『なった』か『ならなかった』かの違いがあっただけ。『ならなかった』スカーレットは『現実』に打ちひしがれながら生き、『なった』チャールズは『夢見心地』のまま逝った。
そんなチャールズと結婚したことにより、スカーレットは、アシュリが語った『結婚というのは、ふたりが似たもの同士でないと丸くおさまらない』という忠告を聞き入れた形になっちゃったのはなんとも皮肉。(※『丸く収まったから両者幸せになれる』とは言ってない)
『いいひと』だったスカーレット
スカーレットって、少女漫画だと、ヒロインよりむしろヒロインいじめてくる『嫌キャラ』ポジションだよなぁ……痛い目に遭って反省するどころか、『違う。そうじゃない』って方面に行っちゃうし。
なのに、めっちゃ『いいひと』だった。
読者からすりゃ超・自己チューな『悪女』だったんだけど、一周回って『誰かの都合のいい子』になってる。チャールズしかり、メラニーしかり、アシュリしかり。
スカーレットは『アシュリへの無関心アピール』『悪口言ってたハニーやアシュリを奪ったメラニーへの嫌がらせ』のつもりでチャールズとの結婚を決めた。
つまりチャールズは『嫌がらせの道具』にされただけ。『やさしい人』はそんな『ひどいこと』出来ないけど、スカーレットには『思いやり』というものが欠落していたからそれが出来た。
ただ、アシュリにしてみれば、自分に告ってきた女が、フッたその日に『自分の婚約者の兄貴』と結婚を決めて親戚になるとか、『無関心アピ』どころか『未練タラタラアピ』にしかなっとらん……!
メラニーも、スカーレットと姉妹になることふつーに喜んどるし……
もしスカーレットに『思いやり』があり、自分が『悪い人』になってチャールズをきちんと振ることが出来ていたら、スカーレットは幸せになれたかもしれない。
一方、スカーレットにフラれたチャールズは、男達に笑われ、失恋のショックを引きずったまま、『自分を愛してくれてはいるが自分は好きじゃない女の子』と結婚し、失意のまま戦争に行き、自分の不幸を嘆きながら逝ったかもしれない。
そして結婚相手がチャールズを本気で愛してくれている女性だった場合、文字通り『愛する夫に先立たれたかわいそうな未亡人』が誕生したかもしれない。
もしこういう未来だったら、チャールズは本物の『かわいそうな人』であり、スカーレットは『悪い人』かもしれない。
しかしそれは、彼が背負うべき『責任』であり、スカーレットは無関係。
ところが、スカーレットは『いいひと』だった。
チャールズにとってスカーレットは『自分の願いをなんでも叶えてくれるド●えもん』だった。『スカーレットとの結婚』というチャールズの願いを叶えてあげたんだから。スカーレットの願いを叶えてあげなかったアシュリとは逆。
自分が大事なチャールズ、自分を粗末にしたスカーレット
なんというか、スカーレットって『他人への嫌がらせ』のためになんかやらかすけど、思慮の浅さ故に誰にもダメージを与えられず、むしろ返ってきたブーメランが全部クリティカルヒットして自分がダメージ受けてるよね……
他人を粗末に出来る人は、自分自身も粗末に出来る。ただ、その『自覚』がない。
現にスカーレットは、『他人への嫌がらせ』なんて『しょーもないこと』のために、人生においてめっちゃ重要な『結婚』という大イベントを使ってしまった。
まさに『感情』の奴隷。
結果として、スカーレットはその気もないのに『他人の幸せのために我が身を犠牲にする超(都合の)いい人』になってしまい、チャールズが欲しいものすべてを与えて幸せにしたが、自分は『身勝手の代償』として『愛する人と結ばれる幸せ』も『独身の自由』も失い、自分で自分を不幸にした。
もしチャールズに、『ありのままのスカーレット』を理解しようとする『思いやり』があったなら、彼女の不幸に気づいたかもしれない。
だけど、『恋は盲目』だった。
『盲目』だったから、チャールズはスカーレットの口から出た言葉を言葉通りに受け取り、彼女の態度もすべて自分に都合のいいよう解釈した。
なぜなら『彼の頭の中のスカーレット』は『自分を心から愛してくれている』という『自分に都合のいい前提条件』を元に作られた『幻想の存在』だったから。お前、本物のスカーレットにまったく興味ないやろ。
そして幸か不幸か、その夢から醒めるための『機会』も『時間』もなかったもんだから、『自分はスカーレットと相思相愛!』と勘違いしたまま、悲劇のヒーローを堪能しながら逝ってしまった。
二番目の夫だったフランクは、時間が経つにつれて『スカーレットの愛』に疑念を抱き、思い悩んだけど、戦争がなけりゃあチャールズがその道をたどるはずだったんでは……?
たしかに、『本当は愛されていない』『若くしてこの世を去る』という点では、チャールズは『不幸』だったかもしれないけど、その現実を知らぬまま、『夢見心地のままこの世を去れた』という点では『幸福』だったと思う。
ということは、寿命の短さはその『幸福』の『対価』だった……???(もしかすると、スカーレットと結婚しなきゃ長生きしてたんでは……?)
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次回はメラニー。
