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【鬼滅の刃】劇場版第一章 猗窩座再来時点 しのぶと義勇、なりたかったもう1人の自分・後編【考察】

鬼滅の刃 アイキャッチ

今回は、前回のしのぶの比較として義勇の考察。
劇場版第一章 猗窩座再来時点までの内容となります。

前編はコチラ

【鬼滅の刃】劇場版第一章 猗窩座再来時点 しのぶと義勇、なりたかったもう1人の自分・前編【考察】

  • 『劇場版「鬼滅の刃」第一章 猗窩座再来』までのネタバレ含みます
  • 劇場版の二章以降のネタバレはしていないので、アニメ勢も安心です
  • 個人の感想です。需要と供給のバランスなんぞ知ったこっちゃありません

第1話で出会ったのがしのぶだったら

柱の中で、一番、鬼に対して『異質な人』だったのが、水柱・冨岡義勇。
彼の『異質さ』がもっとも輝いていたのが第1話。

もし第1話で、炭治郎が出会っていたのが義勇ではなく、たとえばしのぶとかだったら、果たして禰󠄀豆子は生きていたんだろーか?
むしろ、那田蜘蛛山ん時みたいに、『楽に死なせてあげますから』『それが妹さんのためです』と、炭治郎が『うん』と言うまで説得しそうなんだよなぁ……100%の善意で。

鬼滅の刃 第44話 隊律違反[吾峠呼世晴 / 集英社]

鬼滅の刃 第44話 隊律違反[吾峠呼世晴 / 集英社]

だけど、そんな『善意』じゃ炭治郎は救われない。

少なくとも、妹の命乞いする炭治郎に心底同情はすると思う。でもそれはそれとして、『鬼を見逃す』なんてするか……?
『鬼殺隊士としての責任』の観点で言うと、そんなの『ありえない』んだよね。それは他の柱も、一般隊士だってそう。
鬼を『元人間』と理解はしていても、所詮は『鬼』。『人間とは別の生き物』と思ってる。そして『鬼』を斬るのが鬼殺隊の『使命』なワケでして。

あの手この手で炭治郎に『妹をあきらめる』よう説得するか、力づくで解決しそうだよな……結局、誰も『炭治郎の願い(俺から妹を奪わないで!)』は受け入れない。
一見、『慈悲深い』ようで『無慈悲』。

だけど義勇は違った。
炭治郎にブチギレた。

鬼にキレたしのぶ、炭治郎にキレた義勇

すべてを失った炭治郎にブチギレるとか、恐らく他の柱からすると、『こんなかわいそうな子にひどい!』と思われるだろうな……

だけど義勇は、炭治郎にブチギレた。(大事なことなので2度言いました)

鬼滅の刃 第1話 残酷[吾峠呼世晴 / 集英社]

鬼滅の刃 第1話 残酷[吾峠呼世晴 / 集英社]

その時点の義勇は、炭治郎と禰󠄀豆子の『生殺与奪の権』は、『炭治郎と禰󠄀豆子が握っている』と思っていた。なのに『妹の命乞い』をするってのは、自らの権利を放棄し、相手の『ご機嫌』に丸投げする行為でしかない。

しのぶは『鬼』を憎んでいた。
義勇は『弱い自分』を憎んでいた。

『弱い自分』を憎む義勇にとって、鬼よりも、自ら『圧倒的弱者』に成り下がる炭治郎のほうが許せなかった。
ましてや、他人に説得された程度で『守るべき妹をあきらめる弱い男』なんて笑止千万。

だから炭治郎に『妹を守りたければ俺を●せ!』と、『自分の尊厳』も『命の責任』も、本人に守らせた。

生殺与奪の権を他人に握らせるな!

『鬼殺隊士としての責任』の観点だと、義勇のしたことは『ありえない』。
だけど、炭治郎にとっては『得られるもの』がある。

最初、炭治郎の選択肢はふたつだった。
『あきらめて妹を斬ってもらう』か、『ひたすら妹の命乞いをする』か。
どっちに転んでも炭治郎は禰󠄀豆子を失い、『妹をあきらめた情けない兄』か『他人の情けにすがった無力な兄』のどちらかしか残らない。

ところが義勇によって、『妹のために命を賭けて戦う』という第三の選択肢が発生した。

鬼滅の刃 第1話 残酷[吾峠呼世晴 / 集英社]

鬼滅の刃 第1話 残酷[吾峠呼世晴 / 集英社]

なかなか無茶なこと言うよね。ただの炭焼き少年が、厳しい修行を積んだ剣士に勝てるわけがないのに。
でもここで重要なのは『勝ち負け』ではない。『理不尽に刃向かった』という『事実』が重要。

ここで『理不尽に刃向かう』という選択が出来なければ、炭治郎はこの先『圧倒的弱者』としてねじ伏せられる人生が待っている。
だけど戦えば、『生殺与奪の権を自ら放棄しなかった』『兄として妹をあきらめなかった』という『事実』が残る。
『妹のために命を賭けて戦った勇敢な兄』を手に入れることが出来る。
どんなに大きな絶望に打ちのめされても、それさえあれば、立ち上がる勇気は得られるかもしれない。

ただしこれ、義勇にとっては、なんの『得』もないんだよね。

冨岡義勇、魂の叫び

本来、初対面の炭治郎に、そこまでする『義理』も『責任』も、義勇には『ない』はずじゃん。
どのみち義勇は、最終的に禰󠄀豆子を斬るつもりだったろうし。

『死に物狂いで妹を守る少年』をボコった上で妹を●したんなら『かわいそうな少年から妹を奪った悪者』になる。
『相手が承知の上で鬼化した妹を●した』んなら『人助け』になる。

どうせだったら『いい人』になりたいじゃん。しかも『結果が同じ(妹を●す)』だってのに、わざわざ自分を『悪者』にするなんて『損』でしかない。

ところが義勇は、本来背負わんでいい『罪』を背負うことを選択した。
炭治郎に、かつて、何も守れず泣くしかなかった『圧倒的弱者』の自分を見たから。

鬼滅の刃 第1話 残酷[吾峠呼世晴 / 集英社]

鬼滅の刃 第1話 残酷[吾峠呼世晴 / 集英社]

第一話の義勇の怒りは、『柱』でも『鬼殺隊士』でもなく、かつて『弱かった』が故に何も守れず苦しんだ、『冨岡義勇』の『魂の叫び』だった。
そこには『損得勘定』も『嘘偽り』もない。本人が『そうしたい』と思ったからそうしただけ。
炭治郎は、その『叫び』に応えた。
そして妹のために戦った炭治郎に、禰󠄀豆子は応えた。

義勇は当初、炭治郎は『感情任せにヤケクソで向かってきた』と思ってた。
ところが、炭治郎が感情に振り回されることなく想像以上にガチ●しに来てたのと、禰󠄀豆子がホントに他の鬼と違ったもんだから、『義勇の主張』は正当性を失い、漢を魅せた炭治郎への筋を通した。たとえ鬼殺隊士としての職務放棄になったとしても。

鬼滅の『いい人』製造機

たぶんこの人、禰󠄀豆子斬った後は、自分が『憎き妹の仇』として、炭治郎の『生きる理由』にでもなるつもりだったと思うんよ……(ジャンルが『復讐モノ』に)
ところがそんな『嫌な役割』は、禰󠄀豆子によって回避されてしまった。
おかげで義勇は、図らずも『超いい人』になってしまった。竈門兄妹によって。
そら義勇は、自分の腹切る覚悟でこの兄妹守らなアカンわな……
竈門兄妹、関わった人をみんな『いい人』にしちゃう才能あるわ。相手が鬼だろうと。

炭治郎が出会ったのが義勇だったおかげで、炭治郎は『妹のために命を賭けて戦った勇敢な兄』を手に入れただけでなく、『妹の命』まで守った。
そして鬼殺隊も、のちの『日の呼吸の剣士』と『太陽を克服した特別な鬼』を手に入れた。さらには、無惨討伐のチャンスまで手に入れるという、千年に一度のミラクルが起こった。
作中では『炭治郎と禰󠄀豆子という歯車によって膠着状態が動き出した』と語られたけど、義勇の他とは違う『異質さ』もなきゃ動かんかったな……

義勇「俺はお前たちとは違う」(ホントに違った)

猗窩座と激突したのが義勇だったワケ

炭治郎と禰󠄀豆子の『生殺与奪の権』は、2人の力で守り抜いたもの。だけどその『選択肢』を発生させたのは、『鬼』よりも『弱い自分』が許せない義勇だったからこそ。
妹の命乞いする炭治郎を、『哀れむだけ』の人じゃ無理だった。

つくづく、猗窩座と激突したのが義勇と炭治郎で良かったと思うわ……
『倒すだけ』なら他の柱でも出来たかもしれない。だけど『狛治』は救えただろうか?

狛治だった頃の『記憶』が戻って自爆スイッチがオンにならなければ、猗窩座は『頸』という弱点を克服した『鬼を超える鬼』になってたかもしれないんだよね……そうなれば、城外乱闘に持ち込んで夜明けまでの持久戦でしか倒せないエクストラモードに突入だ!(※翌日が雨とか曇りだと詰み)
これには無惨様もにっこり☆

……無惨サイドの敗因は、猗窩座の対戦相手を義勇にしちゃった鳴女ちゃん……?

鳴女「猗窩座様のほうから行っちゃったんですよ……」

なんにせよ『鬼への怒り』を糧に戦う人では、『狛治の記憶』までは取り戻せなかったと思うの。
狛治が恋雪の元に帰るには、狛治と同じ『弱い自分』が許せなくて、『守るべきもの』のために命を賭けられる、義勇と炭治郎じゃなきゃダメだった。

人だけでなく鬼まで救った義勇と炭治郎って、カナエの願いを受け継ごうとしてたしのぶが『なりたかった自分』だったかもしれない。義勇と炭治郎って、良くも悪くも『自分の心のまま』に生きてるから。

だけど義勇は、しのぶのように嘘でも笑顔で振る舞うことも、炭治郎のように前向きに生きることも出来ず、そんな自分を『未熟』と思ってた。

人間、思った通りにいかないね。


それでは今回はこの辺で。
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