アニメ進撃の巨人 The Final Season 85話『裏切り者』感想と考察 虐殺に走ったイェーガー派と裏切られた自由の翼【ファイナルシーズン】
アニメ進撃の巨人The Final Season85話『裏切り者』の感想と考察。
今回は、罪を背負ったマガトさんと背負う気ゼロのエレン、そもそもイェーガー派の説得は可能だったのか、島民がイェーガー派になってしまった理由、虐殺者となってしまったダズとサムエル、真の『裏切者』は誰だったのかなどを考察しとります。
原作漫画の大きなネタバレは注意書きしてますが、そうじゃないところでも察せられる程度にしれっと混じってるので、アニメ派の方はご理解の上でお願いします。
なお、当考察は原作最終回以降エレン・イェーガーさんに死ぬほど厳しいので『エレンすてき☆ カッコいい!』と思っていたい方は、悪いこと言わんので引き返されることをおススメします。
ピュアピュアハートのイェーガー派
飛行艇に希望を託そうにも、港が占領され『そう簡単には飛ばさせねーよ!』というドSの神様の神業が発揮された85話。
でもまあ、たしかに『これから処刑タイムだ!』というタイミングでいきなり車力ちゃんが現れ、イェレナとオニャンコポン、ジャンをパックンちょしてくという謎の行動をして見せたからね……
あれさえなければ、悟られることなく飛行艇ゲット出来たかもしれないけど、あのタイミングでしかイェレナ達の回収は出来なかったからなぁ。
それにしても、ここに集まった人達って『エレンのことを信じてる』から来たんだよね……?
エレンって、『大量虐殺』という『超悪いことをやってる人』なんだけど。
いやまあ、アルミン達はエレンのこと知ってるから『俺達のためにこんなことを!』と思ったのかもしれんけど。知らん人からすりゃあ、ふつーに怖くね? そんなことする人。
機嫌ひとつで人●しそうだし。
なのに、その『超悪いことやってる人』を信じてこんなに集まってがんばるって、ピュアなの?
『悪魔の島』どころか、むしろ『純真無垢なピュアピュアハー島』なのここ?
壁を壊したアニ達、壁を壊さないアルミン達
さて、飛行艇奪取のために、すでに戦う気のアニと、すぐには賛同できないアルミン達。
一度は詰め寄ってはみるものの、そりゃあ『強要出来る立場』じゃないもんなあ……結果として『押してダメなら引いてみろ』になってるけど。
アニの『あんた達なら壁を壊さなかった』って、それってつまりアニ達は『自分達のために壁を壊した』という自覚があるからなんだろうね。
アニはさっさと使命を果たして父の元に帰りたかった。
ライナーは英雄になりたかった。
ところが、マルセルが食われてしまってから狂い始めた。
このままなにも果たせずノコノコ帰ったら、巨人を剥奪されるかもしれない。だから進むことを選んだ。
つまりアニ達は『恐怖』に追い詰められ、『我が身の保身のため』に壁を壊した。
そしてそれを命じた大人達も、『世界を救うため』という大義名分を掲げといて、実際は島の資源が欲しいだけ。つまりは『自分達の欲望のため』に、何も知らない子供達に嫌なことをさせた。
『壁の王』の『欲望』によって閉ざされた壁は、誰かの『欲望』のために破壊された。
だからライナーは『そういうことか』と思ったんかね? エレンも『壁を壊せる子』だから。
一方で、アルミン達は違う。
ここにいるのは『自分の欲望のため』じゃないんだよね。
『自分以外の誰かのため』にここにいる。そんな人達だから『壁は壊さない』。
『欲望』がまったくないわけじゃないけど、『誰かに託す』ことが出来る人達。それが『調査兵団』だからね……ガチ勢はやはり違う。
『罪』を背負ったマガトさん、背負う気ゼロのエレン
前回から一転、マガトさんが大人になりました。
そりゃあガビにあんなことさせといて、それでもまだ『悪魔めー!』って言うようなら、もういないほうがマシなダメ大人だもんな……
頭を下げた瞬間、この人は『マーレの元帥』ではなく『1人の人間』に戻った。
さて、エレンは『すべてを消し去ろうとしてる』けど、マガトさんは『血に塗れた歴史』を『忘れることなく後世に伝える』と言っている。これが『罪を背負う』ってことなんだろうね。
つまりマガトさんと『逆』のことをやってるエレンは、『罪』を背負うつもりなんかないってことになる。だって『過去』を消し去る理由って、そこで発生した『罪』を消し去るためじゃないの?
壁の王と同じ。『どーせ許されないんだから謝るだけ損だよね☆』と壁の中に引きこもり、記憶を奪うことで『謝る相手』を視界から消し去ったのが壁の王。
エレンも『すべて消し去ってチャラにしようとしてる』だけ。
それって、これまで積み重ねてきた『人類の歴史そのもの』の『否定』だよね?
『過去』があるから『今の自分』があるはずなのに、その『過去』を否定するって、むしろ『今の自分』の否定。たとえそれが良いものであろうと悪いものであろうと。
マガトさんはそれが『許せない』。だってそれを許すってことは、ガビ達が生まれてきたことを『否定』するってことだから。
ジークお兄ちゃんの『生まれてくることを否定するための計画』を『バカな計画』なんて言っておきながら、むしろ超肯定してるぞエレン!
イカのハンジとタコのエレン。第三の選択肢
さて、迷いが生じているアルミン達とは対象的に、ハンジさんは方針がハッキリしてますね。
だってここで退いたら、かつて戦ったサネスさん達王政に対して筋が通らないもん。
退くってことは、それって『これまで積み重ねて作ってきた自分自身』と『同じ志を持って戦い、心臓を捧げてきた仲間達』の『否定』だよね?
一方でまったく筋が通ってないタコ男がエレン。過去に成長したようなこと言っといて、今じゃあそれらすべて台無しにする行動を取っている。
ハンジさんが筋の通ったイカならエレンは妖怪ふにゃへにゃタコ男。けどたこ焼きはおいしい。
エレン「ジャンルが鬼●郎に!?」
しかも壁巨人くん、もう大陸に上陸しちゃってるもんな……
この場合、
- 限りなく低い可能性に賭けてここにいる数百人の『説得』に時間を費やすことで大陸の幾千、幾万人ぶんの犠牲者を増やす
- ここにいる数百人の命を犠牲にして大陸の救える命を幾千、幾万人ぶん増やす
この二択しかねぇ……!
なんかこの状況って初壁外調査の時と似てる。仲間の命と壁の中の人類、どっちを選ぶか。
あのときと違うのは、すでに大陸の殺戮が始まってるのと、●される数が圧倒的に違うってことだよね……
ちなみに1を選択して『説得』に失敗しても『ここにいる数百人』との戦闘になるのよね……仮にそれで飛行艇をゲット出来たとしても、時間を浪費したぶん戦った相手プラス幾千、幾万の犠牲が増えるわけでして。
おまけに、説得のスキに飛行艇ドカーン! されたら世界も自分らも終わりだもんな……
『戦闘を回避し、なおかつ飛行艇もスピーディーにゲットする方法』なんて、そらもう『だます』くらいしかなかった……!
いやもうこの状況下で『三つ目の選択肢』をひねり出しただけ、アルミンがんばったよ……
時間をかけて考えれば、もっといい『だまし方』を思いついたかもしれないけど、その『時間』がそもそもないわけで。
しかも、『だます役』が消去法でアルミンとコニーという正直者2人組しかいないという……(ハンジさんとジャンは死んだことになってるしミカサは残念な言語力だし)
アルミンもコニーも、がんばったほうだと思う……そもそも人をだましたり嘘ついたりが苦手な子達だもん……
結局のところ、まずは3を試し、次に2というのが、一番犠牲が少ない選択だったんだろうね……
イェーガー派に『説得』は可能だったのか?
結論から言わせてもらうと、そもそもこの人達に『説得』は通じない。
なぜなら『説得に応じる人』は『エレンやイェーガー派のやってることに疑念や迷いを抱いている人』だから。
そんな人は、最初から『イェーガー派としてここには来ない』のよね……
『交渉』はどうかというと、そちらはもっと無理。『交渉』は相手に『得』を提示しなくてはならないから。
世界は、島に『得』と呼べるものを差し出すことが出来ない。
『不可侵条約結ぶ』ったって、それを結ぶのに必要な『信用』が世界にも島にもない。
もうこの辺は『過去の行い』が悪すぎた。お互い、『恨み』と『不信』しかない相手とそんな条約結んだところで、『得』どころか『将来のリスク』としか取られない。現にフロックは『不安の芽は摘んどくかー』ってアズマビト●そうとしたし。
おまけに島は百年間、外の世界と一切交流持たなくてもやってこれたという『事実』が存在するからね……王政が作った『壁の外の人類は滅びました』という教科書通りになるだけ。
そしてなにより、この人達は『臆病者』だからここにいる。
島民がイェーガー派になったわけ
そもそもここにいらっしゃる皆さまがイェーガー派になったのは『損得勘定』と『巨人に屈した臆病者』だからだもんな……
前回も考察したけど『『損得』で動くヤツは『損得』でしか動かない』、つまり『『説得』で動くことはない』ってことなのよね。
そして最大の問題は『臆病者』だってこと。
なんか前回のジャンといい、『地鳴らしを止めることで世界に報復されるんじゃないか』と、まるで『世界を恐れているようなこと』をみんな言ってるけどさ。
ホントに恐れているのは『世界』じゃなくて『巨人』じゃないの?
だって『エレンを止める』ってことは、
この超特大始祖巨人with幾万の超大型壁巨人くん軍団に立ち向かえ
ってことだから。
………うん。
ムリぃ……
通常の巨人だって無理だというのに、それよりもっとデカくて数がべらぼーでさらには巨人の親玉の超特大始祖の巨人……
ムリぃ……(大事なことなので二度言いました)
『勇気あるおバカ』でも難易度高杉くん……
そりゃあ……飛行艇ドカーン選ぶよな……
巨人に屈した臆病者たち
イェーガー派や島民ってさ。一見、『島を守るため』という『大義名分』を掲げているように見えて、結局『強大な敵と戦いたくありません』ってことじゃないの?
過去に、ピクシス指令が言ったんだよね。『一度巨人の恐怖に屈したものは二度と巨人に立ち向かうことは出来ない』って……
この人達は『巨人の恐怖』に屈した人達。かといって『世界』に立ち向かうのも怖い。
だから『強大な力』に立ち向かうことよりも、シッポを振って『絶対服従の奴隷』となることを選んだ。
それがここに集まった人達じゃないの?
そりゃあ『絶対服従の奴隷』説得したって意味ないよ……『ご主人様』を説得しないと。
アルミン達だって、最初から『強い人』だったわけじゃないんだけどね。ジャンなんてむしろ『弱い人』のカテゴリにいた。
ただ『強い人』を理解しようとする『勇気』があった。だから自分の弱さと向き合い、強くあろうとあがいた。
しかし、アルミン達が彼らを理解出来ても、彼らは『勇気あるおバカ』を理解出来ない。
なぜなら『弱い人』が『強い人』を理解できたら、それはもう『強い人』だから。
『弱い人』が『弱い人』のままなのは、『強い人』を理解するのが怖いから。
だって『強い人』は、『強大な敵』に立ち向かわなきゃいけないもんな……『弱い』から立ち向かえないのか、立ち向かいたくないから『弱いまま』でいようとするのか……
『誇り』を死守したアズマビト
さて、『『損得』で動くヤツは『損得』でしか動かない』わけだけど、逆もしかりで、『損得だけでは動かない』と見事に証明してみせたのがキヨミんだった。
たしかに『損得勘定』で島に来たけど、『誇りまでは失っていない』は本物。
さすがキヨミん。『誇り』もタダでは失わない……!(むしろそれは『損得』では?)
だってフロック、まるで『交渉』してるかのように振る舞ってるけどさ。キヨミ様達に『得』ないよね?
言ってること要約すると『俺らの帝国のために働け。対価はお前らの命ね☆』って、それ不当な労働の強要だもんな……キヨミんの部下●しまくってるし……(ミカサのご先祖も、似たような感じで壁の中に閉じ込められたんじゃあ……)
アズマビト株式会社に不当な手口で経営統合を迫ったフォルスター株式会社のブラック経営者に立ち向かったキヨミん、これはコンプラの勇者……!
キヨミ「当社はブラック労働を撲滅し、労働に対する正当な評価と対価の提供、従業員の快適な労働環境維持に努めます!」
それにしてもアニメ版のフロック、カラーだと顔が幼く見えるなぁ……でも年齢考えるとそうなのか。
なお、自分が『身の程をわきまえる側』だとは思ってない模様。
キヨミんの『ご忠告』を聞いてはいるけど『理解』はしてなさそうだよね……世界が滅びることで、島民共々『地獄が終わった』と思ってるようだけど、キヨミんが言ってるのは『新たな地獄の始まり』のことだからね……
だってイェーガー派が今、ひとつにまとまっているのは、『外の敵』の存在のおかげなわけでして。
『外の敵』がいなくなれば、今度は『内側』に敵を求めるだけなんだよね。壁の王と一緒。
かつてピクシス指令が言ってた『人間同士の争いで滅ぶ』や、キヨミんの『世間が狭くなっただけ』『●し合いは続く』ってそういうことだよね……
『虐殺者』となったダズとサムエル
飛行艇の前に立ちはだかったのは、よりにもよって同期のダズとサムエル。
アルミンとコニーがめっちゃ挙動不審……
嘘がヘタだね……!
さて、アルミン達が『始祖の巨人』相手に立ち向かうことが出来たのは、『やりすぎだ』ってのもあるだろうけど、エレンのことを『仲間』『友達』と思ってるから。
エレンを『仲間』と信じているから、話し合いに賭けることが出来るし、こんなことさせたくないので、本気で止めに行ける。
ダズ達が『アルミン達なら止めるかも』と思ったってことは、はたから見てもエレンとアルミン達は『友達』だと思っているからでしょうね。
でもこれってさ。
逆を言うと、ダズとサムエルは、エレンのことを『同期』と思ってはいても『友達じゃない』と言っているも同然ってことだよね……?
だってダズ、『お前らなら敵国だろうとエレンの虐殺を止めるんじゃないかって~』って言ったよね?
エレンがやってることを『虐殺』って言ったよね?
こんなセリフが出てくるってことは、『敵国』だろうとそこに暮らしているのは『人』だと『認識』しているってことだよね?
『本来なら止めなきゃいけない超悪いことやっている』という『認識』があるってことだよね?
第一、『同期の虐殺行為を応援する』って、それもう仲間でもなければトモダチでもないやろ……
エレンはあなた達を、そしてあなた達はエレンを『都合のいい子』にして利用してるだけじゃない……
しかもあなた達は『軍人』とは戦ったけど、『地鳴らし』で死ぬのは、お年寄りからおぎゃあと生まれたばかりの赤ん坊まで含めた民間人がほとんど。その人達を実際に『虐殺』してくれるのはエレンであって『自分達じゃない』よね?
かと言って、エレンと一緒に『罪』を背負うつもりはあるのかというと、『ない』と思う。
だって島の外の人類が一人残らず消えてくれれば、もう『ごめんなさい』する必要ないもんね? 謝罪する相手が消えることで『罪の歴史そのものが消える』と思ってない?
だから『自由だ!』って『喜んだ』んでしょ?
『自分が罪を犯している』という『自覚』がないから。
なぜならダズは、『エレンの虐殺』と言った。
けど、違うよね?
これって『エレンの虐殺』じゃなくて『みんなの虐殺』だよね?
あなた達も、『エレンと一緒に虐殺してる』よね?
『虐殺したい』から、『それを止めに行こうとする人』を阻止するためにここへ来たんでしょ?
第一『直接虐殺に参加してないから自分に罪はありません』って言うんなら、外の世界の人達だって『参加してないから罪のない人』がほとんどってことになるんですが。
なのにその自覚もなく『俺達は手を汚したくないし罪も背負いたくないのでエレン1人に罪を背負ってもらって楽園だけは享受します』って、それって『卑怯な臆病者』。
直接虐殺行為に参加は出来なくても、『共に罪を背負う』つもりがあるのなら、『せっかく俺達助かるのに~』なんて他人事のようなセリフ、出ないと思うんだけど。
たとえ世界の人々のことは『他人事』であったとしても、エレンのことまで『他人事』なのは違うんじゃない?
ずっと寝てたリヴァイも、戦闘時には起き上がってしっかり見てるんだよね……
たとえ参加は出来なくても、『共に罪を背負う』ってこういうことなんだと思う。
暴力で解決した『つもり』だった世界
『人から暴力は奪えない』っての、ついさっき暴力を受けたイェレナ自身もまた、暴力で人を従わせてきた人なんだよね。
ただ『『暴力』では『解決』出来ない問題のほうが多い』ってだけで。
実際、壁の王を始め、世界も、発生した問題は『暴力』で解決してきたんですよ。
でも『本当に解決出来たか?』っていうと、解決した『つもり』でいただけで、『未来に先送り』にしてただけ。
だって『暴力で何一つ解決出来なかった』末に行き着いたのが、この『フルパワー地鳴らし』という『究極の暴力』なわけでしょ?
これって、いかに先人達が問題を『解決』する気がなかったかという証明だよね……
そもそも人が『暴力』を持っているのは、『弱いから』じゃないですかね?
そら暴力なしに理解し合えるならそれに越したことはないけど、人間とは『弱い生き物』なので、まず『お前と俺は対等だ』と『力を示す』必要がある生き物なんだと思う……それが出来てようやく話が出来る。
パラディ島は『弱い』と思われてたから、世界に相手されなかった。だって世界からすれば、『交渉』するとなると『自分もなにかを差し出さなきゃいけない』から。
けど、『相手が弱い』とわかっているなら、自分が何かを差しだすよりも、『奪う』ほうが手っ取り早いし自分は何も失わなくて済むから『お得』だと思った。
ちなみに、そんな中でも『交渉』に来たのがヒィズル。
この国も立場が弱かったんですよね……ヒィズルは唯一の協力国となることで、『地鳴らしの傘』の中に入り、ついでに資源ゲットで強国に返り咲くことをもくろんだわけで。
世界と『対話』するには、なにかしら『力』を示さなきゃいけなかった。そのための『希望』が『地鳴らし』だったはずが、心弱き者達によって『対話を拒む手段』に用いられたってのは皮肉な話……
それを知ってるイェレナが、リヴァイに話を振ったのは、リヴァイが『強い人』だからかね?
『暴力』に頼るのが『弱い人』だけど、じゃあ『強い人』なら『暴力』を手放せるのかっていうと、自分がどんなに強くたって、周りがすぐ暴力に頼る『弱い人』が圧倒的多数じゃあ、手放そうにも手放せないわけで。
『地下街』が暴力的な場所だったのは、地上を追いやられた『弱い人』が集まってくる場所だったから。『弱者』には『暴力』しか頼れるものがなかった。それがなければ搾取される。
リヴァイが強かったのは、ケニーとアッカーマンパワーのおかげもあっただろうけど、『強くならざるをえなかった』からだろうね……
でもリヴァイが本当の意味で強くなったのは、調査兵団に入ってからだと思う。
アルミンの中で見つけたベルトルト
これまでアルミンは『ベルトルトの記憶』を見たような話はなかったんだけど、ここに来て急に来ましたね。
これって、アルミンの中で『自分の罪』と共に『ベルトルトの罪』も背負う覚悟が芽生えた瞬間なんじゃないかな……だからベルトルトを見つけた。
だってアルミンって、別に望んでベルトルトを食べたわけじゃないし。
シガンシナ決戦の時もそうだったけど、ここに至るまでの出来事、心のどこかで『僕のせいじゃない』『仕方なかった』ってのがあったんじゃないの?
そして行き着いた答えが『生き返るべきは僕じゃなかった』。
なんだか人のせいにしてるよね……それって今、まさに目の前にいるダズとサムエル。
ダズとサムエルに『自分と同じ弱さ』を見て、それがベルトルトの記憶を呼び起こしたんじゃないの?
今のこの状況って、言ってる側と言われてる側が入れ替わっただけで、かつての自分達とベルトルト達と似たような状況。
ただベルトルトの時と違うのは、当時は彼らの目的も外の世界のこともなにも知らなかった。知らないから、わかろうとした。
しかし今は、お互いそうする理由を知っている。知っていながら、ダズとサムエルはアルミン達を『裏切り者』と罵り、真っ先にアルミンの口を封じた。
だってこの2人は、アルミン達がエレンを止めたい理由、聞かなくたって知っているから。
だって自分達で言ったジャン……『お前らなら止めるんじゃないか』って。
『止める理由がマジでわかりません』って言うんなら、出ないセリフだよねそれ?
そしてさっきも言ったけど、エレンがやってることを『虐殺』と認識している。アルミン達が『エレンの友達』だということも同期なんだから当然知っている。
『友達』なら『友達のあやまち』を止めるのって、『いたって普通のこと』だよね?
つまりこの2人は、『アルミン達がエレンを止めたい理由』をむしろ知っている。
あきらめたベルトルト、あがいたアルミン
アルミン達がエレンを止めたい理由、『知ってる』くせに『なんでだよ!?』と疑問形を言ったのは、理解したくなかったからじゃないの?
理解しちゃったら、自動的に『自分達の行いは間違いです』と認めることになるから。だから『裏切り者』と呼ぶことで相手を悪者にし、理解を拒んだ。彼らには、罪を受け入れる『強さ』がないから。
一方、アルミン達は『手を汚さずに正しくあろうとする』ことが許せなくて、戦う道を選択した。
この言葉、アルミンは自分自身に言ったわけだけど、皮肉なことにダズとサムエルにも当てはまるよね……アルミンとは『逆の意味』で、だけど。
ベルトルトも『自分が正しい』とは思ってはいなかっただろうけど、『すべての罪』を受け入れられる強さまではなかった。なかったから、『仕方なかった』『世界は残酷』と何かのせいにすることで、『逃げ道』を作った。
とはいえ、それでも彼なりに、『誰かのため』に『自分の手を汚す覚悟』で戦ってた。
そんなベルトルトを超えたのがアルミン。
ベルトルトは罪を背負いきれずに『あきらめた』けど、アルミンは強くあろうと『あがいた』から。
アルミンは『生き返るべきは僕じゃなかった』と言ったけど、でもベルトルトからすれば、自分を食べたのがアルミンだったのは、せめてもの救いだったんじゃないかと思う。
だってベルトルトにしてみりゃあ、エルヴィンに食べられたんじゃあ、自分の存在完全に復活アイテムだもんな……むしろエレンにはそう見られてた感すらある……
アルミンはベルトルトに近い状況になったことで、ベルトルトを『理解』した。その瞬間、アルミンにとってベルトルトは完全に自分の一部になったんじゃないかなぁ……ベルトルトの『罪』もひっくるめて。
裏切られた自由の翼
ダズやサムエル、それに港に集まったイェーガー派は、みんな別に『悪い人』ではないと思うんですよ。ただ『弱い人』だった。
ちょっとでも『罪』を感じているなら、巨人に立ち向かうまではいかんでも、せめて訓練兵達みたいにイェーガー派に与しないという選択肢もあったんじゃないの?
なのに、『せっかく俺達助かるのに~』と、『自分の安泰』を喜んだ。
つまり『自分に罪はない』と思ってる。
なぜなら自分達は悪くないから。こうなったのは世界が悪いせいだから。だから『悪くない自分達』と敵対したアルミンやコニー達を『裏切り者』と呼んだ。『敵』なら●しても『罪』じゃないと思ってるから。
エレンと、エレンを支持してる人達、みんなで一緒に大虐殺をしているのに、その『自覚』はない。なぜなら『世界』は『敵』であり、『罪』は、実行したエレンが1人で背負うものだと思ってるから。
そんな人達が『自由の翼』を身に着けている。
『裏切者』は誰だ?
ダズやサムエル達が、アルミンとコニー達を『裏切者』と呼んだ一方で。
コニー達は、彼らのことを『仲間』と呼んだ。『仲間』と呼んだ上で、撃った。
彼らには『強大な力』に屈しない『強さ』と、『罪』を背負う『覚悟』、そして彼らと同じ『弱さ』があったから。
彼らの『弱さ』を理解してるから、その『弱さ』を否定しなかった。だから『仲間』と呼んだ。
だけど『大虐殺』だけは肯定しちゃいけない。だから彼らの背後にいる『強大な力』に屈することなく、立ち向かう選択をした。
エレンに賛同してる島民から見ると、アルミン達はたしかに『異物』であり『裏切者』なんだろうけど、この方々も『裏切者』だよね……少なくとも、『自由の翼』は完全に裏切った。
でもハンジさんは、そのことに関して一切恨み言を言わず、誰も責めることなく自分のせいにしたの、本当に強い人だと思う……
でも最大の裏切り者はエレンだからね?
イェーガー派が『自由の翼』を身につけているのは『自覚』がないからなんだろうけど、エレンが『自由の翼』をつけていないってことは『自覚』があるってことだよね……?
ある意味、『自分の自由を奪われるくらいならそいつから自由を奪います』という『幼少の自分』を貫いてるとは言えるけど、『アルミン達と共に調査兵団として自由の翼を背負っていた頃の自分』は裏切ったからねあなた……だまされないよ私……
* * *
金目銀目さん
メッセージありがとうございます!
アニメ84話は、ジャンの人間臭さと、信頼に応えようとあがく姿がよかったですよね。ハンジさんも『言葉』だけならなんとでも言えるけど、それを裏付けるそれまでの生き様が伴わないと、人を動かすことって出来ないですもんね……
一方で、フロックにとって『誇りのために死ねる人がいる』というのは理解しがたいこと、というより、むしろ『理解したくないこと』だったのかも。『あの特攻』を理解することになるし……そう考えると『理解すること』から『逃げている人』なのかもしれません。
『逃げている』からキヨミ様の言葉の意味も理解することなく、自分の『理想』に引きこもり、まるで自分がヒーローかのように周囲をあおり立てているのかも……この辺は次回。
* * *
それでは今回はこの辺で。おもろかったら下にあるイイネボタンを押していただけると元気と勇気とやる気が湧いてきます(*´ω`*)ノ
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アニメ進撃の巨人 The Final Season 86話『懐古』感想と考察 ヒーローになりたかったフロックとヒーローになったマガトとキース
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アニメ進撃の巨人 The Final Season 84話『終末の夜』感想と考察 損得で動かないジャンと正義の味方のマガトさん【ファイナルシーズン】