【メダリスト】13巻 score53人魚と刃 感想と考察 司と夜鷹、言葉の呪いと運命を変える刃

メダリスト感想と考察。今回は53話『人魚と刃』でわかった司の過去をメインに書き散らかしております。ライリーの失敗から学ぶ司の落とし方も。
- 内容は単行本13巻時点のものです
- 個人の感想です。効果には個人差があります
ライリーのプロフィール
13巻ではライリーのプロフィールも判明しましたね。あれ? 24?
あの余裕ある態度といい、てっきり司と同年代かと思ってたよ……(それでもまだ若いけど)
じゃあライリーが金メダル獲ったの、しんいちろーが銀獲った時のオリンピックだったのか。
つまりこうか!

メダリスト 年齢早見表修正版(53話時点)
……いのりを2、3年で世界に送り込んだ司も大概スゲーけど、20歳でリンク付きの専用クラブ立ち上げ→4、5年ほどで生徒わんさか・強化選手育てたライリーも大概スゲーな……
司の落とし方
『欲しいもの』はだいたい手に入っちゃうライリーですが、しかし司先生だけは手に入らなかった。
ライリーは司を『自分と似たタイプ』と分析したようだけど、まあ、たしかに司って、一見陽キャなんだけど、スケートに関してはかなり冷静に分析してるし、計算高いよね。ライリーもそう。
『見た目と中身のギャップ』という点では『似た者同士』かもしれないけど、でもライリーは計算してキャラ作れる『天才』なのに対し、司は嘘がつけない『天然』だから、むしろ似て非なる存在じゃね?(『天然』で『天才』をフった男……)
ライリーは瞳先生がおらんところで計画的に口説いたけど、司は布袋野先生の目の前で正々堂々口説いたしな……(正々……?)
![メダリスト score41 騎士と柔[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist041_01.jpg)
メダリスト score41 騎士と柔[つるまいかだ / 講談社]
ライリーは『自分トコのすごさ』や『あなたのお得』をエサに司を釣り上げようとしたけれど、司はなびきもしなかった。(代わりに釣れたのが夜鷹)
一方司は『あなたのすごさ』や『自分トコの困窮』を訴えて、美蜂を『情(精神攻撃)』と『受け身の上達(物理)』で落とした。
司、ライリーに勝ってんじゃん。天才を超えるのは天然……!
布袋野「せやな」
ライリーは『ライリーの強さ』に『信者』となった人が『あやかろう』と寄ってくるけど、司は『司の弱さ』に『ほっとけねぇ』と思ったやさしい人が『力を貸そう』と寄ってくる。なにせ司は一生懸命だから、同じ情熱を持った人はハートが動かされてしまう。
そして『やさしい人』に助けられた司も、『弱い人』を助けずにはいられない人。
ライリー、司を本気で落としたければ、『私があなたを助けてあげます☆』なんて『強者の余裕』アピールするんじゃなく、『困ってるんです助けてください!』と『自分の弱さ』をさらけ出すべきだったね……
score53 人魚と刃
13巻では司の過去が誌面掲載時から加筆修正されて、より一層重いもんになってましたね……
これって『謎のメガネの小学生』が滑りに来ていたら、スケートリンクが赤く染まる案件じゃね? いやー、ここが米花町じゃなくてよかった。
???「真実はいつもひとつ!」
司「サ●デーにお帰りください」
いるかちゃんは幼い実叶ちゃんの『無邪気な言葉』でその気になって苦しんだけど、司は大人達の『悪意なき善意』で自信を失い苦しんだ人だった。
光もそうだったけど、いるかちゃんや司の『運命を変える刃』になったのがいのりさん。
いのりさんってスゲーよな。会う人会う人の『悔いなき選択』にだいたい関与してんだぜ……
![メダリスト score53 人魚と刃[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist053_03.jpg)
メダリスト score53 人魚と刃[つるまいかだ / 講談社]
『選択肢』をバンッ! とお出しするだけなら、加護さんだってやったんだよ。『現役復帰してもう一度フィギュアスケーターとして挑戦する』か『遠慮して、なれなかったフィギュアスケーターの『代わり』を探しながら細々生きていく』か。
だけど当時の司は、前者を選ぶことが出来なかった。『勇気』がなかったから。(才能もそうだけど、選択肢も『あるだけ』じゃダメ……)
次は瞳さんが選択肢をお出ししたけど、そこにいのりちゃん登場。いのりは加護さんや瞳さんの『説得』では動かなかった司の心を、『感動』で動かした。
夜鷹は『呪い』を唱える人だったけど(意図的か天然かは知らんけど)、いのりさんは『呪い』を断ち切る勇気をくれる子だなぁ……
司と夜鷹 言葉の呪い
司は大人達の『善意という名の言葉の呪い』によって足を縛られた子だったわけですが、そりゃあ『一生かけても光に勝てない』といのりに言った夜鷹に噛みつくわけだ。『ガチ金メダリスト』の『言葉の呪い』なんて、アマチュアスケーターの比じゃないもん。
あの時、夜鷹は司にイラッとしてたけど、司も夜鷹に割とガチギレしてたんだな……
![メダリスト score6 名港杯ノービスB女子FS編[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist006_01.jpg)
メダリスト score6 名港杯ノービスB女子FS編[つるまいかだ / 講談社]
もし『あの場』で言い返さなきゃ、司はいのりからの『信頼』を失う。夜鷹が去った後で『そんなことないよー。きっと勝てるよー』なんてフォローしたところで、説得力ゼロなんだよ……
そして一番危なかったのは司本人だった。
『そーっスねー。無理っスよねー』なんて合わせようもんなら、司は『過去の自分』に逆戻り。いのりにとっては『かつて司を苦しめた大人達』と同じ大人になっちゃう。
いのりさんの金メダルは、司といのりの『絶大な信頼関係』があったからこそ得られたもの。
その『信頼』が『存在しない』となると、夜鷹が『ほら、だから言ったでしょ?』なんて肩をすくめる結末になったかもしれない。
しかし司は噛みついた。『言葉の呪い』を誰よりも知っていたから。
あの時、司が本当に怯え、腹を立てていたのは、夜鷹氏じゃなく『勇気』を出して挑めなかった『過去の司』だったのかも。
![メダリスト score6 名港杯ノービスB女子FS編[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist006_02.jpg)
メダリスト score6 名港杯ノービスB女子FS編[つるまいかだ / 講談社]
司って、ちゃんと言い返してえらいよね。夜鷹もそうだけど、光ちゃんにも。
相手がどんなに強力な『呪い』を唱えようと、きっちり『呪い返し』してくれるから、いのりさんは呪われず、司先生への『信頼』を強固なものにしていった。
1話時点では過去の『呪い』がまだ生きていたように見えるけど、いのりとの出会いが『呪い』を浄化させ、夜鷹との出会いで『呪い』と戦う人になったんだな……
『いい人』だった大人達
『言葉の呪い』って、『事実かどうか』『実現可能かどうか』は重要じゃない。それが『呪い』になるかどうかは『受け手側の問題』だから。
なんなら、呪いを唱えた本人は『善意』で言ってる場合すらある。
司によると、同好会の大人達は、みんな『いい人』だった。
『いい人』だったから、無責任なこと言って『その気』にさせないようにした。その辺は『才能あるよー』なんて軽々しく言っちゃった幼い実叶ちゃんとは逆。
その気にさせて大ケガでもしようもんなら、『そそのかした大人達のせい』になっちゃうから。
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メダリスト score53 人魚と刃[つるまいかだ / 講談社]
つまり自分達が『悪者』になってしまう。
そんな大人達が、『いい人』であるための『根拠』として使われたのがしんいちろー。
その後、それが『それってあなたの感想ですよね?』と証明したのもしんいちろー……
だけど夜鷹にとっては、『がんばったけど銀だった』から、その『根拠』は『事実』のままなんだろーなぁ……
『呪い』が成就する時
同好会の大人達は子供を守ろうとする『いい人』だったけど、でも言い方変えると『子供を守らない大人と非難されたくない大人』でもあった。
『子供にケガさせてはいけない』という『大人としての責任感』はあっても、『挑戦したい』という『一人の若者の人生』に対してまでは『責任』なんて取れるはずがない。別に、お金もらってコーチやってたわけでもないしね。(『正しい対価』とはそのためにある)
そして司も司で、そんな大人達に対して『言い分はわかった。だが断る』する『勇気』がなかった。
『こんな同好会辞めて勝手にジャンプしたらぁ!』ってことも出来たと思う。
だけどダメだった時『カッコ悪い』よね。しかも啖呵切った手前、同好会に戻ることも出来ない。(その辺は、大人を拒んで『孤独』を選んだ夜鷹と逆)
だったら最初から『挑戦』なんてしないよう、たくさんの言い訳を用意して、『自分を呪う言葉』を唱えてしまったほうが楽だし安全。
『呪い』を唱えたのは大人達だったかもしれないけど、成就させてしまったのは司の『弱さ』。
本当は怖い『好き』って気持ち
『嫌い』って気持ちは対処法がわかりやすい。離れりゃいいだけだから。
だけど『好き』って気持ちは、実は『嫌い』より厄介。
『好き』は、時にミラクルを起こすくらいのエネルギーを生み出し、自分や周囲を幸せに導くことがあるけれど、同時に我が身を破滅に導くこともある。いるかちゃんとその両親の関係だったり、司と同好会の大人達だったり。もしかすると、夜鷹とスケートの関係もそうなんだろうか?
『好き』って気持ちは、時に『言葉の呪い』よりも強力な『呪い』になる。
いっそ『嫌い』になっちゃえば楽だろうに、辛い中にも『楽しい思い出』があって、それをよすがにすがってしまう。たとえそれが、自分にとって『毒』にしかならんとしても。
それってなんか、『人間の王子様を好きになってしまった人魚姫』に似てる。
後悔しなかった人魚姫
人魚姫は人間の王子様を好きになり、『声』を犠牲に『人間の足』を手に入れた。
だけど『声』を失ったことで王子様に自分の想いを伝えることが出来ず、王子様は他の女性と結婚。
結局、人魚姫にとって、王子様に対する『好き』って気持ちは、自分からすべてを奪い、苦しめる『毒』にしかならなかった。
そして恋に敗れた人魚姫は選択を突きつけられる。『姉達から与えられたナイフで王子様を●して海に戻る』か『泡となって消える』か。
人魚姫の『いいところ』は、自分がしたことに対する『責任』は自分で取ったってことだよね。人魚姫がしたこと(声捨てる)なんて、王子様にしてみりゃ『しらんがな』だし。
そして『好き』って気持ちにも筋を通した。
![メダリスト score53 人魚と刃[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist053_05.jpg)
メダリスト score53 人魚と刃[つるまいかだ / 講談社]
本来、『与えられたナイフ』は『泡となって消える運命を変える希望の刃』でもあるはずだった。
ところが人魚姫は、 与えられたナイフで誰も傷つけることはせず、自ら泡になる選択をした。
『王子様を愛している』という『自分の気持ち』や、『それまでの選択』を大事にしたから。
なにも『犠牲』にしないために海に身を投げた人魚姫は、最終的に天国に昇ることが出来た。
後悔した司
人魚姫は自分の選択を後悔しなかっただろうけど、司は激しく後悔した。
司の場合は『自分を粗末にしていただけ』だったから。
![メダリスト score36 目指す資格[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist036_02.jpg)
メダリスト score36 目指す資格[つるまいかだ / 講談社]
司は匠先生と出会い、新しい環境に身を置いたことで自分の過ちに気づいたけれど、ショックが大きすぎて、馬鹿な自分が許せなくて、人魚姫でいうところの『与えられたナイフ(自分の運命を変えるもの)』で自分を傷つけてしまった。
それに気づいて止めてくれたのが瞳さん。
『アマチュア止まり』と『プロ』の差だよね……『プロ』が『プロ』たるゆえんは、それまで幾度も襲撃してきたであろう『心の弱さ』にことごとく打ち勝って這い上がってきた人達だから。
瞳さんのおかげで司はもう一度自分を信じ、今度は自分が『信じてもらえる大人』になった。
そんな過去を持つ司が、夜鷹の『言葉の呪い』や、光の『勝つのに必要なのは犠牲』に反撃せずに合わせちゃうってことは、いのりさんはもちろん、司を信頼してくれた瞳さん達への裏切りになるんだよ……
![メダリスト score36 目指す資格[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist036_01.jpg)
メダリスト score36 目指す資格[つるまいかだ / 講談社]
光は司に『ウチのコーチ侮辱してんのか』なんてキレてたけど(ンなこと言うってことは光にもそう見えてた???)、光は瞳さん侮辱してた。ブーメラン刺さってるねぴかるん……(こーやって黒歴史が増えていく)
司が戦った相手は夜鷹でも光でもなく、『過去の司』だった。
司に足りなかったもの
人魚姫も王子様も、『誰かを不幸にするつもり』も『自分が不幸になるつもり』もなかったはずなんだよね。王子様は『何も知らなかった』だけ。
人魚姫は『幸せ』になりたかっただけ。
同好会の大人達も、『足引っ張る』つもりなんかなくて、初期のいのりママンみたいに『かわいいこの子がケガしちゃ大変!』と『守ってる』つもりだったのだろうと思う。『知らなかった』から。
司が本当にするべきだった努力は『聞き分けのいい子』になることではなく、『それでも俺は! ジャンプしたいんですよ!』と訴える『困った子』になることだったね……そして『感動(ジャンプ)』で、その人達の先入観をぶっ壊しゃよかった。そうすれば大人達は『最高の味方』として後押ししてくれたかもしれない。
つーくんの欠点は『やんちゃ』が足りない……!
無敵の司
『呪い』は『唱えただけ』では成就しない。『呪い』をはね返せなかった『心の弱さ』が成就させる。
司は、自分の弱さから目をそらし、『呪い』を唱えた人達を恨むことも出来た。
でもそれって、相手を『悪者』にし、自分のことを『かわいそうな被害者』にするってことになる。
『自分を粗末にする人』は、泡になって消えるんだよ……闇堕ちしなくてえらい!
そりゃー『自分を大事にしたいからスケートしたい』と全力で訴えたいのりの言葉が、司のハートにクリティカルヒットしないわけがなかった……!
![メダリスト score1 氷上の天才[つるまいかだ / 講談社]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/medalist001_03.jpg)
メダリスト score1 氷上の天才[つるまいかだ / 講談社]
同好会の人たちと、今でも顔を合わせりゃ談笑出来るってのは、かつて憎んだ『過去の自分』を許し、大事に出来るようになったってことかね。つよい。
いのりとの出会いで、ぴかるんは『最強の私』を手に入れたけど、司は『無敵の俺』を手に入れたんだな……
それでは今回はこの辺で。
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