【烏は主を選ばない】外伝 ふゆきにおもう 第三話時点 感想と考察 後編 大人達の怠慢と残酷なお人形遊び
『烏は主を選ばない』コミカライズ版の外伝『ふゆきにおもう』の第三話時点の考察です。今回は後編。
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- コミック版の『【外伝】ふゆきにおもう 第三話』時点のものです
- 個人の感想です。効果には個人差があります
- 現時点で原作小説は2巻までしか読んでいません。予想や考察はすべてコミック版と原作2巻時点の情報を元にしたものなので、心優しい原作勢の方はあたたかく見守ってあげましょう
北家三代にわたる負の連鎖
北家の闇の一端が見えるのは、冬木ママことお凌さま。
のちにお孫さん(雪哉)が吐くセリフそのまんま言ってんなこの人……
![烏は主を選ばない 外伝 ふゆきにおもう第三話[阿部智里 / 松崎夏未]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/yatagarasu_fuyuki03_02.jpg)
烏は主を選ばない 外伝 ふゆきにおもう第三話[阿部智里 / 松崎夏未]
娘にひどいこと言ってるようだけど、これ、盛大にブーメラン刺さってる。
だってこの人も、『自分の役目』果たせてないじゃん。
元々この人は、『美貌』を買われて花街から嫁いだ身。目的は『見目麗しい姫を産むため』だった。
ところが、長女はモロに北家の血が濃い容姿。次女は病弱。
結局『役目』を果たしたのは、のちに白珠を産むことになる六つの花であって、この人自身は『役目』を果たせてない。
にも関わらず、娘に『最低限のつとめすら果たせてない~』なんてセリフを『無自覚』で言ってるんなら『性格』が悪い。
『自覚』の上で言ってるんなら『自虐』が過ぎる。
後者であるなら『娘の味方したれや』と思うけど、でも『やっちゃった後』じゃあなぁ……
第一『跡継ぎ問題』なんてわかりきったこと、『嫁ぐ前』に言ってもよかったですよね……?
『これこれこういう問題が発生するかもしれんけど、それでも嫁に行く覚悟はあるか? あるんやったら縁談進めたるで』って、本人と『話し合い』はしたん?
きちんと話し合って、お互い覚悟を決めた上で嫁がせたんなら、母ちゃんのお言葉は『ごもっとも』なんだけど、『してない』から冬木がブチギレてんだよね?
冬木にしてみりゃ、そーいうの一切なしに、勝手に縁談決めたり、いつの間にか梓が側室になってたり、知らん間に子供(雪馬)まで産まれてて、それに文句言ったら『最低限のつとめすら果たせてない~』と返ってきた。
そりゃあ『じゃあなんで嫁がせた!』って言いたくもなるわな……だけどその『責任』と『ダメージ』は、『冬木の恋』を知らせた梓に向かう。
梓は『冬木の一番』になりたかったのに、雪正登場で身を退くことにし、冬木の恋を玄哉達に知らせたと思うんだよ。なのに、その後の大人達の対応が悪すぎたせいで、梓が『諸悪の根源』にされてしまった……
大人達の怠慢
お凌もお凌で、最初の縁談の時に『まずは本人と話しよーぜ』ってダンナに意見言ったり出来んかったんかな……一緒に浮かれちゃったにしても、本人と話くらいしてもよくね?
冬木のことを『こうなったのはお前の怠慢』って責めといて、『いずれ起こる跡継ぎ問題の話を嫁ぐ前にしなかった』ってのは、それこそそちらの『怠慢』では?
まさかこれ、夫婦そろって『どうせあと1、2年の命だろうし、わざわざそんな未来の心配事の話する必要ないやろと思ってました』ってのがホントのとこだったりする? 雪哉も『一年ももたない思われてた』って証言しとったし……
つまり、もうじき死ぬ娘に『未来の心配事の話なんてする必要なはい』っていう『やさしさ』だった?
でもシナリオ通りに進まなかったら、『(自分達の)シナリオ通りに死んでくれなかった冬木のせい』って?
なにこの残酷な『お人形』遊び。(白目)
お母さんなら、『娘が長生きする可能性』を信じて旦那に意見言ってくれてもよくね……?
にも関わらず、冬木に『役目も果たせてないくせに意見すんな』なんて言ったってことは、彼女自身も『役目果たせてないので夫になにも意見しません』ってこと?
現に『期待通りの姫』を産めなかったことで肩身狭い思いしたのって、お凌さまじゃん。
事前に、自分の体験談を交えて話に行ってもよさそうなのに……でもそれで冷静になった冬木が遠慮して縁談を断ったら、『シナリオ』が頓挫することになるから、なにもしなかった……???
そして現在、冬木に非情なこと言ってるけど、玄哉を悪者にしないため、自分が悪者になった?(そもそも玄哉じゃ言いそうにないけど……)
『好いた殿方と一緒になれただけ僥倖』ってことは、お凌自身は、玄哉のことは好きだったってことかな……
でも、好きな相手の機嫌を損ねないようハイハイ言いなりになったり、矢面に立ったりじゃあ、それって『夫婦』じゃなくて『お客さんとホステス』『主人と家来』じゃん。
![烏は主を選ばない 外伝 ふゆきにおもう第二話[阿部智里 / 松崎夏未]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/yatagarasu_fuyuki02_03.jpg)
烏は主を選ばない 外伝 ふゆきにおもう第二話[阿部智里 / 松崎夏未]
『自分の意見』を訴えることが出来ぬまま登殿した白珠といい、『自分の意見』を封殺された冬木といい、北家三代にわたる負の連鎖を感じる……
側室選びの謎
側室選びにも疑問がある。なぜ『梓』だったんだろ? 『「側室は梓に」と頼んだ冬木なんていなかった』はずなのに。
なんでわざわざ冬木を傷つける人選するかなぁ?
冬木視点じゃ、『ひとりぼっちで死ぬ』と思ってた自分に生きる希望を与え、恋を応援してくれたのが梓だったのに、その梓が、自分の好きな人を奪い、自分の両親まで味方につけ、妻としての『役目』や『立場』まで奪った形になったわけでしょ? もう冬木は完全に『死を待つだけのお飾りの人形』じゃん。
そして梓は『持ち上げるだけ持ち上げたところで、たたき落とした女』になった。
冬木的には、『まったく知らない人』のほうがまだマシだったと思うよ……そっちなら、『泣きつける梓』も『一緒に怒ってくれる梓』もいるわけだから。
しかも、冬木から誤解され、一番恨まれるのは梓であって、雪正や玄哉達ではない。なんか、自分達のスケープゴートにするために、わざわざ梓を選んだみたい。
だけど玄哉が『悪気はない』『よかれと思って』やる人であるなら、そこまで考えて梓を選んだとは思えないな……
もし『側室は梓』ってのが『よかれと思って』の人選だったとしたなら、まさか『雪正にとってのよかれと思って』だったってこと?
冬木の輿入れの時に、女房が引っかかること言ってんだよね。梓を連れてってもいいはずなのに、『あちらとの兼ね合い』で連れて行けないって。『兼ね合い』って何?
![烏は主を選ばない 外伝 ふゆきにおもう第三話[阿部智里 / 松崎夏未]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/yatagarasu_fuyuki03_03.jpg)
烏は主を選ばない 外伝 ふゆきにおもう第三話[阿部智里 / 松崎夏未]
冬木が『あと一、二年の命』と思ってたんなら、なおさら梓を連れて行くべきだと思うんだけど……
まさか冬木との縁談が来た時点で、実は雪正、すでに梓(12)が好きだった?
で、雪正が、冬木との縁談に対して『困った困った』したんで、『善意』を刺激された玄哉が、
玄哉「冬木が死んだ後は梓を嫁にやるで!」
雪正「ならええか」
玄哉「でも梓への好意が冬木にバレたらヤバいから、梓は連れていかんとこな」
雪正「お心遣いサンキュー! シナリオ書き加えとくね☆」
なんて恐ろしいオチはないだろな……
つまり、梓の『冬木さまは雪正さまと結ばれ、幸せに暮らしました』というシナリオに、『そして冬木の死後、雪正は梓を嫁にもらい、子宝にも恵まれ幸せに暮らしました』と書き加えたのが雪正……???
だけど思ったより冬木が長生きしてしまい、これ以上待つと梓が他の男に取られると焦ってこのタイミングだった……???
これだと、ますます冬木がかわいそうすぎるんだけど、果たして。
冬木の結婚で得した者
実際どうだったのかはまだ不明だけど、でも結局、雪正だけだよね? 得してるの。
なんにも知らなかった冬木だけが、愛する夫や両親に存在をないがしろにされ、信頼していた妹分にすべてを奪われ、みんなから『長生きすること』を迷惑がられて深く傷ついた。
いや、誰も『そんなこと』思ってなくても、『やってること』は『そーいうこと』だよね?
どんなに愛を語っても、行動に 反映されなきゃ ないのと同じ……!
そして梓も、騙されてたとはいえ、『全部あなたのおかげ』と言ってくれた冬木を裏切る形になってしまった。
だけど雪正だけは、冬木に嫁いでもらったことで北家の後ろ盾を手に入れ、梓という若くて聡明でしかもかわいい側室まで手に入れ、子供も産まれてこれで安泰。
女2人泣かせておいて、雪正だけが『いいとこ取り』してる。
その辺のこと、『2人の夫』である雪正的にどーなの? そこに『愛』はあったの? 心は痛まなかったの? ねえ?(疑惑の目)
本来、夫婦って『信頼』が必須なのに、冬木にも梓にも嘘ついて騙しておいて、なのに自分だけがいいとこ取り……? しかも『あの人のせいで北のお姫さまが……』ってヒソヒソされるのは梓だし、不誠実すぎない……?
雪正、最初は『素朴な好青年』に見えたけど、嫁への対応が悪すぎて、『詫びの品』が『葱ぼうず』だったのすら『安く済ませられた』ように見えてくるふしぎ!(日頃の行い、大事!)
最大の犠牲者
なんか、最初の縁談話は両家の親父同士で盛り上がった感じだったし、『雪正の意見』はちゃんとあったんだろうか……ちょっとでも『誠実であろう』と親父達に意見したりした?
雪正って、顔つきは凜々しくて頼りがいあるように見えて、実際は『頼りない八方美人』ってことは、のちの雪哉が『ぼんくら』演じるハメになった件で証明しとる。そこに『不誠実』までプラスされた。
![烏は主を選ばない 第44話 雪に烏[阿部智里 / 松崎夏未]](https://asuhon.sakura.ne.jp/dshonki4120/wp-content/uploads/yatagarasu_aruji_044_01.jpg)
烏は主を選ばない 第44話 雪に烏[阿部智里 / 松崎夏未]
現時点で『これ』で、雪哉が生まれてからも『それ』ってことは、成長してないってことじゃん。冬木も梓も大丈夫かこんな夫で?
しかもこの後、冬木は雪哉産むんでしょ……?(雪雉も生まれるってことは、梓と雪正はその後仲直りした……???)
これ『女の意地』じゃなくて、『非情すぎる周囲が冬木を孤立させ、追い詰めた』結果じゃないの?
『最低限のつとめすら果たせてない』ことを理由に責めてくるんなら、『だったら『最低限の務め』果たしたらぁ!』って。
もしそうだとしたら、冬木って、親父の『人形遊び』と母親の『正しさ』と夫の『不誠実』の犠牲者じゃん……しかも命と引き替えに産んだ我が子(雪哉)には『身勝手な女』と誤解されとる。
救いは……救いはありますか……?
それでは今回はこの辺で。
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