アニメ進撃の巨人 The Final Season 80話『二千年前の君から』感想と考察 始祖ユミルと初代エルディア王 豚を逃がした罪と罰【ファイナルシーズン】
アニメ進撃の巨人The Final Season80話『二千年前の君から』の感想と考察。
今回は始祖ユミルがエルディア王に尽くし続けた理由や考えなどのすれ違い、しれっと判明したタイバー家の真実、豚さんを逃がした罪と罰の意味から、エレンの行動の意味などを考察しとります。
原作漫画の大きなネタバレは注意書きしてますが、そうじゃないところでも察せられる程度にしれっと混じってるので、アニメ派の方はご理解の上でお願いします。
なお、当考察は原作最終回以降エレン・イェーガーさんに死ぬほど厳しいので『エレンすてき☆ カッコいい!』と思っていたい方は、悪いこと言わんので引き返されることをおススメします。
これって誰得? エレンにとっての『好都合な道』
フリーダ巨人とグリシャ巨人、アニメで動いてるのを見ると、結構体格差あるよね。そらシンプルに肉弾戦になると、体格の大きいグリシャ巨人のほうが有利だよな……
そして始祖の巨人、ロイヤルファミリー専用巨人の割に、見た目がガリガリで弱そう。むしろ進撃のほうが恰幅よくてキングっぽい気が……中の人は細いのに。
さて、ヤバイのは父親じゃなくて弟でしたと気づいたジークお兄ちゃん。
いやホント、ジークの言う通り『都合の良い記憶』だけ見せりゃあいいのに、それをしなかったor出来なかったってことは『そっちはエレン的に都合が悪い』という裏返しだよね。
つまり『今に至るまでのすべての状況』は全部『エレンにとって好都合な道』ってことになる。
むしろ未来は変わってた? 我々が見ていた『進撃の巨人』
漫画とかドラマで『タイムスリップして過去に戻っちゃいましたー!』って人がやることって、普通は『悪い未来を良いものに変える』なんですよ……でなきゃ、なんのためのタイムスリップ?
なのにエレンは『未来を知っていた』『過去に影響を与える力を手にした』というのに、母ちゃんの死も旧リヴァイ班の死もシガンシナ決戦もサシャの死から兵団上層部巨人化に至るまで全部、なーんにも回避してない。むしろ、それらすべてを回避するための鍵となるのはグリシャだったはず。
目的の『始祖の巨人』を前にして、グリシャはメスを落としたんですよ……あれ『未来の記憶にあらがった』瞬間。
なぜならグリシャがクルーガーさんと交わした『誓い』は『エルディアに自由と尊厳を取り戻す』ためのものであり、『誰かをやっつけること』じゃなかったから。
そしてプライベートでも『人を救うこと』が医者であるグリシャの使命だったから。
グリシャが『使命に逃げた人』であったなら、むしろここ↓は『始祖の巨人を奪う』という『使命を果たせた』とホッとするシーンになると思うのよね……なのにグリシャは後悔してる。
つまりグリシャがメスを落とした時、そのままグリシャに任せていれば、ウーリとケニーのような奇跡が起こって、『死ぬはずの人が死なない未来』に変わったかもしれない。
ところがエレンは自らの手でその『希望』を潰した。まるで『未来の記憶の通りに行動することこそがお前の使命であり生まれてきた意味だ』と言わんばかりに。
クルーガーさんの名を出したのも卑劣だと思うわ……たしかに『報われる日まで進み続けるんだ』と言ったのはクルーガーさんだけど『壁の中で人を愛せ。それが出来なければ繰り返すだけだ』と言ったのもクルーガーさんなのに。
クルーガーさんからすれば『同じ過ちを繰り返すため』に名を出され、しかもそれをやったのが自分と同じ名前を父からつけてもらったヒモ男なんだから報われねぇわ……
…………。
いや、これってむしろ『エレンによって未来を変えられた瞬間』なんじゃないの?
つまり1話から今に至るまで、我々が見ていたのは『この時↑のエレンによって未来を変えられた世界線の物語』だった。
え? じゃあ『正規ルート』は『グリシャがメスを落としてそのままフリーダとミラクル起こす世界』だったってこと……?(非正規ルートを我々は見ていた……?)
エレン、あなた『父さんが始めた物語だろ』ゆーといて、なに『父ちゃんの物語』に首突っ込んで、そのまま『横取り』してんのよ……
一周回って『物語を面白くしなきゃいけないという主人公の使命』を見事に果たしとる……! 恐ろしい子……!
エレン「先生! 未来を変えたぞ! これでいいのか!? これでよかったのか!? 進撃の巨人はこれで…本当に、面白くなるのか!?」
ジークからしても、グリシャがなにを見たのか知らんでも、少なくとも『今の状況がエレン的に好都合』であるなら、阻止する方向に行くよなそりゃあ。
しかしジーク。エレンを止めるにしても『コイツなんとかしろ』ではなく、当初の目的通り『生殖能力奪え』ってのは……まあ、いくら父親の愛を知り、生まれてきたことを肯定されたとはいえ、そんなすぐに考え方を変えるなんて無理だわな……
エレンもクソだがそれを阻止しようとするジークもクソ。『どっちのクソがマシか選手権』の会場ですかここは?
ジーク「クソクソ言うな」
なんてことない日々のなんてことない言葉の呪い
さて、ヒゲとロン毛のむさくるしい兄弟から一転、仲良し姉妹登場。なんてことない日々のなんてことない会話。
『みんなから愛される人になって助け合って生きていかなきゃいけない』ってのは、別の言い方すると『みんなから愛されなきゃ誰からも助けてもらえないし生きてもいけない』になっちゃう。
幼子相手に何気なく答えた『この子みたいになろうね』が、ヒストリアがクリスタになってしまう要因になってしまうとは、フリーダお姉ちゃんもこの時は考えもせんかったろうなぁ。
案外、言った本人すら忘れるような『何気なく言ったこと』のほうが、人を縛る鎖になってしまうのかもしれない。
ただの女の子が巨人パワーを手に入れるまで
さて、故郷が侵略されるところから始まったユミルちゃんの回想。
一緒にいるのはおばあちゃんとご兄弟でしょうか……この頃からすでに服がボロかったし、働き者だった模様。
色が暗くセピア色なのが、古い記憶だってのを表してるなぁ。
家族は侵略者に●され、自分は助かったものの、舌を抜かれて奴隷にされ、そして豚さん逃走により、ユミルちゃんが犯人として指さされることに。
ユミルちゃん的に『みんなから愛されなきゃ誰からも助けてもらえないし生きてもいけない』ことを思い知った瞬間。
豚さんを逃がした罪と罰の意味
これだけだと、本当に犯人かどうかなんてわからないと思うんだけど、王様的には、ぶっちゃけ『犯人』は誰でも良かったんだと思う。この人にとって重要なのは『悪いことした犯人に罰を与える』という『王様の仕事』をすることだったろうから。
その上でこの王様、割と正当な罰を下してるんですよね。
豚さんを逃がした罰として『お前は自由だ』と、王様はユミルちゃんを村の外に追い出したわけだけど、これって犯人が豚さんにしたこととまったく同じことをしただけなんですよ。(遠まわしに『お前は豚だ』とも言っている)
犯人は豚さんに『お前は自由だ』と『いいこと』のつもりで逃がしたんだろうけど、実際にそれが『いいこと』だったかどうかというと『そんなこたぁない』ってのは、ユミルちゃんのその後を見ればわかる通り。豚さん的には、何も悪いことしてないのに突然『住処』を追われただけ。
でもって、この追ってる人達は『豚を襲う獣役』ですかね。
『お前は自由だ』と帰る場所を失った豚さんも、同じように行く当てもないまま森をさまよい『野生の獣に襲われた』だろうし。
つまり王様は『奴隷』でありながら『民の財産』を奪った『悪いヤツ』に対し『お前が豚さんにしたのはこういうことだ』と懲らしめただけ。そういう意味ではこの人、割とちゃんと『王様』という『自分の役割』をこなしてたと思う。
ただ、命まで取っちゃあ、それって罰として意味なくね? って気はするけど……
反省させるための『罰』なのに、結局命取られるんじゃあ反省するだけ無駄だし、『罰』を与えた側も許す気ゼロってことだよね……この辺、最後のほうで詳しく。
誰も憎まない始祖ユミル
そして謎の大樹へ。
ユミルちゃん、声はつかないのかと思ってたけど、声つきましたね。息づかいだけだけど。(それだけで演技するのすごい)
原作は『穴入ってすぐ落ちた』みたいな感じだったけど、なんかデカい洞窟になってません……? 穴を抜けたらB面に行ったみたいな……(マ●オか)
しかも足滑らせてから水にドボンするまで、かなり深くまで落ちとる……
本来ならここでお亡くなりになってたはずが、光るムカデ君登場で巨人化へ。
この巨人化の光、座標に似てる。
しかし巨人は始祖ユミルが作ってたはずだけど、このユミルちゃんの巨人は誰が作ってたというの……?
それにしても普通、いきなりこんな化け物登場したら、びびって全力逃走しそうなもんですが。
なのに村に連れ戻すとか『追い出しといて虫が良すぎ』と思う一方、懐でかい気もすんな……私なら仕返しが怖いと思っちゃうよ……
これがエレンだったら、真っ先に集落滅ぼしてたよね……
でもユミルちゃんって、故郷を焼かれ、奴隷にされたというのに、『誰も憎んでない』んですよね。
この子が望んでたのって、ずっと『幸せ』だったんだろうなって思う……そうでなきゃ、『幸せな結婚式』に足を止めて、うらやましそうに眺めるかなぁ……
っていうか、あれ?
この新郎って王様じゃないの? 一般人なら両サイドに槍持って警護する人いるのは変だし。族長の結婚式やったんか……
↑うーん、これは同じ人……
それはさておき。
一度は追い出されたものの、故郷を失ったユミルちゃんにとってはこの集落だけが『帰る場所』だったんだろうなぁ。
しかも巨人パワーを手に入れたことで、みんなが自分を頼ってくれるようになる。
豚さんの一件で『みんなから愛されなきゃ誰からも助けてもらえないし生きてもいけない』と思い知ったユミルちゃんは、『みんなから愛される人にならなきゃ』と奮闘したんだろうか?
だとすると幼少の104期ユミルみたいだなぁ……ということは、案外『悪い気分じゃなかった』のかも?
そして巨人パワーでがんばってたら、王様から『子種くれてやる』とキモいことを言われる。
王様的には『ユミルちゃんとの子供を作る』って、他のヤツに取られない&自分の手元に置いておくための『鎖目的』だったのかもしれんけど。(もし巨人パワーを得たのが男だったらどうしてたんだろうな……)
うーん、ひょっとしてこの時のユミルちゃん『豚さんを逃がした罪が許された』と思ったんだろうか?
どのみち『イヤだなぁ』と思っていても、奴隷であるユミルちゃんに選択肢ないし……本当にイヤなら、逃げるという手もあっただろうし……
もしくは王様に愛されたら『みんなから愛されるし助け会って生きていける』と思ったのだろうか……そういう意味では、言い方はアレだが『王様の女』になるのは悪くなかった……? はたまた、意表を突いておっさんフェチだったとか……?(それだとジークに行っちゃうだろ)
もしくは、この時↑本当に見てたのは『幸せな結婚式』じゃなくて『優しそうな新郎(王様)』だった……???(全読者&視聴者の予想を裏切るスタイル)
蛮族のエルディアと秩序のマーレ
そして本格的にマーレが巨人パワーで蹂躙されていく。
なんか、エルディア部族はみんなバラバラで規律もない『蛮族』って感じ。
それに対し、マーレ側は統一感ある鎧を身に着け、きちっと整列している。
ということはこの時代、マーレのほうがよっぽど『秩序ある進んだ強国』で、巨人パワーなんてものが登場しなければ、マーレこそが大帝国を築いてたってことじゃないの?
『憎きマーレを滅ぼせ』ってことは、エルディアはこれまでマーレに相当ひどい目に遭わされてたってことなんやろーなあ……
ガビちゃんは『先に仕掛けたのはそっちだ!(だからこっちは悪くない)』と言って自分の正当性を主張したけど、歴史をさかのぼっていくと『実はマーレこそが一番最初にひどいことしたヤツでしたー』というオチも十分あり得るわけで。
ニコロの『どっちが先とか知らねぇよ』の言葉思い出すわ……
しれっと判明。タイバー家の真実
しれっと出てきたこの貝印。これってタイバーさんの家紋じゃなかったの?
二千年後も家紋残ってるって、ずいぶん由緒あるお家だったんだな……
いや、ここではンなこたぁ重要じゃない。侵略されてる側の旗にタイバーさんの貝印があるってことのほうが問題。(原作にはなかったシーン)
まさかタイバー家って、元々『マーレの王家』だったってこと!?
王家とまではいかんでも、タイバー家の先祖は元々それなりの身分のマーレ人だったってことになるジャン!
つまりタイバー家って、マーレから優位なエルディアに寝返り、そこで手柄を挙げて戦鎚の巨人継承一族にまでのし上がったってことになる……
そういう歴史のあるお家だったから、100年前の初代壁の王が現れた時、今度はマーレが優位になると思って寝返ったのか……?
じゃあ当時のタイバーさん的には『裏切った』んじゃなくて『元のマーレ人に戻った』という感覚だった?(『お家の存続』だけを考えりゃあ『正しい選択』だったんだろうけど……)
でもマーレ的には『エルディア人として二千年近くマーレに矛を向け、そして自分は裕福な暮らしをしてきた裏切り者』なのは間違いないわけでして。それで今さら『マーレ人に戻った』と言われましてもねぇ……一応『名誉マーレ人』という称号を与えはしても、そらマーレ側も完全に受け入れるわけないわな。そしてエルディア人から見ても裏切り者。
ヴィリーさんは、そういう歴史を当主になってから知り、自分ちの裏切りの歴史に幻滅したの……? だから『もう裏切者はヤダ!』『私はご先祖様と違う!』と、我が身を犠牲にかっこよく立ち上がった『つもり』だったのかなぁ……
でも本当に『裏切り者』がイヤだったんなら、ヴィリーさんはマーレ人でもありエルディア人でもあるんだから、『世界に悪魔の島を売る』なんてせずに『共存する道』を模索するべきだったんじゃないの? むしろ、それが出来る唯一のポジションの人だったんじゃあ……?
ヴィリーさんがどういうつもりだったにせよ、結局この人『私は強い者の味方です!』という残念なコウモリ野郎にしかなれんかったの、ご先祖様とまったく同じ。
三姉妹誕生から巨人誕生まで
そして戦の合間に姉妹誕生。
なんというか、前回のグリシャの対比みたい……『人を愛した』グリシャには『人の命を奪った手』で我が子を抱くことが出来なかったから、襲撃をためらったのに。
ユミルちゃんは我が子誕生になにを思ったんだろう。実感がわかないのか、なんだか不思議そうな顔してる。(そもそもユミルちゃん、喜怒哀楽が顔に出てこないのよね……)
でも娘は笑ってるから、娘達のことは愛していただろうし、ユミルちゃん的にもつかの間の穏やかな時間だったと思いたい。
お城が完成し、お祝いが始まる模様。
それにしても娘の髪型違うと突っ込むのは野暮でしょうか?
そして王様をかばって槍を喰らったけど、王様のリアクションがさぁ……(『起きて働け』はカットされたようだけど、ひどいことに変わりなし)
王様的には『子を生ませただけの女』であって、妻でもなんでもなかったんだろうね。でもめっちゃ巨人パワーの恩恵受けてたんだから、もうちょい大事にせーやと思うけど……
王様は『いつも通り』の扱いのつもりだったんだろうけど、ユミルちゃん的には、王様が必要としてるのは『奴隷のユミル』であって『ただのユミル』じゃなかったとハッキリした。
それに絶望して、ユミルちゃんは『私は私がいらない』と思って、自分を『道』へと追い出したのだろうか……
三児の母ちゃんのはずが、かつて『いらない子』として集落を追い出された時の姿に戻ってるし。
そして娘達、母親を食って巨人継承。
周囲の大人達、めっちゃ心を痛めてるようだけど、止めない時点で同罪。
しかしこんな王様でも、死に際に側について手を握ったりと、娘達にとってはどんな人であれ父親ってのが見てて複雑やわ……王様も、ユミルちゃんのことは『奴隷』と言ってたくせに、三姉妹のことは『我が娘達』と言ってんのよね。案外、娘達のことはかわいがってたのか……?
まあ、娘目線で見ても、『身代わりになった母を心配しない』『母の遺体をバラバラにしてそれを自分らに食わせた』とか間違いなくクソ親父なんだけどね……結局、この人にとって大事なのは『自分の帝国』を維持するための『強大な力』だった。
それでも父親は父親だから、娘達は『父は国を守るためそうしたんだ』と、自分達を納得させてたんだろうか。だとすると、王様はロッド・レイス、娘達はそれに言いくるめられてたヒストリアそっくりってことに。
そして子から孫へと巨人は受け継がれ、九つの巨人誕生。
ひとりぼっちの始祖ユミル
『道』で、人知れず巨人を作り続けるユミルちゃん。肉体はないはずなのに、苦しそうに巨人作り続けてるんだよなぁ……
何気に桶が、故郷の水くみに使用してたのと同じ桶。
うーん、最初に巨人を作ったのは娘達への愛でもあったんだろうけど、『道』でひとりぼっちで寂しかったんだろうか?
ユミルちゃんが死んだのって、『命令に背いた結果』なんですよね。
で、命令に背いてたどり着いたのが『誰もいない世界』。ある意味ここは『お前は自由だ』と、豚を逃がした罰で追い出された先でたどり着いた深い穴の底と同じ。
『座標』で娘達と繋がったのは、娘達が母親を求めるように、ユミルちゃん自身も『誰か』を求めていたからだろうか……? だから巨人を作った?
でも悲しいことに、ここでも必要とされてたのは『ただのユミル』ではなく『奴隷のユミル』だった。三姉妹の巨人は母として自分の意思で作ったのかもしれないけど、『その後』は『王様の遺言』に従って巨人を作り続けていたようだったし。
始祖ユミルの想いとエルディア王の考えのズレ
表面だけ見ると、ユミルちゃんと王様って『ひどい王様と哀れな被害者』の図式であり、そしてその通りではあるんだけど。
王様的には、ユミルちゃんのことは『ビジネス』として考えてたんだと思うわ。
ユミルちゃんは『王様やみんなの幸せのために』と思って尽くしてたのかもしれないけど、王様は昔からずっと王様の『仕事』をしてただけ。
ユミルちゃんのことは『労働者』というより、たとえるなら『自己メンテ機能つきの超すごい機械』として見てた。
むしろ王様的には『自分こそが労働者』であり、ユミルちゃんは『労働者に操作してもらう機械』だった。
こうしてエルディア株式会社は、世界にたった一台の超高機能メカの導入とそれを操作する王様の存在により、わずか数年で都心の一等地にでけぇ自社ビル建てられる大企業になった。
まあ、『たった一台の超高機能メカ』が突然の故障で動かなくなるってことは、会社倒産の危機でもあったわけだけど……『叩いたら直る』と思ってめいっぱい叩いたら『トドメさしちゃいましたー☆』みたいな……(昔の家電か)
娘達は、『壊れたメカをなんとか再利用出来ないかとパーツをばらして組み立ててみたら、初代よりパワーは劣るけど数が増えてこれはこれで生産性上がった』みたいな……
とまあ、王様目線だとこんな感じだったんだろうけど、でもユミルちゃんは、自分がしてることを『ビジネス』と思ってなかったんだろうね……最初から最後まで『私情』で働いてた。それこそ『家族』にするように。
ユミルちゃん目線だと『尽くしていればいつか報われる』と『自分に都合良く』考えてたのかもしれないけど、支払うお金は1円だって安く済ませたいのがビジネスの世界なんですよ……
『もう働けません』となったら、機械だろうと労働者だろうと捨てられるのがビジネスの世界なんですよ……
王様に『対等に扱われる』には、『一緒に良い国を作りましょう』という同じ目標に向かう『志』が必要だったんだろうけど、王様はユミルちゃんを『人』だなんて思ってなかった。なぜなら『強大な力』を持っていながら、なんの意志も示さなかったから。
だから最後まで『意志のない便利な機械』のように扱った。
ある意味、王様がユミルちゃんを理解する気がなかったように、ユミルちゃんも王様を理解する気がなかったのかもしれない。そこに、愛はあるんか!?
『自由』を縛る『愛』の鎖
『お前は自由だ』と言われて集落を追い出されたユミルちゃんにとって『自由』って『帰る場所を失うこと』だったんだと思う。
エンディングじゃあ『帰る場所がなければきっとどこへもゆくのに』なんて歌ってるけど、エレンはともかくユミルちゃんはそんなの望んでなさそうなんですよね。ユミルちゃんが欲しいのは『愛』だったようだし。
『愛』って『自分1人じゃ与えることも得ることも出来ないもの』だから。
前回の考察で『エレン的に無償の愛とは自由を縛る鎖』と考察したけど、ユミルちゃん的には『無償の愛を得るには誰かと繋がってなきゃいけない』と思っていたのかも。だから神にも等しい力を手に入れながら、王様と繋がっていようとした。
↑この時点でもう見えない鎖に縛られてますね……
王様の『いい人』になるため、なんでもかんでも要求に応え、愛されようとしたけど、しかし『見返り』を要求してる時点で、それはもう『無償の愛』ではない……『愛されたい』という『自分の欲望』のためにがんばってるだけ。
『自分の欲望』のために働いているのに『無償でよこせ』と求めたところで、相手も『自分の欲望』のために要求してくるだけという悪循環。
そんなことを繰り返してるうちに、縛り付ける鎖がこんがらがって、ほどけない状態に。
ユミルちゃんは『自由』になろうと思えばすぐなれたんですよ。王様達を文字通り秒殺出来る力を手に入れたんだから。エレンなら絶対そうした。
でもユミルちゃんにとって『自由』とは、『帰る場所』を失う一種の死刑宣告だった。そっちのほうが嫌だったんだろうと思うわ……
『帰る場所がない』って、『待っててくれる人がいない』『誰にも必要とされてない』みたいだしな……
誰かと繋がっていたいから、求められるままに巨人を作り続けたんだろうか……
そう考えると、この子『意志がない』ってわけじゃないと思う。
『道』にたどり着いた時も、やっぱり『自由』にはなれたと思うんですよ……自分を縛り付ける『誰か』はもういないし。むしろこっちのほうが『自由』な世界。
しかし、『座標』で娘達と繋がった。
この時だって、『何もしない』を選ぶことは出来たと思う。
でもそれをしなかった。『愛』を求めるユミルちゃんには、我が子との『繋がり』を断ち切るなんて出来なかったから。
むしろ『座標』で『誰か』と繋がることを求めていたのは、ユミルちゃんのほうじゃないの?
エレンよ。お前にとってはどうだ? 『帰る場所』がなければ『自由』になれると思ったから仲間達(帰る場所)を突き放して自由を奪いに行ったの?
しかし、『自由』とは『生まれた時から持ってるもの』であって、『誰かから奪い取って得られるもの』じゃないぞエレン……!
そしてユミルちゃんも。
『無償の愛』って『もらうもの』じゃなくて『与えるもの』だと思うよ……!
槍に刺さり、そのまま死んだ理由が『本当に急所をやられた』だったならまだしも、もし『ここまでやって自分の欲しいものが得られないなら生きる意味ないよね』だったとすると、娘達の存在の意味は?
王様に『起きろ』言われた時、ここでユミルちゃんがブチギレて、このヒゲキング〆る胆力があれば……! それにはまず、『相手と対等』にならねば、自分の要求を通すことはおろか望むことすら許されないんやなぁ……
一見ヒーローに見えますが……
指引きちぎってまでユミルちゃんのとこへ行ったエレン。これに関してはマジですげぇよあんた……いくら治るっつーても痛くないわけじゃないのに。(マーレ潜入のために足ぶった切るようなヤツだからなぁ……)
ここだけ見ると『かわいそうな女の子を救いにやってきたヒーロー』に見えてかっこよかったよね。ホント、ここだけ見るとかっこよかったよ。
エレン「すべて過去形!?」
お前『女心』はまったく無理解なくせに、なんで『女の落とし方』は熟知しとるん……?(プロヒモニストの常套手段:優しくハートをつかみ、のち、ヒモる)
ユミルちゃんにかけた言葉、エレンの本心から出た言葉には違いなかったんですよね……まあ、問題はその後だったけど……
ユミルちゃん的にはヒゲとロン毛の二択のようで一択という選択肢のなさよ。いや、正確には『どっちも選ばない』の三択か……でもそれだと終わらないという……
そりゃあこれで『力を貸せ!』と言われたら、もう貸す以外に選択肢ないよね。それが良いことか悪いことかは別として。
神様になったエレン
さて、壁崩壊とエレン放送が来た。エレン放送は前倒ししたんですね。
トモダチ教信者のアルミン、必死でエレンを信じようとしてるけど信じてるおツラじゃありませんねこれは……
なんかみんな、シリアスな雰囲気に呑まれてるけど。
エレン、お前さぁ。ユミルちゃんに『お前は神でもない』『ただの人だ』って言ったジャン?
そのお口で、『世界を滅ぼします』宣言すんの?
お前はいつから神になった?
グリシャは進撃継承者が誰にも従わなかった理由を『すべては王の独善にあらがうため』と言ってたけど、『王の独善』は許せないのに、『お前の独善』は許されるんだね……?
『王様』の解決方法
さて、王様が『豚を逃がした罰』としてユミルちゃんを集落から追い出したけど、あれって『許す気がない』ってことなんですよね。
『罰』とは『反省させるために与えるもの』なのに、『命取られる』なら反省する意味がない。つまり王様の目的は『反省させること』じゃなくて『手っ取り早い解決』だった。
『反省させる』ってことは『許す側』も『犯人と向き合う』必要が出てくるから。
でもそれって『面倒』だよね?
『被害者の俺様がどうして加害者のためにそんな面倒なことしてやらなきゃいけないんだ!』って思っちゃうよね?
加害者側も『これだけ謝ってんだからいい加減許せよ!』と思っちゃうよね?
でも『片方』を排除すれば『一応は解決』したことになるから、それって手っ取り早いよね。(イジメの解決法がこれだよな……)
『どーせ許されないんだから反省するだけ無駄だよね☆』と自分達を壁の中に排除して手っ取り早く解決しようとしたのが壁の王。
『争いの原因は巨人だからあの島を攻撃しましょうね☆』と、悪魔の島を排除して手っ取り早く解決しようとしたのが世界。
『罪が許されないんならもっと罪重ねても同じだよね☆』と世界を排除して手っ取り早く解決することにしたのがエレン。
みんながみんな『手っ取り早く』解決しようとした結果、争いがいつまでも終わらず続いてるけど、それってつまり全然手っ取り早くないしそもそも解決すらしてないってことなんですがそれは。(解決の先延ばし)
一方、歴史からそれを学び『時間をかけてより困難な道(世界との和解)』に挑もうとしたのがアルミン達や兵団の大人達だったのに、エレンはその『面倒な人達』を自分の独善のために排除した。
まー、王様そっくり。むしろ同じ人かな?
お前ホント、壁の中で何を学んだの……? お前の望みを叶えるためにセルフ記憶改ざんでもしたの?(嫌味)
エレン、あなたに伝えたいことがある。
人の振り見て我が振り直せ。
* * *
相川 暁さん
考察ありがとうございます!
最終回まで見ちゃうと、ホントあれもこれも生首(笑)の仕業と思っちゃいますよね……実際どうだったかは置いといて。
しかしおじさま巨人達、せめて島の端っこでなんもせずに突っ立たせるとか出来んかったんかーい! とも思っちゃう(泣)
私もいろんなifルート考えちゃいますが、でもみんなが幸せになるルートだと漫画としての盛り上がりがなくなっちゃう別の悪夢にもなっちゃうし……(『誰的に』悪夢かは言わない)この辺は想像だけで楽しみましょう(笑)
これからも考察を楽しんでいただけるよう、がんばります!(*´∀`*)ノ
* * *
それでは今回はこの辺で。おもろかったら下にあるイイネボタンを押していただけると元気と勇気とやる気が湧いてきます(*´ω`*)ノ
次のアニメ81話考察はコチラ
アニメ進撃の巨人 The Final Season 81話『氷解』感想と考察 あきらめないガビ『私の悪魔』と真の贖罪【ファイナルシーズン】
前回のアニメ79話考察はコチラ
アニメ進撃の巨人 The Final Season 79話『未来の記憶』感想と考察 エレンから逃げられなかったグリシャと罪から逃げた壁の王【ファイナルシーズン】
66話目から飛んできましたよ^_^
タイバーさん、考察から行くと
マーレ→エルディア→マーレって事ですかね?
まぁ、初回、エルディア側に行ったのは、負けて捕虜になったけど、逸材だった為、ユミルの血を分けてもらって戦鎚の能力を手にした。みたいなもんかな。
そして、継承条件もなるほど!と思いました!
気化する前のフレッシュなムカデくんの摂取が大切とは!まさに踊り食い!生搾り!鮮度が大切。オエ。
今回もとわこさんの考察が面白くて、
どっちのクソがマシか選手権とか
もうユミルのあの顔悲惨すぎて…笑い死ぬ。
あといつもネーミングが秀逸です。
とっとこヒモ太郎とかもう…
「とっとこ〜走るよヒモ太郎〜」をテーマソングにすれば良い。
我が子は最終形態エレンのことを
「おさかなエレン」と呼んでて
魚の炊いたのをご飯に出した時は
母「上手におさかなエレンにできるかなー?」
子「うん!がんばるー!」
母「まだここに身がついてるよ。上手にとってあげてね」(世界は残酷だ)
子「ねえねえできたよ。おさかなエレン!」
母「わー上手に食べれたね!えらいぞ!」
といった具合で、
エレンは誰も幸せにできなかったけど、
我が家の食育には役立ってます☆
いつもありがとうございます!
おさかな……!
このおさかな、ちょっと骨多すぎやしませんかね(笑)
まさか食卓の平和に貢献していようとは……いやはや、子供の想像力には負けますわ。
エレンも「そんなことしてるとエレン・イェーガーになっちゃいますよ!」と、反面教師としての役には立つのかもしれない(笑)
タイバーさんは、現タイバーさんがやってること考えると、むしろご先祖様も同胞を売って信頼を得たのかも……まあ、想像でしかありませんが。
それこそ戦国武将みたいな駆け引きが当時もあったのかもしれないと思うと、時代が変わろうとやることは同じなんだなぁと思ってしまいます。