進撃の巨人 ロストガールズ 感想と考察その1 そっくりで異なるミカサとエレン 鏡男の役割
今回は進撃の巨人LOST GIRLSミカサ編の感想と考察。ホントはアニメFinalSeason2始まる前に考察しときたかったんですが、エレンがヒモすぎたせいで今頃に。
長くなったんで3回に分けてお送りします。
原作の最終回まで見てから改めて見ると、ミカサのキャラクター性がよくわかる作品でした。今回はミカサとエレンの共通点やその違い、鏡男の正体と彼の役割、どうしてミカサにはエレンを止めることが出来なかったのかについて考察していきます。
個人的にはコミック版のほうが好き。
小説版もあるけど、そちらは未読……
アニメ版、コミック版、原作を交えて考察してます。原作最終回までのネタバレしてますので、ネタバレが困る人はお引き取りください。
なお、当考察は原作最終回以降エレン・イェーガーさんに死ぬほど厳しいので『エレンすてき☆ カッコいい!』と思っていたい方は、悪いこと言わんので引き返されることをおススメします。
アニメ版とコミック版の違い
LOST GIRLSは『ミカサの両親を●した人さらいが来なかった世界線』というのは、アニメ版もコミック版も共通してるけど、ちょっと違いが。
アニメ版では『ミカサの声』が聞こえ、意識が過去に戻るわけだけど、その世界は『ミカサにとって都合のいい世界』となっている。
だからエレンがミカサの遊びに付き合ってくれたり、好意があるかのように顔を赤くしたりととってもマイルド。
あと外に行く手段が気球になってて『一緒に連れてって!』とミカサがワガママ言ったり、その約束のためにエレンの元へ向かう途中で鏡男登場。
アニメ版は『報い』や『エレンを失う』ことに対するミカサの恐怖感がはしょられた感じだったかな。アニは前後編あったけど、ミカサは一話完結だったからなぁ。
冒頭と最後に、シガンシナ決戦前のミカサが描かれてます。
コミック版もある意味『ミカサの都合のいい世界』ではあったけど、『人さらいが家に来なかった』以外は原作の世界に近かった。
特にエレンは原作通りだったと思う。『オレが一番正しくて他はみんなバカ』とばかりに、今の暮らしに特に疑問も不満もないミカサを否定して泣かせたり凶暴だったりと、ぶっちゃけうちの子に近づかんで欲しい嫌なクソガキ様だったし。
エレンがおっさん殴った時も、アニメ版はかわいい殴り方だったけど、コミック版のほうが暴力的で周囲の人達も怖く描かれているし、その後、おっさん達お亡くなりになったりと、『見えないなにか』に対するミカサの恐怖が濃く描かれてる。
そして外に行く手段が飛行機になってて、こちらでは『一緒に行く約束』まではしない。その点に関しては、コミック版は『ワガママを言わない良い子』だった。
もしかすると『アニメ版のミカサ』こそが、ミカサにとって『ちゃんとワガママが言える理想の自分』だったのかも。コミック版は我慢しすぎたから、色々後悔することになった。
それにしても、ミカサんちにイェーガー親子が来た理由が『ミカサママが第二子妊娠したから』なんよね……原作もそうだったとしたら、なかなかに鬱な話だよね。ミカサにしてみりゃ両親だけでもきついのに、これから生まれる予定だった弟か妹まで奪われてたって……
もし下の子がもっと早く生まれてて、一緒にイェーガー家に保護されてたなら、『ミカサの愛』は下の子に注がれ『エレンが独り占め』なんてことはなかったのかも。
そういう意味じゃあ、『下の子』が生まれる前に事件が起こったのって、エレンにとって『都合が良かった』んじゃあ……?(疑惑の目)
『真逆』で『同じ』な2人
作中では『真逆』で『同じ』な2人が2組出てきます。
まずエレンとミカサ。
ミカサはおとなしくおうちで遊びたいタイプ。
エレンは気性が荒く外で走り回りたいタイプ。
遊び方といい、幼少のミカサって典型的な『女の子らしい』女の子だったよなぁ。むしろ家庭環境さえよければ、幼少ヒストリアのほうがおてんばだったんじゃあ……?
アニメ版もコミック版も、エレン、ミカサの遊びに付き合ってあげてたけど、原作でエレンがミカサの遊びに付き合ったことあったっけ……?
そしてミカサは身重の母ちゃん思いやったり家の手伝いをきちんとやってるいい子。
エレンは自分のことばかり考えて相手のことは思いやらんわ親の気も知らんと遊びまわってるわというクソガキ様。まあ、9歳の男の子なんてそんなもんだけど。
でも同じ9歳児でも、ミカサは『自分が一番正しい』なんて思わず、他人のことを思いやったり色々考えとるで……
『調査兵団がなくなった』と聞いた時、ミカサは内心喜んだけど、エレンは怒った。
ミカサが喜んだのは『これでエレンは遠くに行かない』という『自分の欲望が叶った』と思ったから。
エレンが怒ったのは『オレの自由が奪われる』という『自分の欲望』を邪魔されたから。
2人とも『自分の欲望があった』という点は同じ。ただ、ミカサはそれを表に出さなかったのに対し、エレンはむき出しだった。
ミカサが『自分の想い』を表に出さなかったのは『エレンの気持ち』を思いやったから。
エレンが『自分の想い』をむき出しだったのは『ミカサの気持ち』なんて考えもしなかったから。
エレンはミカサを『無知』扱いし、ミカサも自分のことをそう思ってたけど、他者を思いやれるぶん、ミカサのほうがよっぽど大人だよ……
ミカサと鏡男
そしてもう一組の真逆で同じな2人は、ミカサと鏡男。
本人のおっしゃる通り、『誰でもある』というんなら、この人の正体ミカサじゃないの?
まず性別が男と女。そして大人と子供。
エレンの元に行きたいミカサと行かせまいとする鏡男。
そして顔はどちらもミカサ。
にしてもこのお面、どっから外見るんや……マジックミラーにでもなってんの?
『鏡男』は、ミカサがエレンの元へ行くことを阻止することで『平穏な日常』へと引き戻し、『無欲に生きろ』という存在。『安定が一番!』という大人的な思考。
『エレンの元へ行きたい』というミカサは『平穏な日常』を捨て『欲望に生きろ』という存在。『刺激が欲しい!』という子供的な思考。
そう考えると『鏡男』は『平穏な日常に戻りたい』と願っていた『大人のミカサ』と言える。
そして『何があってもエレンの側にいたい』と願っていたのが『子供のミカサ』だった。
鏡男は『催眠術』なんて言ってたけど、彼の言葉は『ミカサの本心への問いかけ』だったよね。
『本心』に問いかけることで、ミカサの『本性』を引きずり出した。
だから『子供(欲望)』のミカサは鏡男を刺し、『大人(無欲)』の鏡男はミカサに刺された。
鏡男の役割
エレンに会うため、鏡男を刺したミカサだけど。
これ、刺さなくても逃げること可能だったよね?
だって鏡男はミカサに両手でナイフを握らせた後、自分の手ぇ離してるじゃん。
ナイフ放り捨てて全力ダッシュすりゃあ逃げられた。
そうじゃなくても『そんなことするくらいならあきらめます』という第三の選択肢もあった。
しかし他の選択肢がないかのように自分を追い詰め『そんな世界いらない!』と、能力覚醒させた。まるでこの世界に対する『復讐』であるかのように。
もちろんミカサを『それしかない!』と追い詰めたのは『稀代の催眠術師』のなせる技だったとも言えるけど、『エレンに会いたい』というミカサの気持ちは『催眠術』でもなんでもないミカサの本心。
ミカサは『エレンに会いたい』という『自分の欲望』を叶えるためなら、それを邪魔する『敵』を●せる子。自分の残酷さを世界のせいにして。
『世界のせい』にして自分を肯定化し、フルパワー地鳴らし起こしたエレンと同類。
そんなミカサの『本性』を暴いたのが鏡男だった。
ミカサが鏡男を刺せたワケ
エレンとミカサって『真逆』だったけど『同類』でもあった。
だってこの2人、突き詰めると『欲しいもの』があって、『何を犠牲にしてでもそれを手に入れたい』という自分の欲望のために行動してたから。
違ったのは、その『欲望』を満たすための『代償』が『自分』か『他人』かだった。
ミカサが『エレンの側にいたい』と願うたびに、母ちゃんが体調悪くして、それが『自分があんなこと願ったせいだ』と罪悪感を抱くんだよね。
そしてそれに対する『償い』のようにお手伝いをせっせとしてたけど、意地悪言わせてもらうと『いいこと』をすることで悪事を『チャラ』にしようとしたみたい。
まあ『会いたい』と願うことが『悪事か』というと、まったくそんなことはないはずなんだけど、ミカサは罪悪感を抱いてしまった。
だって母親の体調が悪化しても『エレンに会えなくても我慢します。だからお母さんを元気にして!』とまでは願わなかったから。うーん、これは悪い子。
やっぱり心の奥では『エレンに会える喜び』があったんだろうね……それが『罪悪感』を生んだ。
ミカサは『超悪いことしてる』と思っていたけど、それでも『エレンに会いたい』という『欲望』は抑えられなかった。だから『エレンに会えない世界はいらない』と、鏡男を刺した。
『おもちゃのナイフ』というオチだったけど、鏡男の言う通り『刺したことは事実』であり、本物だったら死んでたんよ。
つまりミカサは『自分の自由のためなら他人の自由を奪える子』であるということを『証明』した。
そのためなら、悪者になって自分の手を汚すことが出来る。
ミカサにとって『自分の欲望』を満たすための『代償』は、『自分』を犠牲に支払うものだった。
エレン流代償の支払い方
一方、原作エレンはヒストリアに『巨人継承回避しろ』と言った結果、ホントに巨人継承回避してくれて心置きなく地鳴らししに行ったんだよね……『頼んだこと』と『ヒストリアの妊娠』はモロ関係してるのに、そうとは受け取らなかった。
だってエレンは、仲間達の『自由』は奪わないと決めていたから。
継承回避の方法はヒストリアが『自分から』提案してくれたからその『自由』を尊重した。エレンは『仲間の自由を奪わない超いい人』だったから。
島に犠牲が出ようがイェーガー派が好き勝手しようが仲間達が同胞●しする状況になろうが彼らの『自由』を尊重した。エレンは『仲間の自由を奪わない超いい人』だったから。
だからエレンは『フルパワー地鳴らし』することが出来て素直に喜んだし、『みんな幸せに生きていけますように☆』と超いいことしてる面構えで、とせっせと世界を踏みつぶした。
そして『ベルトルトが巨人に食われる状況』は回避しておきながら、『母ちゃんが巨人に食われる状況』は回避するどころかむしろ巨人を向かわせた。
『自分の自由を奪われるくらいならそいつから自由を奪う』というご本人のお言葉通り、『自分の欲望』のためなら『母ちゃんですら犠牲に出来る子』であることを『証明』した。
エレンにとって『自分の欲望』を満たすための『代償』は、『他人』に支払わせるものだった。あんたって子はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
Q:俺達は自由を求め、代償は同胞が支払った。そのツケはどう支払えばいいでしょう?
エレンさんの回答:ツケも同胞に支払ってもらいましょう
進撃の巨人の能力って、代償を他人に支払わせる能力なの?(嫌味)
ジークお兄ちゃんも親売ったけど、あっちは『大人にそそのかされた』のと自分の身を守るためであって、お前はなんの恨みもない母ちゃんを自分で●しに行くってどういうことやねん……!
ミカサとエレンの違い
ミカサとエレン、この2人の違いってさ。
たとえば子供である自分が悪さをして、親が誠心誠意、被害者に『謝罪』する姿を見せることで『自分はそれだけ悪いことをしたんだ』『もう親にこんなことさせちゃいけない』と心から反省し、自分も頭を下げて『ちゃんとした大人』へと成長出来るタイプなのがミカサ。
『そうか! オレがなんかしても親が頭下げてくれるからオレは頭下げなくていいんだ!』という想像の斜めを行く発想で何度も同じ悪さを繰り返しては親に頭を下げさせる永遠のクソガキ様タイプがエレン。だからエレンは『無責任』で居続けた。
そんな感じだよね。
グリシャ「やはりサイコパスかな?」
カルラ「シンプルにバカなだけよ……」
親って『子を守る責任』を持ってるから、危険なことをしてたら『子供の自由』を奪ってでもそれを阻止せずにはいられない生き物なんやで……
そういう意味では、ミカサは『エレンの母ちゃん』のようであって『母ちゃん』ではなかったね。れっきとした『恋する乙女』だった。
だから少女のミカサには、エレンを止めることが出来なかった。
何故エレンを『止める』ことが出来ないのか
エレンに会うためなら自分の手を汚せる子だったミカサだけど、『エレンの自由』だけは奪うことが出来なかった。
これって、ミカサが『恋する乙女』だったせいじゃないかと思う。
つまり『エレンに嫌われたくなかった』から止められなかっただけなんじゃないの?
ミカサの『欲望』が『エレンの側にいたい』だけなら、『エレンの自由』を奪ってしまえばいい。だけどそうはしなかった。
それを奪えば『自分がエレンに嫌われる』と思っていたから。
エレンにとって『自分の自由』を邪魔するヤツはみんな敵。そんな『エレンの邪魔』をしたら、エレンに嫌われ、もう会えなくなる。
『文字通り世界のすべてを敵に回してでも島を守る』ことが出来ずに中途半端に『超いい人』になったせいでだーれも救えなかったのが原作エレンだったけど、『エレンに嫌われようとエレンを守る』が出来ず『エレンの超(都合の)いい人』になってしまい、後悔したのがコミック版LOST GIRLSの『少女のミカサ』。
『エレンに嫌われたくない』とはすなわち、エレンを守ることの放棄。
そうこうしてるうちに『大きな力』があの手この手で『エレンの自由』を奪っていった。まずは壁。次は調査兵団解散。そして最後はエレンの命。
『大きな力からエレンを守ってあげられるかもしれない』というグリシャの言葉は、結局『かもしれない』で終わった。
少女のミカサは『自分の欲望』の奴隷になっていたから。
だから原作ミカサは、『自分の欲望』を捨てることで『欲しがる少女』から『与える大人』になり、『大きな力』からエレンを解放した。
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金眼銀眼さん
コメントありがとうございます!
私も連載を追っかけてた頃は、エレンに対して『なんかに操られてる』とか『ネオなラスボス出てくる』とか、そう思って手ぬるい考察していた時期がありました。まあ、最終回まで特にそんなことはなかったわけですが……(遠い目)
これからも世間の空気ガン無視で、エレンに非情な考察をしてまいります!(悪魔か)
本のおすすめ、ありがとうございます! 風と共に去りぬ、いずれ読んでみます。
私からもおすすめをば。すでに読んでる人多いでしょうが、最近話題になった『同志少女よ、敵を撃て』。
主人公はまさにガビでした。主人公を狙撃兵に育てた教官はリヴァイっぽい?
進撃が好きな人や、今起こってる戦争に関心がある方は色々考えさせられる一冊だと思います。
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それでは今回はこの辺で。おもろかったら下にあるイイネボタンを押していただけると元気と勇気とやる気が湧いてきます(*´ω`*)ノ
次回はコミック版の『大きな力』や『相応の報い』と、凡人エレンと特別な女の子達の考察となります。
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アニメ進撃の巨人 The Final Season 87話『人類の夜明け』感想と考察 その3 脳死のヒストリアと大きな赤ちゃんのエレン