進撃の巨人 ロストガールズ 感想と考察その2 凡人エレンと特別なミカサ 大きな力と相応の報いって何だ
進撃の巨人LOST GIRLSミカサ編の感想と考察2。
今回はコミック版の『大きな力』や『相応の報い』とはなんだったのか、そしてエレンの凡人っぷりと特別な立場でありながらエレンのせいで凡人になってしまったミカサやヒストリアについて考察していきます。
今回はコミック版中心の考察になってます。
アニメ版、コミック版、原作を交えて考察してます。原作最終回までのネタバレしてますので、ネタバレが困る人はお引き取りください。
なお、当考察は原作最終回以降エレン・イェーガーさんに死ぬほど厳しいので『エレンすてき☆ カッコいい!』と思っていたい方は、悪いこと言わんので引き返されることをおススメします。
コミック版の『大きな力』
アニメ版でははしょられてたけど、コミック版では『大きな力』なんてワードが出てきます。
たしかに、人さらいが野犬に食い●されてたり、エレンに暴力振るったおっさん達が事故死したりと、まるで見えない『大きな力』が働いてる感があった。
でも現実は『人さらい』はエレンと能力覚醒したミカサで●してんだよね……エレンに暴力振るったおっさん達も、ミカサが回避してくれたし。
そこに『大きな力』はないよね? あったのはエレンの狂暴性とミカサのアッカーマンパワー。
まあ、ある意味『エレンが来る日にミカサの両親が●される』が『大きな力』的な感じするけど……
LOST GIRLSは『ミカサにとって都合の良い世界』だったけど、逆に現実の世界は『エレンにとって都合の良い世界』だった。
たとえばアッカーマンパワーがそう。
LOST GIRLSでは『エレンに会いたい』という『ミカサの欲望』が、ミカサのアッカーマンパワーを覚醒させた。
ミカサは『ミカサの都合』で能力に目覚め、道を切り開いた。
でも現実では、エレンの『戦え!』という『エレンの欲望(有害な獣を駆除したい)』が、ミカサのアッカーマンパワーを目覚めさせた。
ぶっちゃけ、ミカサが能力に目覚めて一番都合がよかったのってエレンなんだよね。おかげでエレンは何度も命拾いしたし。
一見、現実の世界って『エレンにとっても不都合な世界』に見える。なにしろ壁の中に閉じ込められ、しかも母親は巨人に食われた。
ところが最終回で、カルラママが巨人に食われたのが、まさかのエレンの仕業と判明した。
エレンに『都合の良い』世界
壁が壊され、母ちゃんが巨人に食われて一番『都合がよかった』のって、結局エレンだったんよ……むしろ『自分に都合良く』するために巨人を送り込んだとさえ言える。
LOST GIRLSで、ミカサが初めて調査兵団を見たあの日は、まさに1話の壁が破壊された日だった。
でも壁が破壊されなかったLOST GIRLSでは、その後、調査兵団は解散→門が埋められたわけで。それってつまり、調査兵団が存続出来たのは壁が破壊されたおかげってことでしょ?
さらには『壁が破壊された』おかげで『自分の自由』を阻む母ちゃんを排除し、希望と退路を断たれたグリシャはエレンに巨人継承させる以外に選択肢がなくなった。
おかげさまで『復讐』という名の『自分の行いを肯定化するのにもっともらしい理由』まで出来た。一石二鳥どころか四鳥。
『その事実』があった『おかげ』で、ジャン達はエレンに対して同情的で、エレンの行動の理由を『理解した気』になってしまった。
ジャン達には申し訳ないが、ぶっちゃけ母ちゃんが食われなくても、LOST GIRLS同様『別の理由』作って『こんなこと』やらかしてたと思うわ……ワタシダマサレナイヨー
おまけに、かつて自分を異端者と蔑んだ連中に『ほら見ろやっぱオレが正しかった!』と証明することが出来た。あ、一石五鳥かー。(嫌味)
フルパワー地鳴らしもそう。世界が『悪魔の島を滅ぼしましょう』と宣言してくれたおかげで、『自分の行い』に対する大義名分が出来、島民からは『超いい人』と感謝されまくった。
ミカサにとって現実の世界は『残酷な世界』だったけど、『ミラクル始祖パワー』という『大きな力』を自分の欲望のために大いに利用出来る現実の世界は、まさに『エレンに超やさしい世界』だった。
勘違い凡人男のエレン
前回『真逆で同じ2人』を2組挙げたけど、実はもう一組いたりする。
エレンとエレンをボコボコにしたおっさん。
結局エレンって『自分は特別』と勘違いした最高にイタイ『超凡人』だったと思うわ。おっさんと同じ。
LOST GIRLSはミカサのキャラクター性を描いた物語だけど、特にコミック版はエレンのキャラクター性もよく描かれてたと思う。エレンのキャラクター性、それは『自分の正しさのためなら他者を否定する』こと。
そしてそれは、まんま『自分がされたこと』でもある。
自分がされて嫌だったことを『強い立場』になった途端、他人にする人って『弱いヤツ』であり『超凡人』なんですよ。強くて『特別な人』は、弱い者いじめなんてしないから。
エレンをいじめた人達は『凡人』だった。だから『自分の正しさ』を疑わず、『正しい自分』を殴ったエレンを『正しい俺様』がボコボコにし、エレンを理解することもなかった。
そしてエレンも『凡人』だった。『凡人』だったから『自分の正しさ』を疑わず、『正しいオレ』をいじめるヤツらを憎み、彼らを理解することもなかった。
『オレはあいつらと違う』と自分で力説してるヤツほど本質は『あいつら』とまったく同じ。さすがグロス曹長の生まれ変わり。(嫌味)
エレンもおっさん達も『自分の正しさ』を疑わない『超凡人』だったから、『大きな力』を『みんなのため』と称して『私利私欲』のために使った。
おっさんは『自分がスッキリするため』大人のパワーで自分より弱いガキをボコボコにしただけ。
エレンは『なんでかわからんけど自分がやりたかった』んで自分より弱い人間を踏みつぶしまくっただけ。
エレンが『凡人』だと知らない人達は、自分達とは違う『特別な人』が『みんなのため』に使命感でやったことだと思っていたので他人事のように喜んだ。
そして『自分達と違う特別な存在』が『強大な敵相手に』したことだから、その勇気を讃えて、凡人達は絶対服従を選んだ。
『罵声』か『賞賛』かの違いだけで、『別の生き物扱い』してることに変わりはないと思うけどね。それ。
一方、エレンが『凡人』だと知ってる人達は、自分達と同じ『普通の人』が『大事な仲間のため』に無理してやったと思っていたので自分事として傷つき、苦しんだ。
そして『自分達と同じ普通の人』が『弱者相手に』それをしてるもんだから、その非道な行いをやめさせるべく、友として、仲間として対話しようとした。
まあ、実際は自分がやりたくてやっただけという狂った理由だったんですが……そら『俺達のためにやめて!』なんて言ったところでやめるわけねーわ……
特別なミカサ
原作で島民はエレンのことを『特別だ!』とチヤホヤしてたけど、それってエレンに与えられた『巨人パワー』に対してであって、それを持たないエレンは『危険な馬鹿ガキ』として扱ってたよね?
一方、ミカサは自分のことを『特別だ!』なんて思ってる節なかったよ?
めずらしい東洋人とのハーフだったり将軍家の血筋だったりアッカーマンの血筋だったり成績優秀で主席卒業したりと『めっちゃ特別』な条件そろってるのに。
それどころか『人よりめっちゃ強い』という自覚があったもんだから、『人よりめっちゃ強い者』として『より強大な敵』と戦う『責任』さえ背負っていた。
『特別』であるが故の『責任』を背負っていたというのは、ヒストリアと同じ。
とはいえ、ミカサもヒストリアも『血筋が特別』なのであって、自分のことは『普通の人』と思ってた。
なぜなら彼女達は、自分が『特別』かどうかを決めるのは『他人』だと知っていたから。
それを知っていたから『私はみんなが思うほどすごくないんだけどなー』と思いつつも、周囲の『特別な人に対する期待』に応えるべく『責任』を背負った。『特別な力』を手に入れてしまった始祖ユミルちゃんもそうだったのかも。
そして皮肉なことに、2人にそれを教えたのが超凡人のエレンだった。
『凡人』になってしまった少女たちと最後まで『凡人』だったエレン
『特別』で『責任感』もあった2人だけど、エレンが絡むと『凡人』になってしまった。
なぜならミカサとヒストリア、2人にとってエレンは巨人パワーの有無関係なしに『特別な人』だったから。
『恋する乙女』は『特別な男の子』の前では『フツーの女の子』になってまうんや……!
それ自体はいい。ただ、『惚れた相手』が悪すぎた。
たとえば、自分よりハイレベルな相手に恋をした場合。
- 『自分もハイレベルになろう!』とめっちゃ努力する
- 『あんな高嶺の花、自分には無理やわー』と遠くから見るだけで何もしない
- むしろ向こうに自分のとこまでレベルを落としてもらう
間違いなくジャンは『1』だが、エレンは『3』や……!
よりにもよって、そんなさげメンの『特別な人』にして欲しいと願った結果、ミカサもヒストリアも『都合のいいヒモイン』にされてもーた……!
自分で自分のことを『特別だ』と勘違いしてた奇跡の凡人はエレンだけ。
だってエレンは『自分が一番特別』であり、それ以外の人はみんな『凡人』と腹の中では思ってたから。
そんなヤツなもんだから、LOST GIRLSでは初対面のミカサにえらそーなこと言って泣かせるようなマネができた。
ヒストリアの『子供作るのはどう?』も、『凡人が特別なオレに合わせてきた』としか思わなかったんじゃないだろな……?(疑惑の目)
原作エレンが自分1人の考えで『世界滅ぼすことにしましたー』なんてことが出来たのは『特別なオレが他の凡人どもを救ってあげなきゃ!』という『自分が一番正しいことが前提』の幼稚な思考回路が大人になっても治らんままだったからだろね。うーん、これはジークお兄ちゃんの弟。
スケールの大きさはともかく『自分1人の勝手な思い込み』で進撃出来てしまった時点で、エレンもジークもスーパー凡人ブラザーズ。
ジーク「このル●ージ、凡人にしてはヤバすぎませんか……?」
『自分は凡人だ』『だから少しでも『特別な人』に近づこう』とずっとあがき続けたのがミカサやアルミンをはじめとする調査兵団ガチ勢の皆さまだったけど、最初から最後まで『自分は特別!』『だから周囲の凡人が特別なオレの思惑通りに動くのは当たり前!』と、勘違いしっぱなしのまま進撃して大迷惑をかけただけなのがエレン。
そんなヤツが『特別な人』のわけがない。
『未来の記憶』のせいで『やっぱオレ特別やったんや!』と勘違い再発したんやろな……たとえ口では『そんなこと思ってないもん!』と言ったところで行動がすべて。
エレンはシャーディス教官と話をした時の気持ちをいつまでも忘れないでいて欲しかったよ……なんという歴史に学べない男。
『相応の報い』ってなんだ?
コミック版のLOST GIRLSでは、エレンに殴られ、殴り返したおっさん達が悲惨な事故死してます。
そのおっさん達に対してグリシャは『彼らは相応の報いを受けた』と言ったんだけど、ミカサは『相応の報い』というものに恐怖を感じた。
だっておっさんは思ったことを『自由に』言っただけ。壁の中で満足することもまた『自由』なのに、その『自由』を『否定』され、殴られたわけだから。
おっさんからすると、自分は『オレの自由を奪った悪者(エレン)を懲らしめた正義の味方』なんですよ。なのにその行いに対する『報い』は『死』だった。
まあ、いい年こいた大人のクセに、子供と同じレベルに落ちて暴力振るうのは幼稚だったけどね……
本気で『いいことした』と思ってんなら堂々としてりゃいいのに、兵士を見て逃げ出すあたり、本人達にも自覚あったようだけど。
さて『相手の自由を否定した』ことに対して何かしらの『報い』が返ってくるとなると、この場合、最終的におっさん達は事故死した。
でも、おっさん達は別にエレン●してないじゃん。
つまり『相応の報い』とは『最初に行った行為を上回るなにか』ってことになる。
それじゃあ『一番最初に殴ったエレン』に対する『報い(おっさんからの暴力)』も『相応のものだった』ということになるよね?
そしてその『相応の報い』に対する『相応の報い』は『死』だった。
ミカサが『相応の報い』に恐怖を抱いたのは、『報い』の終着点は『死』であると、なんとなく感じ取ったからじゃないの?
だから『飛行機で壁の外に行く』と言うエレンに『死なないで』と言ったの?
でも結局、エレンは『死』によって終了した。
エレンが『あいつらは腰抜けだ!』と『彼らの自由』を『否定した』ことに対する『相応の報い』みたいに。
そしてそれは、ある意味『ミカサに対する報い』でもあった。
臆病ミカサへの相応の報い
ミカサが『相応の報い』に恐怖したのは、自分自身にも心当たりがあったからじゃないの?
なぜならミカサが『エレンに会いたい』と願うたびに、本当にエレンに会えることになったけど、その代償のように身重の母が体調を悪くしたから。
そして『エレンを止められるポジション』にいながら、止めなかった。
LOST GIRLSのミカサって、『エレンに死んで欲しくない』と思ってる割に、エレンを止めるための『行動』を起こさなかったよね。
『なんか都合のいい力がエレン止めてくんねーかなー』と願うだけ。『エレンに会いたい』ですらも『お祈り』するだけと、実に『他力本願』だった。(唯一の『行動』が『鏡男刺した』だった)
アニメ版は、壁の外に行くというエレンに『私も連れてって!』と言ってる分『勇気』があったけど、コミック版のミカサはホント『臆病な女の子』だったなぁ……
まさに『幸せは誰かがきっと運んでくれると信じてる』お年頃の少女。その点に関しては、目的のためにあれこれ行動を起こしてるエレンと対極の位置にいたと言える。
それにしても、どうして試しもしないで最初から『止められない』とあきらめたのかというと、まあ、確かに何が起こってもエレンがあきらめそうになかったってのもあるけど、それ以上にエレンに嫌われたくなかったからでしょ?
ミカサにとって『エレンの自由を奪う』ことによる『相応の報い』は『エレンに嫌われる』だった。
それを恐れるあまり『他力本願』になってしまった。
このミカサは、まるで『未来の記憶』に抗わなかったエレンみたい。
エレンも『未来は変わらない』と決めつけて、誰にもなーんも言わなかったよね。地鳴らししたかったから。
まあ、それでも一応は『もしも地鳴らし回避出来たら、それはそれでホッとした』かもしれないけど、回避方法については完全に他力本願だったよね。地鳴らししたかったから。(2回目)
お前よくもまあ、そんなんで『他に方法があったら教えろ!』なんて他人を責められたよな……
『身勝手』のエレン、『甘さ』のミカサ
LOSTミカサは『エレンのため』、原作エレンは『みんなのため』と理由をつけて、『抗わないこと』を肯定化した。
『自由』と『身勝手』を履き違えていたのがエレンだったけど、『やさしさ』と『甘さ』を履き違えていたのがミカサだった。
LOST GIRLSのミカサは『エレンの自由のため』と自分に言い聞かせてエレンと自分を甘やかし、結果として『エレンを守ること』を放棄した。
その『相応の報い』かのように、エレンは事故死した。
原作では、フルパワー地鳴らしで世界が滅びかけたけど、それもエレンを壁の中に閉じ込めた王様や世界への『相応の報い』みたい。
そしてミカサの手で、『エレンの命』に終止符が打たれた。
こっちもこっちで『何があってもエレンを守る!』と言ってたミカサへの『相応の報い』みたい。だってエレンを守り続けた結果が『フルパワー地鳴らし』だから。
いや、ミカサが守ろうが守らなかろうが死んどるやないかーーーーーい!
でも原作エレンにとっての『相応の報い』って『死』だったか? っていうと、微妙なとこだな……だってミカサが終止符打ってくれて、むしろ自由になれたくらいなんですけど?
ある意味『ミカサに男が出来る』がエレンへの『報い』だったかもな……『相応』かどうかは別として。
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それでは今回はこの辺で。おもろかったら下にあるイイネボタンを押していただけると元気と勇気とやる気が湧いてきます(*´ω`*)ノ
次回は原作138話の対比とアルミン。
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