烏は主を選ばない 純粋な真っ黒 あせびと『いい子』の藤波【感想と考察】
突然ですが、今回は、NHKで放送中のアニメ『烏は主を選ばない』の感想と考察を。
阿部智里先生の八咫烏シリーズは、コミック版の『烏に単は似合わない』から入り、その後原作小説も読んでて内容知ってたんで、アニメ化と聞いて楽しみにしとりました。(『主』のコミック版も、マガポケで最新話まで読んでます)
原作やコミックの情報は文藝春秋のサイト見たほうが早いっすね。原作小説の一章が無料公開されてます。
アニメのタイトルが『主』と知った時は『あれ? 単はやらないの?』と思いきや、単と同時進行だったとは。12、3話かそこらでまとめられるの!? と心配してたんですが、まとめてしまった……『大人の事情』で色々はしょられたのは残念。
アニメ版はアニメ用のキャラデザでしたが、個人的に澄尾さんのキャラデザが凜々しくて好きです。コミック版はちょっとかわいい少年感がある。(そっちも好きだけど)
そしてコミック版でもアニメ版でも雪哉はかわいい。
ちなみに原作小説は2巻までしか読んでないんで、3巻以降はまったく知らんのですよね……アニメはてっきり13話が最終回と思っていたので、続くと知ってちょっとびっくりしてたところです。え? このまま3巻突入するの?
いきなり化け物出て来て人食われとるわ、ジャンルがホラーめいとるやん……元々ホラーやったわ。(え? 『ジャンル:サイコパスホラー』じゃないの?)
気を取り直して、それではアニメの感想と考察を。
ちなみに今回は、事件の真相が判明した12話、13話のあせびや藤波関連を、好き放題書き散らかしております。
- 個人的な感想と考察です。考えるだけなら自由だ!
- 現時点で原作は2巻までしか読んでいません。予想や考察はすべて2巻時点の情報を元にしたものなので、心優しい原作勢の方はあたたかく見守ってあげましょう
大紫の御前が『あせび』と名付けた結果
さて、この『烏は主を選ばない(烏に単は似合わない)』ですが、初見だと『4人のお姫さまが若宮さまをめぐってバッチバッチの女の戦い!』と思いきや、肝心の若宮さまはまったく来ないし、気が付くとジャンルが『ミステリー』になり『サスペンス』になり最後は『サイコパスホラー』になるという……
『ジャンル:サイコパスホラー』の元凶となったあせびちゃんですが、アニメ版では、皇后さまの名づけのシーンから始まりましたね。
皇后さまこと、大紫の御前的には、かつて皇后の座を争った浮雲の娘に、『せいぜい頑張ってお馬さん(若宮)酔わせてネ☆』という『嫌がらせ』のつもりで『馬酔木』と名付けたんだろうけど、ふと横を見たら、『私のダンナが馬でした☆』というダンナ紹介だったというオチ……!
この美しい弧を描いて返ってきた皇后ブーメラン、芸術点高いですね……アニメでそのシーンがカットされたのは残念。
※早桃が『高貴なお方から』と持ってきた長琴の送り主が若宮のパパ。アニメ版ではカットされてしまいましたが、原作とコミック版ではお后決定後、若宮と皇后さまの対話シーンがあり、若宮パパがガッツリあせびに横恋慕していたことが判明する。
大紫の御前、その行動力が『山内全体のため』に使われていりゃあなぁ……
でも一番あかんのはダンナ(若宮パパ)だよね。本来は、南家ばっかひいきする嫁さん諌めなきゃいけない立場なのに、ほったらかした結果、長束さまも若宮さまも苦労したという……
長束お兄ちゃんが弟ちゃんのためにしたこと、本来は父ちゃんがせなアカンことやん! なのに、この父ちゃんが我が子のためになんかした描写はない……(愛はあるんか?)
そら、退位迫られてもしゃーないかもしれん。
純真無垢・あせび
さて、初見の人物評価が、『純真無垢』とか『無邪気』になりがちなあせびちゃんでしたが。
『善人ヅラや主人公ヅラしてるヤツこそ警戒しろ』ということを、進撃の巨人とあせびちゃんから私は学んだ。(真顔)
ホンマ、最後ひっくり返してくれたよなぁ……ときメモ(古)でいう藤崎詩織ポジションだと思うじゃん?(※『ポジション』だけで『中身』もそうとは言ってない)
しかも幼い頃に若宮さまと会っていたとか。
でもあせびの『純真無垢』は、ただの『無知』だった。
『無邪気』は『自覚なき邪悪』だった。
色で例えると『一点の抜けも色あせもない真っ黒』だった。
そんなあせびの『食い物』にされたのって、基本的に『やさしい人』だった。
そして、一番あせびに『食い物』にされたのが藤波。
藤波にとって不幸だったのは、『自分は無知だ』ということを藤波自身が知らなかったことだよね……
早桃にしてみれば、藤波が『無知』だったせいで、命取られただけでなく、盗人の汚名まで着せられるし。家族にとって地獄だわこれ……
しかもその後、藤波の罪の隠蔽に利用するため、侵入した嘉助を『これ幸い』と、滝本が●してしまうし。そのとばっちりを受けたのが白珠。
藤波が『あせびおねえさまのため』にやった『親切』が、被害者をどんどん増やし、藤波を苦しめた。
あせびという人物に対して『無知』だったから。
そして当のあせびは、みんな『善意で』『勝手に』やったと思ってるから、本気で『おかわいそう』と思って泣いた。
ただ、藤波の『無知』は『幼さ』からくるものだったけど、あせびの恐ろしいところは、『無知であることそのもの』を『武器』にしてたってところだよね。だからこそ、『自分の無知』を隠そうともしなかった。
『かしこぶる』のが愚かな人だけど、『自分を愚か』に見せるのが『かしこい人』なのよ……(だから若宮さまと雪哉は『ぼんくら次男』になった)
うこぎと茶の花、忠義対決
あせびちゃんのかしこいところは、自分が『悪意なき無知者』であれば、『罪に対する責任』は『知者』である『誰か』が取ってくれることを『知っていた』ってことなんだよね……
「うちの姫さまは悪意なく人を陥れる人じゃない!」とあせびをかばったのがうこぎだけど、こんなに忠義を尽くすうこぎに対し、あせびがしたのは『手紙黙認の共犯者にする』や『着物を取り上げた悪者にする』という、うこぎを陥れる行為……うん。たしかに『悪意』はないかもしれんね。『悪意なく』ナチュラルにやっちゃっただけで。
これもう『真の邪悪』やろ……(白目)
めっちゃ『あせびへの忠義』に尽力するうこぎ、いい人すぎて不憫……!
『北家への忠義』のために白珠犠牲にしようとしたのが茶の花だったけど、もう、茶の花とうこぎをとっかえてさしあげて!(ぶっちゃけ、茶の花こそがあせびの側仕えにふさわしい人だったのでは……?)
あせびと長束さまの違い
結局、早桃●しの罪は藤波が背負うことになるんでしょうかね? この世界に少年法的なものがあるのか知らんけど。
確かに、櫛をあげたり、早桃への殺意はなかったのは間違いない。でも『無知』を理由に、藤波の『やったこと』を『なかったこと』にするってことは、それってつまり『うーん、知らなかったんならしゃーない。無罪ね!』という『あせび理論』を肯定するってことでだな……
その一方で、あせびの罪を問おうにも、あせび本人が『早桃消せ』なんて命令したわけじゃないのも事実だし、『悪意を証明することが出来ない』のも事実だもんな……
あくまであせびは『困った困った』してただけ。『どうするか』は藤波に丸投げ。
藤波も『あせびへの親切心』で、『勝手に』やっただけ。
『それでもあせびの罪を問う』と言うんなら、別件とはいえ、長束さまも罪に問わなきゃ筋が通らなくない?
あせびと長束さまって似てる。『自分が何もしなくても、周囲の人が私のために勝手になんかしてくれる』というこの状況が。ただ、そうしてくれることを、本人が『望んでいる』か『望んでいない』かの違いがあるだけ。
もちろん、『故意』と『過失』の違いもある。『故意に』手紙のことを黙ったり、藤波を頼って早桃を消すよう仕向けたのがあせび。嘉助も、呼び出す手紙を出しておきながら会うことはせず、真赭の薄を潰そうとした。
一方、敦房達を抑え切れなかった『過失』で若宮さまをピンチにしたのが長束さま。偶然か直感か、雪哉を外で待たせた若宮さまと、機転の利く雪哉が、その失敗のリカバリーをしてくれたから未遂に終わっただけ。
藤波も敦房も、『誰か』にとって『不都合なひと』を消そうとしたという点では同じ。
それも、『命じられて』やったわけではない。自分の意思で『勝手に』そうしただけ。(敦房は皇后さまの存在もあったけど)
でも敦房を始めとする長束派の皆さまは、口では『長束さまのため』と言っておきながら、『家のため』とか『自分の利益のため』ってのが根底にあって、むしろ『自分の正当性』のために『長束さまを利用してた』んだよ……本気で『長束さまの気持ち』を尊重してやってたのは路近さんくらいだった。
長束さまはそのことに苦しんでたし、責任も感じてたよ? そしてそれをよく知っているのが若宮さまでして。
しかし藤波は、あせびに頼られ、本気で『あせびおねえさまのため』にやっちまった。
その結果、手を汚してしまった藤波ばかりが苦しみ、一方あせびはきれいな手のまま『おかわいそうに』と、 完 全 に 他 人 事 として憐れんで泣くだけ。
『罪』も『責任』も、『やっちまった藤波持ち』と本気で思ってるから。
あせびって、物語のサイコキャラとしては魅力的かもしれんけど、『自分の身近』には絶対いて欲しくないタイプだわ……(厨二病患ったなんちゃっておサイコさんと、ガチもんは違う……)
あせび個人を見た藤波、長束の血筋を見た敦房
藤波は、『あせびに自分の本当のおねえさまになって欲しい』という子供らしい欲望もあったけど、でもそれだって『血筋』とか打算ではなく、純粋に『あせび個人』を慕っていたからそう思っていたんだよね……その結果、あせびの『都合のいい子』にされた。(この辺は若宮さまと雪哉の対比みたいだな……)
つまり藤波って、子供らしい、本物の『いい子』だった。ただ、『あせびの本性』までは見えてなかったし、見ようとしなかっただけで。(父ちゃんの悪いトコ受け継いじゃったかなぁ……)
一方、『長束さまの血筋』を見て『長束さまのために!』と言いつつ自分ちのために動いてた敦房たちは、ただの『偽善者』だった。だから長束さまは迷惑してた。
敦房は自業自得で同情の余地ないけど、藤波はなんつーか……いや、やったことは重罪だし、一番かわいそうなのは盗人の汚名まで着せられ●された早桃なんだけど……
嘉助もまあ、かわいそうなんだけど、あせびへの下心も見えるんだよね。そそのかされたとはいえ、双葉の寝所に入ったのはあせびへのアレコレ目的でしょ? その代償として『息が生臭いby双葉』という余計な情報が発信される罰を受けたけど。
だけどあせびに利用されたことに気づきもしないで、またしても同じこと繰り返したってことは、双葉のことは『間違えた自分が悪い』と解釈し、あせびのことは一切疑わなかったってことなんだろうなぁ……『いい人』だったから。
藤波は『いい子』だからこそ、これから苦しみながら生きることになるんだろうね……『長束さまヒャッハー!』してた敦房みたいに、いっそのこと藤波も、いい子の自分なんか捨てて『おねえさまヒャッハー!』するくらいのイカれ根性があれば幸せになれたかもしれない。
若宮「そんな妹はいらん」
美しくも恐ろしく、そしてたくましい
ホント、あせびって『いい人』を使うのがうまかった。
実際『やったこと』のみを羅列すると、あせびはルール破り(男と文のやりとり)をしたくらいで、他はあせびの『いい人』たちが、『勝手にした形』になってるのがタチ悪い。嘉助を呼びつけたことだって『ちゃんと目印飾ろうとしましたぁ~。でもうこぎが取り上げたんですぅ~(人のせい)』と、全部『逃げ道』を用意しとるし……
これ、あせびを訴えたところで、あせびに敏腕弁護士がついたら負けるかもしれん……
あせびを裁こうにも裁けないとか、若宮さま、やりきれねぇ……!
そら若宮さま、人前であせびを期待させて持ち上げまくったところでたたき落とすくらいしてもいいと思う。
それにしても、『己の無知』によって破滅したのが藤波だったけど、『己の無知』を武器に全方面不幸にしてでも皇后の座にのし上がろうとしたのがあせび。風が吹けば吹っ飛びそうな見た目しといて、ある意味めっちゃたくましいわ。
まさに『東家は腹黒』という評価にふさわしい人だった……
それでは今回はこの辺で。
次回は、アニメではカットされましたが、原作とコミック版にあった浜木綿両親の死の謎や、あせびママこと浮雲とあせびの出自関連を。
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