烏は主を選ばない あせびと白珠 男対決!骨のある一巳と骨抜きにされた嘉助【感想と考察】
『烏は主を選ばない』感想と考察。今回はあせびと白珠の男対決ということで、コミック版『烏に単は似合わない』で語られた、一巳と嘉助の違いについて。
一見、共通点のある2人ですが、愛した姫によってずいぶんと差のある結末を迎えました。
- 個人的な感想と考察です。考えるだけなら自由だ!
- 現時点で原作は2巻までしか読んでいません。予想や考察はすべて2巻時点の情報を元にしたものなので、心優しい原作勢の方はあたたかく見守ってあげましょう
真っ黒あせびと真っ白白珠
一見、『純真無垢』『無邪気』だったのがあせびで、『腹黒』『非情』だったのが白珠だったけど、フタを開けてみれば、真っ黒けで人の心なかったのがあせび、純真無垢で無邪気だったのが白珠だったなぁという……まさに名は体を表す。
白珠は、本来心優しい子だったからこそ、『みんなのため』に過剰に『責任』を背負い込んだり、悪女やってる自分に苦しんだんよ……そして、『純真無垢』だったんで騙されたりもした。
白珠みたいな子には、宮廷なんて常に腹のさぐりあいしなきゃいけない場所、ストレスで寿命縮みそう……
方やあせびは、息をするように嘘を吐き、自由自在に涙を流し、他人が自分のせいで悲惨な目に遭っても痛む心がそもそもないんでまったくのノーダメージ。宮廷なんて、この子が一番輝ける場所……!
問題は、敵にも味方にも大ダメージ与える超自己中人間な点だけど!(致命的)
誰よりも『傲慢な宮烏』だったのがあせびってのは、なんとも皮肉だったなぁ……(他の姫は『高潔な宮烏』だった)
そしてあせびと白珠は、『自分を愛した男』も対比になってる。それが一巳と嘉助。
白珠の『彼氏』だった一巳は、骨のある男だった。
あせびの『馬』だった嘉助は、骨抜きにされた男だった。
この二人、下男という立場と、『身分違いの恋』をしてしまったという点では似てるんですが、結末がまったく違った。
この2人の違いは、『愛する姫のためになにをしたか』って点だと思う。
『悪い男』だった一巳
一巳は白珠を好きになり、気にかけてもらいたくてせっせと花を届けた。
嘉助はあせびにやさしくされたのが嬉しくて好きになった。
自ら行動を起こし、その『やさしさ』で白珠のハートを掴んだのが一巳だったけど、自分からは何もせず、あせびの『やさしさ』に捕まったのが嘉助。この2人は姫との出会いからして違いがある。
受け身だった嘉助に対し、一巳は『いつか白珠に見せたい』と思いながらせっせと庭を作ったり、自分の正直な気持ちも伝えた。白珠の登殿後も『白珠のためになること』を自分の頭で考え、山内衆に入ったり、若宮さまに近づいてスパイをやったりと、めっちゃ努力して働いた。頼まれてもいないのに。
もし一巳が、たとえば敦房みたいな『善意の押し付け野郎』だったら、白珠を無理やり連れ去ったかもしれない。『善意』で。
だけど敦房と違って、一巳には『善意』なんてなかった。『自分の身勝手』と承知の上で行動を起こしていたから。
『自覚がある』ということは、すなわち『自分の責任』でやっていたということ。なにかしら損害が発生したとしても、その責めは一巳自身が背負うことであり、白珠のせいではない。
もちろん入内することで白珠が幸せになれるんなら、一巳は身を退き、遠くから見守ることに徹したと思う。
だけどスパイをするうちに、入内しても白珠は幸せになれないと確信した一巳は、『悪い男』になって、白珠の前に姿を現した。
白珠を連れ去ることも出来ただろうに、自らの意思で来ることを望んだのは、『白珠の幸せ』は『白珠自身』でつかまきゃ意味がないと気づいたんじゃない?
そもそもの白珠の不幸の原因は、『北家の姫』という『自分の立場』でしょ?
無理やり連れ去ったところで、白珠の『選択の自由』を奪っただけになる。『暮らし』だけが貧しくなって、『北家の姫』という『立場』はそのまんま。
立場を守るにせよ捨てるにせよ、こればっかりは白珠が選ばなきゃいけない。
もちろん一巳がそこまで考えてたかは不明だけど、単純に、愛する白珠から『奪う』ということが出来なかったんだと思う……だから選択を白珠に託し、待つことに決めた。
『無害』な嘉助
勝手に色々やった一巳に対し、嘉助は『だって姫さまに言われたから』でやっちゃったんだろーなと思うの……
嘉助は、『自分の頭で考える』ってことが苦手だったみたいだね。アニメ版では、若宮さまに『あの方のためならなんだって出来る』なんて、一見『かっこいいこと』言ってたけど、では実際に何をしたかというと、『呼ばれたから行った』だけ。
嘉助は、言っちゃなんだが『やる気のないバカ』だったと思う。
口では『なんでもする!』と言ったところで、とことん受け身で、自ら考え、行動を起こすようなことはしない人。
つまり嘉助って、本来『無害』なんだよ。
実際に『なんもしない』限り、無害なの。(まあ、これが『仕事』だと『無能』扱いされるんだけど……)
ところが『大好きな二の姫からの呼び出し』という『具体的な命令』が来たとたん、『やる気のあるバカ』と化して、喜んで飛んで行ってしまった。
桜花宮もそうだし、双葉の寝所侵入の時もそう。『だって姫さまがいいって言うから』とでも思ってたんじゃない?
おまえ、そんなだからあせびに『馬』って思われちゃうんだよ……!(血涙)
嘉助は悪人だったのか?
おそらく嘉助は、割と本気で『自分とあせびは愛し合ってる』と思ってたんじゃないかな……
コミック版では、登殿するあせびに周囲は『きっと入内出来ます!(もう帰ってこない)』と言ってるのに、嘉助だけは『お帰りをお待ちしております(入内なんてしませんよね?)』なんて言ってるし……
だから受け身だった。自分がなんもせんでも、『姫さまは愛する自分の元に戻ってくる』と思ってたんじゃない?
……嘉助や。おぬしはなんもせんでもモテるどこぞのうらなり瓢箪とはワケが違うのじゃよ……(白目)
嘉助って、『あせびに幸せになってもらいたい』と『思ってはいた』だろうけど、『どうすればあせびが幸せになるのか』を『考えていた』とは思えないんだよね。彼には、あせびに対する『責任』なんてなかったから。
だからなんにもしなかった。白珠のために暗躍してた一巳とは全然違う。
では嘉助は『悪人』だったのかというと、そうではない。どっちかと言うと『善良な人』だった。ただ、『あせび』という恐ろしい姫に対して無知だっただけで。
無知は悪ではない。本物の『悪』があるとすれば、それは『自分の無知』を言い訳に罪から逃れようとしたり、『他人の無知』につけこんで、骨抜きにして悪用する人だと思う。まさに馬酔木の君。
嘉助だって、もしも主が若宮さまだったら、利用されたりすることなく正しい道を行けたはず……
恋する相手も、身の程をわきまえて、近くにいるしっかり者の女性と結婚すりゃあ、人並みに幸せな人生送れた人だと思うんだよ……まあ今度は、詐欺とかギャンブルとかで食い物にされ、『甲斐性なし』と嫁に罵られて逃げられる人生になりそうではあるけど。(アカンやん)
酔った藤波と嘉助、酔わなかった早桃
そもそも嘉助が桜花宮に来たのって、『善意』だと思うんだよ。
『姫が自分を必要としてる!』という『使命感』に燃えちゃったのかね? 元々『身分違いの恋』というものに酔ってたようだし。
なんなら、連れ去るくらいのつもりでいた……?(『話をする』ために来たんなら、部屋の外から声かけない……?)
藤波もそう。2人とも『この人を助けられるのは自分だけだ!』という『善意』や『使命感』があった。それは嘘じゃないと思う。
だけどその根っこに、『好かれたい』『嫌われたくない』という『下心』もあった。
だから2人とも、あせびちゃんのテンプテーションで骨抜きにされ、いいように使われた。
結局この2人、『自分のため』にやってた。すなわち『偽善』。
だけどその自覚を持たぬまま、『おねえさまのために!』『姫さまのために!』と、『いいこと』してる自分に酔っ払って、『悪いこと』をした。まさに馬酔木に酔った馬。タチ悪いのが、『自分は酔っている』という『自覚』がないこと。
『自覚のない酔っ払い』がやることなんて、そらロクなことになるわけないわ……
結局、『善意のボランティア』で動いてたのは早桃だけだったな……だから『下心』を必須とするあせびのテンプテーションが早桃には通じなかった。
早桃は本物の『善意』と『使命感』で藤波を正そうとしたけど、酔っ払いの藤波には話が通じず、消されてしまったというのが気の毒……
藤波と嘉助が幸せになるには
『善人』ほど食い物にされると言うけど、結局『下心』があるせいだと思う。腹の内では『感謝されたい』とか『人からよく見られたい』とか、なにかしら『見返り』を期待してる。
あせびはそういう『下心』を見抜くのがうまかったんじゃない? だから藤波も嘉助もつけ込まれ、食い物にされたわけで。
一巳のように『善意』や『使命感』ではなく、『自分の身勝手』『自分の責任』と自覚し、むしろあせびを食う勢いで『入内だ入内だ! 邪魔者はみーんなご退場だぁーーーーーーー! あせびちゃんさまの入内だヒャッハーーーーーーァァァァァァァ!』くらい振り切ったほうが、藤波は『ハッピー☆推し活ライフ』送れたと思うの……(それをやったのが敦房)
文字通り自分がなんもせんでもライバルが消えるから、これにはあせびちゃんさまもにっこり。おねえさまに好かれて藤波ちゃんもにっこり。桜花宮は一年待たず血の海に。
若宮「滝本仕事しろ」
毒を喰らわば皿まで。嘉助も、徹底的に尽くした末に、にっこにっこのあせびちゃんさまに消されても、『二の姫さまのためなら喜んで!』食われるくらいの芸術性魅せろよ……!
嘉助はそれくらいのことやって初めて、二の姫さまから『使い捨ての馬』ではなく『使える馬』くらいには愛されたかもしれんのに。色々残念な男だった……
嘉助「どっちに転んでも馬なんですね……」
それでは今回はこの辺で。
よかったら下のイイネボタン押してもらえると喜びます。
前回の考察はコチラ