アニメ進撃の巨人The Final Season完結編 第一章『地鳴らし』感想と考察 隣人を愛したハンジと悪魔の子のフロック【ファイナルシーズン】
アニメ進撃の巨人The Final Season完結編 第一章『地鳴らし』の感想と考察。今回は第一章の後半のフロック。
予定ではフロックとリヴァイ&ハンジさんで1記事にするつもりだったんですが、思ったより長くなったんで分割しました。
- 個人的な感想を交えた考察です。考えるだけなら自由だ!
- 原作漫画の大きなネタバレは注意してますが、そうじゃないところでも察せられる程度にしれっと混じってるので、アニメ派の方はご理解の上でお願いします
- 過去の考察とかぶることもありますが、おさらい感覚でどうぞ
- なお、当考察は原作最終回以降エレン・イェーガーさんにとことん非情なので『エレン辛いよね。かわいそう……』と思っていたい方は、悪いこと言わんので即・引き返しましょう
水もしたたる悪魔の子のフロック
フロック登場までの演出がうまかったな……水滴……
原作の時といいふつーに疑問だけど、完全に死相の現れた顔で水滴ポタポタしながら登場って、ガビに撃ち落とされて船に貼り付いてからこれまでずーーーーーっと気絶してて、朝になってようやく目が覚めたってこと?
1.明るいうちに島出発
↓
2.夜にオディハ到着
↓
3.朝フロック登場
いやこれ、どんだけ水に浸かってんの。
気絶してなかったとしても、立体起動壊れて甲板まで上れなかった……? オディハに到着して明るくなるのを待ってたにしても、水中で待つ必要あった……? どっちにせよ、よく生きてたな……
しかも現れたタイミングが最悪すぎんだろ。エレン、始祖パワーで操った?(疑惑の目)
エレンのためにここまで尽くすの、一周回ってけなげすぎる。
フロック「何を犠牲にしてもそれでもキミを守るよ!」
指導者に必要なもの
現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』で、武田信玄が三河に送り込んだ女スパイの報告を受けるシーンがあった。
『肝は小さいが本人がそれを自覚している』という評価に、信玄は家康に興味を持つんだけど、どうやら信玄は『才覚』と同じくらい、あるいはそれ以上に『自覚の有無』というものを重視しているらしい。
なんで『自覚』がそんなに重要なのかというと、どれだけ優れた才能や武勇があったところで『自分はどういう人間か』という『自覚』がなければ道を踏み誤るからじゃないかと思うんですよね……
たとえば団長時代のシャーディス教官は『自覚』がなかった。口では立派なこと言ったって、本音は『すごいヤツだと認めてもらいたいだけだった』という『自覚』。
だから仲間を大勢死なせてしまった。
ハンジさんは『自覚』があった。『自分は無知である』という自覚が。
だから『知らないこと』を知ろうとした。
そして『自分は無力である』という自覚もあった。
だから『仲間』が必要だった。
『仲間』がいれば、どんなに強大な敵だろうと立ち向かえると知っていた。
エルヴィンに『自覚』がなかったら
『自覚』がないと何が起こるのかというと『手段の目的化』と『選択肢の消滅』だと思う。
もしエルヴィンに『自分は自分の夢のために戦ってる』という自覚がなけりゃあ、ひょっとすると地下室に行っちゃったんじゃないかって気がするんだよね……たとえばリヴァイの言うとおり敗走して、大勢の仲間とリヴァイを犠牲に次の『夢を叶えるチャンス』に賭ける、とか。
でも幸いなことに、エルヴィンには『自覚』があった。
『自分の目的』と『みんなの目的』は違うという自覚。
『自分の代わりはいる』という自覚。
『自覚』がないと『手段』を『目的』と勘違いし、さらには『自分の代わりはいない』と錯覚しちゃうんだろうと思う……『団長という立場が特別』なのであって『団長の自分が特別』ではないのに。
でも『自覚』があると『選択肢』が生まれる。『自分の夢』に逃げるか『みんなの目的』のために進むか。
自覚があったエルヴィンは、これまで散々死なせまくった仲間達の死の責任を背負って『みんなの目的』のために戦うことを選んだ。
自分をだましぬいたフロック
『自分や仲間をだましてる』という自覚があり『使命を果たす』という『責任』を背負って心臓を捧げたのがエルヴィンだったけど、自覚がないまま『使命のため』と自分をだましぬいたのがフロックだったと思う。
『島を救う』と『自分が生き残った意味』は別問題でしょ?
『島を救う』が目的だったんなら『ヒストリアに巨人継承してもらう』でもいいはず……
しかもフロックにはヒストリアの巨人継承を嫌がる理由がない。むしろ『みんな責任果たして死んでったのに、なんでこいつだけ女王としての責任から逃れられるんだ!』って怒ってもよさそうなんだけど。
昔のフロックは『エレンが特別なのではなくエレンの持つ巨人パワーが特別』って理解してて、エレンのことは『ただの同期』という位置づけで見てたはずなのに。
だけど『一緒に死ねなかった自分』を責めたり『自分が生き残った意味』に追い詰められて、『なにかにすがりたい気持ち』があったんだろうか? そこにエレンという『ちょうどいい悪魔』がするりと入り込んできた。
なんか、ものすごく人間臭い。
エルヴィンは『仲間も自分もだましてる』という自覚があったわけだけど、それをエルヴィンに『自覚』させたのがリヴァイをはじめとする信頼する仲間達だった。
孤独なフロック
フロックの悲しい所は『自覚させてくれる仲間』がいなかったことだと思う。エレンは『追加の酒注いでさらに酔わせてくるようなヤツ』だったし……
エルヴィンは『希望』で人を動かした。
だからエルヴィンが倒れても、後続の兵がリレーのように引き継いでくれた。
だけどフロックには『そういう人』がいなかった。
フロックは人を動かすのに『恐怖』を使った。
港での戦闘、たしかに率先して戦いに行ったのはすごいけど、同時に同胞を『恐怖』であおっていた。
まるで同胞の背中に銃突きつけてるみたい。
だからフロックがやられたと知ったとたん、みんな逃げてった。
人は『希望』を見ると『繋げる責任』感じて立ち向かうけど、『恐怖』には背を向けて逃げるから。だから出航を許してしまった。
確かに船で追いかけようとする人はいたけど、『希望』を繋げる責任背負った大人達に阻まれた。
とはいえ、少なくともいまわの際のフロックは、私欲のためでも恨みや憎しみでもなく『島のため』という純粋な気持ちだったように見えるんだよなぁ……罵るのではなく『頼む、行かないでくれ』と、まるで相手の気持ちを知った上であるかのように切実に『お願い』してるし……
船に貼りついている間に『自分はなんのために戦うのか』を自覚し、『ハンジさん達がなぜエレンを止めたいのか』を考え、これまで自分がしてきたことの『責任』を背負っての行動だったのなら、せめてもの救いがあるんだけど。(まあ、その結果ハンジさんが……と思うと複雑な気分だけど)
死に顔がすごく穏やかなんだよね……
フロックにとってエレンは『希望』だった。だからけなげに尽くしてしまったけど、結局エレンの『(都合の)いい人』にされちゃったね……
まあ、フロックもフロックで『俺はエレンの一番の同志です!』って振舞うことで権力手に入れようとしてたし、どっちもどっちなんだけど。
人類を愛する人と隣人を愛する人
フロックには『守りたいもの』がなかったんだろうなと思う。自分自身を含めて。
なんかの本で読んだけど『やさしさ』がない人は『人類を愛する』ようになるらしい。
一見『立派』なんだけど、そういう人は顔の見える『隣人』を愛さない。『やさしさ』がないから。
たとえば結婚して子供がいたりすると『家族』を守らなきゃいけないから、安易に仕事やめたり危険なチャレンジとか出来なくなる。
だけど同時に『守るべきもの』のためなら自分の命を危険にさらしてでも立ち向かうことが出来る。『守るべきもの』に対する『責任』があるから。
だけど『守るべきもの』がない人は、顔も知らない『すべての人』を守ろうとする。だから自分を粗末にし、親だったり友人だったり身近な人を苦しめ犠牲にすることをいとわなくなる。
『自分の命』に無責任だから『他人の命』にはもっと無責任。
エレンは『島を守る』に固執して、『愛すべき隣人』をおざなりにしてんのよね……
『人類』を愛するようになるとどうなるのかというと、まず、顔が怖くなる。いつも何かに腹を立てているから。
『隣人』を愛する人は、隣人が笑顔だと自分も幸せになる。そんな自分を見て、隣人も幸せになる。
ルイーゼもそうだったけど、若い人ほど『守るもの』がないから、頼まれてもいないのに勝手に使命感抱いて『世界』だの『人類』だのスケールの大きいことを言って命を粗末にして家族を泣かす。『調査兵団』に入っちゃうのはそういう人達だったのかも。
もちろん最初のきっかけは『人類を守る』というぼんやりしたものだったとしても、その最中に『守るべきもの』を見つけたり気づけたり出来る人は幸運なんだろうと思う。案外、ハンジさんはそのタイプだったんだろうか?
ハンジさんは『隣人』を愛していたから、巨人を知ろうとした。その結果、少しでも仲間の危険を減らそうと巨人捕獲装置や地獄の処刑人が生まれた。特に雷槍がなきゃ、シガンシナはトロスト区の時よりひどいことになってたよ……壁もないし……
ぶっちゃけ、リヴァイより圧倒的多数の『仲間』を守ったのは、自分の『無知』と『無力』を知ってたハンジさん。
結局、本当に一番『自覚』すべきは、『自分はなにをしたいのか』『本当に守りたいものはなにか』なんだろうと思う。
フロックだって『自分はなにをしたいのか』という『自覚』と『守るべきもの』があれば、ジャンみたいになれたかもしれないし、逆に『自覚』も『守るべきもの』もなければ、ハンジさんですらフロックみたいになっていたかもしれない。
『誰だって神にでも悪魔にでもなれる』というクルーガーさんの言葉は、人類への戒めだったね……
* * *
それでは今回はこの辺で。おもろかったら下にあるイイネボタンを押していただけると元気と勇気とやる気が湧いてきます(*´ω`*)ノ
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アニメ進撃の巨人The Final Season完結編 第一章『地鳴らし』感想と考察 不死鳥ハンジとリヴァイの呪い【ファイナルシーズン】
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アニメ進撃の巨人 The Final Season完結編 第一章『地鳴らし』感想と考察 明日をあきらめなかったラムジーくんと自由の奴隷のエレン【ファイナルシーズン】
とわこさん、こんにちは。2本の記事をありがとうございます。
フロックは、手段を目的にしてしまっていたので、地鳴らしで島以外を踏み潰された結果なんて眼中にも無いし、考えることなんてしていない。と私は考察しています。一応は島のみんなを守る為と口にしていても、顔の無い概念のヒトを守るだったのかもしれません。それよりも、エレンに地鳴らしを遂行させるために頑張った自分偉い、周りはもっと俺様を讃えよ、英雄だと讃えよとと、フロックの意図を拒む人をさっさと処刑し、鬼は外して、恐怖で自分の意見を口に出さない人、付和雷同するイエスマンなど、自分で考える事が出来ない人で周りを固めた感じですね。
ジーク祖父母が牢屋で地鳴らしを受け入れる描写を見て、ジークなら「あんたらが子供を産み出した結果が、この悲劇だ!その子供達が、地鳴らしで大地を踏みつぶさざるを得なかったんだ。だから、エルディア人の安楽死計画が大正解だったんだ。この悲劇を起こした原因は、じーちゃん達だから、報いを受けて当然」と考えていそうで、顔が見える肉親から慈しまれて育てられていても、受け取れなかったら無かったも同然と感じられました。ジークにとっては、クサヴアーさんとのキャッチボール、そこからの共感だけしか受け入れられなかった。
フロックとジークの共通点は、自分をエレンに投影して自分が受け取れるところを見て、全てをわかった気になっていた点だと感じています。
フロックも、王政クーデター以降に入団したメンバーで唯一生き残り、訓練兵団卒業後直ぐに調査兵団に入ったメンバーとは同期とは言え、壁を感じていた。エレンから共犯を持ちかけられて、存在意義を見出したのでしょうね。
人の幸せを願うなら、まずは自分を好きになり幸せになろう。エレンとフロック、ジークに伝わって欲しい言葉です。
コメントありがとうございます!
やはり『罪』を『罪』として認識しない限り、『罪人』にはならないってことなんでしょうか。
まさにフロックを始め、島民も世界も、自分が『いい人』でいるために『罪』に気づかない・ホントは気づいているけど考えることをやめて目を背けてる人達ばかりな印象でしたね。人類を愛し、隣人を愛さない人はどんなにひどいことをしても「これはみんなのためだから必要な犠牲だった!つまり『いいこと』をしたのだ!」と思っていそう……まさにフロックやジーク。
ジークだって、元々はライナーのように『親に喜んでもらいたい』って気持ちでがんばってただろうに、肝心の『喜ばせたい親』を自ら売り飛ばすという『矛盾』した行為に、すっかり歪んじゃったんでしょうね……
胸の奥にあった両親に対する『生まれてきてごめんなさい』という思いが『生まれてこなきゃよかった』として出てきちゃったんでしょうか。
ここで叱ってくれたら、ジークも少しは自分を好きになる努力をしたかもしれないのに、『そうだね!生まれてきたのが間違い!』なんて『大人として最高に言ったらアカンこと』言ったクサヴァーさんの罪は重い。
こんばんは。
ショートなコメントにて。
> いやこれ、どんだけ水に浸かってんの。
(≧∇≦)b 原作リアタイでフォローしていた時の記憶では概算2日くらいだったかな(*´ω`*)
フロックは根性があるんです。
フロック、自分を含めてその他大勢(の群集心理的なもの)を体現しているようで、違和感を感じさせないという意味で好感持っていました。
Q) 人を説得するにはどうすればいいのだろう?
A) 故なだいなださんの著作だったか、記憶では、その人が他者を説得させる方法が、その人を説得する(最短の)方法なのだと。(方法は、理屈、情実、損得、恫喝、哀願など様々)
であるならフロックの場合であれば、彼が恐怖で他者を支配しようとするということは、フロックの説得には恐怖が有効ということであり、エルヴィンやエレンが彼にとっての悪魔=恐怖であったということで、腑に落ちています( ^ω^ )
コメントありがとうございます~!
フロックは一周回って憎めない、いいキャラでしたね。いや、好きではないけど。
傍目には『強い指導者』のように振る舞っているんだけど、人の弱さが見えるのがそう思わせるのか。
恐怖には恐怖で説得。なるほどたしかに!
じゃあエレンを説得するには『自由』が有効ってことなんでしょうが、残念なのは、エレンが『自由』と『身勝手』の区別がついてないってことでしょうか……そりゃアルミンの思う『自由』を語ってもすれ違う。
この前、なんかの動画で『バカは説得で動かない。煽られて動く』というのを聞いて『なるほどなぁ』と思ったところです。まさにフロックに『恐怖』を煽られて動いた島民。そしてフロックもまたエレンに煽られて動き、エレンもまた『未来の記憶』煽られて動き……煽ってたつもりが自分もまた誰かに煽られて動いていたという皮肉。
『話し合い』って、相手にも『話を聞ける器の持ち主であること』が求められるんですよね……『理屈』とか『合理性』じゃなく、まるでイヤイヤ期の2歳児みたいな人には『説得』はマジで通用しない……うちの母ちゃんです(血涙)