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オーウェルの『動物農場』で考察する進撃の巨人 自由の翼なハンジさん【馬編】

動物農場で進撃の巨人考察

さて、『ジョージ・オーウェルの『動物農場』から読み解く進撃の巨人考察』後編。
後編ではお馬さん達、家畜サイドと、誰にも属さない稀代の変人の考察です。
やっぱハンジさんて最強だったんだな。

前編の豚さん編はコチラ(『動物農場』のあらすじもこちらです)

オーウェルの『動物農場』で考察する進撃の巨人 フロックはどの動物?【豚編】

個人の感想です。『あー、この人はこう解釈したんだなー』程度に読んでってください。
ネタバレは進撃の巨人コミック33巻までですが、少しだけ135話も含んでいます。ご注意を!

ロバと馬と馬と馬とその他の羊

前編は『豚グループ(支配者側)』のメージャーじいさん、スノーボウル、ナポレオン、スクィーラー、犬の考察しましたが、後編では『お馬さんグループ(家畜側)』として、ロバのベンジャミンと、馬のボクサー、クローバー、モリー、羊について考察していきます。
簡単に図にするとこんな感じかな。

動物農場

お馬さん組 ざっくりとした関係図

無垢なる羊たち

にぎやかしのような存在。
自分ではなにも考えず、教えられた言葉を意味もわからんまま復唱し、会議をうやむやにしたりと、羊自体は役に立っていないのに、集団でなんの悪気もないぶん逆にやっかいな存在。
最初は『四本足良し! 二本足ダメ!』だったのが、豚に教え込まれ『四本足良し! 二本足もっと良し!』を連呼するようになる。

この羊ポジションはまさに島民。王政に利用され、兵団に利用され、そしてイェーガー派にも利用されてることに気づかないでいる。
ブン屋のピュレさんも、かつては素直な『羊』だった。

進撃の巨人60話[ 諫山創 ]

進撃の巨人60話[ 諫山創 ]

マガトさんが『マーレ人は新聞でしか戦争を知らない』と皮肉ってましたが、島民も同じで、『新聞見ただけで世界のすべてを知った』つもりになってて、『地鳴らし』によって外の世界がどうなってしまうのかも、エレンがどういう気持ちで地鳴らしを起こしたのかも考えてないと思う……まあ、考えてもしゃーないのもわかるけど。
そういう意味では、『無垢の存在』とも言えるのかなぁ……

そして『無垢の巨人』も、それ自体はなんの意味があって人を食うのかわからんまま人食ってる。
でもって『羊』のように『始祖の巨人』の言うことは聞くんですよね。
ジークのSOSをキャッチした始祖ユミルちゃんが、無垢の巨人を操ってジークを救助したってことは、『無垢の巨人』は『始祖ユミル』の『支配下にある』ってことになる。

これって『豚』にとっての『羊』みたいに、ユミルちゃんにとっての『都合の良い子』が『無垢の巨人』ってことになる……それに、巨人じゃなくても、島民の記憶も改竄出来るんでしょ?
じゃあ、今、『自分の意思』で動くようになったユミルちゃんは『奴隷』というより『全ユミルの民(羊)』にとっての『支配者(豚)』ってことになるよ……?

無力なクローバー

ボクサーと仲良しの雌馬。ボクサー同様、動物主義の信奉者。
作中ではベンジャミンと共に最後まで生き残るが、ベンジャミン同様『なにもしてない』部類に入る。

ベンジャミンやボクサーとの違いは、クローバー自身が知恵のあるほうではなく、文字もそんなに読めないし、ボクサーみたいに力持ちでもない。そして『新しいこと』を考え出すのも苦手だった。
モリーの行動が怪しいと気づいた時も、何も出来ず終い。
ボクサーがお肉にされた時も、何も出来ず終い。
出来たのはせいぜいボクサーの体をいたわり、手当てしてあげたり、仲間を見守ることくらい。
そういう意味では『何もしなかった』というより、『何も出来なかった』『無力な存在』と言える。

そんなクローバーはウーリとフリーダでしょうかね。『壁の王』としてではなく、『ただのウーリ』と『ただのフリーダ』個人が。
元々は『先祖の亡霊になんか負けない!』と『不戦の契り』を破る気満々で継承したのに、結局何も出来なかった。

進撃の巨人68話[ 諫山創 ]

進撃の巨人68話[ 諫山創 ]


『始祖の巨人』というとてつもなく強い力を持っているのに、『当の本人は何も出来ない無力感を抱いていた』というのは、諫山先生がアンサーズのインタビューでも解説しています。
平和な世の中なら、ふつーにいい人達だったんだろうけど。

もしかしてジークが『不戦の契り』を破れたのって、元々『初代壁の王』と似たような思想持ってたからじゃあ……『不戦の契り』発動する必要なかったっつーか。

『力』はあるのに『クローバー』なアッカーマンズ

あと、リヴァイ兵長やミカサ、ケニーと、アッカーマンの皆さまも『めちゃくちゃ力のあるクローバー』と言える。

リヴァイ本人は超人なのに、周りの仲間はみんな死んでいく。なのに自分は生き残る。しかもエルヴィンの特攻も、ハンジさんも、自分の力ではどうすることも出来なくて、見送ることしか出来なかった。

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

ミカサも同じで、どんなについて行こうとしても、エレンはどんどん遠くに行っちゃう。

進撃の巨人45話[ 諫山創 ]

進撃の巨人45話[ 諫山創 ]

『力さえありゃあいいんだよ』と『暴力』を信奉していたケニーも、巨人の力の前には『無力』だった。

進撃の巨人69話[ 諫山創 ]

進撃の巨人69話[ 諫山創 ]


だから同じ『無力感』を抱いていたウーリと仲良くなれたのかも。

『希望』がなかったベンジャミン

作中では、豚並みに文字を読めるロバのじいさん。クローバーと一緒に最後まで長生きした。
皮肉った物の見方をしていて、気むずかしいが、馬のボクサーとクローバーとは仲良し。しかし、基本はなにもしない傍観者。
『飢えと苦しみと絶望だけが人生』と皮肉っていたが、『何もしない』からこそ『絶望的な人生になった』とも言える。

『何もしない』を選択したという点では、ヒストリアはベンジャミン。実質、ヒストリアはエレンがしようとしていることを知っていながら何もしなかった。
シャーディス教官は、団長時代はクローバーだった。そしてその後は『クローバー寄りのベンジャミン』をやってたけど、この人は最後の最後で『自由の翼』を背負って戦う道を選択した。だから最後はベンジャミンじゃない。

なぜシャーディス教官がベンジャミンをやめたのかというと、『希望』を見たから。
まず、プチ反抗期を起こしてた109期が『教官は俺達が守る!』なんてかわいいことを言い出した。(否定からの肯定)
さらにその後、かつて『殺し合い』をしていたはずのアルミン達とアニが『共に戦う道』を選択した光景に、『否定し合うことがあってもいつか理解し合える』と『希望』を抱いた。

進撃の巨人129話[ 諫山創 ]

進撃の巨人129話[ 諫山創 ]


だからそれがどんなに小さな『希望』でも、『それを否定する者』と戦う道を選択した。
教官は『元々そういう人』だったから、ハンジさんはあこがれたんですかね? 知らんけど。
進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

ベンジャミンには『希望』がなかった。
だから『何もしなかった』んだけど、その結果、仲良しのボクサーが体を壊すまで働き続け、廃馬処理場に連れて行かれる結末になったんですよね……
『他の動物よりも文字を読める』『皮肉を言える』って、『それだけの知恵がある』ってことでもあるはず。そのおかげで、ボクサーが乗せられた馬車が、廃馬処理場行き(豚に騙されてる)と気づくことが出来た。(これ、逆に文字読めないほうが幸せだったんじゃあ……)

『何もしない』は何も悪くない?

知恵あるベンジャミンは、豚たちの行動が、どう考えてもメージャーじいさんの思想とかけ離れたものだと理解していた。でも何もしなかった。なんかしたところで『今より暮らしが良くなる』なんて『希望』がなかったから。
もし、ベンジャミンがどこかのタイミングで本気出して豚と戦っていれば、たとえ返り討ちにされたとしても、『人生は絶望だけ』なんて結末にはならなかったかもしれない。ボクサーも、豚の奴隷になっていることに気づいて、目を覚ましたかもしれない。でも『希望』がなかったから何もしなかった。むしろ『希望』を見ようともしなかったのかも。
その結果、仲良しのボクサーは働き続けた末にお肉にされ、その頃にはベンジャミンも年を取って何も出来なくなっていた。
ボクサーをお肉にしたのは、豚であり、ベンジャミンでもあった。

ヒストリアも『地鳴らし』の意味を理解していて、だからこそ一度はエレンを止めたはずなのに、結局『何もしない』を選んだ。

進撃の巨人130話[ 諫山創 ]

進撃の巨人130話[ 諫山創 ]


しかもヒストリアは女王様。たとえお飾りだろうと『力がまったくない』ってわけでもない。でも、『壁の王』と同じように何もしなかった。
結果、仲良しのサシャは死に、その時ヒストリアは妊娠中で何も出来ない体になっていた。
そして兵団の上層部も、島の多くの住民も、イェーガー派も、ハンジさんも、大陸の命も大勢失われ、エレンも本物の『怪物』になった。

『何もしない』もまた、罪。

ヒストリアがエレンに協力した理由

じゃあ、ヒストリアがエレンに協力したのは、『未来の希望のため』でもなんでもなくて『希望を失ったから』ってことになるな……
『子供作るのはどう?』の段階では『希望』を持ってるような顔してたけど、その後、なんか絶望的なこと言われたんだろうか……エレン、反対するどころか『それ採用!』なんて言ってないだろうな……(なお、『ヒストリアに家畜みたいに子供産めってのか!』ってキレてたのがエレン)

進撃の巨人130話[ 諫山創 ]

進撃の巨人130話[ 諫山創 ]


もしそうだとしたら、妊娠した時『あ、マジで出来てもーたわ……』と絶望したってことになるんですが……
自分が親にされたことを、今度が自分が我が子にやってるってことになるジャン……『子供』って『希望の象徴』みたいなもんのはずなのに、ヒストリア的におなかの子は『絶望の象徴』になっちゃうよ!
進撃の巨人52話[ 諫山創 ]

進撃の巨人52話[ 諫山創 ]


もしそうだとしたら、大丈夫かヒストリア。仮に長生き出来たとしても、104期ユミルが浮かばれないんですがそれは。

オールを豚に丸投げしたボクサーと自分で船を漕いだモリー

ボクサーは、自分で考えることは苦手だけど、力持ちでよく働き、他の動物たちからも尊敬されていた。
豚の言うことを素直に信じ、『ナポレオンは正しい』『ワシがもっと働こう』と働きまくる。
が、最後は無理が祟って体を壊し、豚に『病院に行こうね』と騙され廃馬処理場へ送られるという、まさにキング・オブ・社畜。そしてその廃馬処理場へボクサーを運んだのも『馬』が引く馬車。

モリーは自分とリボンと角砂糖大好き女子で、文字は読めないし『動物主義』もイマイチ理解出来ないという、いわゆる『おバカキャラ』なポジション。
早々に豚に見切りをつけ、よその人間のところへトンズラこき、リボンも角砂糖も手に入れたちゃっかり者。

登場動物の中で、個人的に一番不憫であり、一番愚かだと思ったのが馬のボクサーで、一番かしこいなと思ったのが白馬のモリー。

ボクサーみたいな『働き者で正直者』といういわゆる『善人』キャラって、童話じゃ最後は報われて幸せになるもんなんですが、何一つ報われることなくお肉にされるって、この辺リアルだな……

一方で、ボクサーと真逆なのがモリー。
このモリーのすごさは『自分の欲望に正直だった』ところ。
『動物主義』の下では、自分が好きだったものを否定されるわ辛い労働を強要されるわと不満を溜めていく。
そしていなくなったと思ったら、よその人間のところでそこそこ働きながら、ちゃっかりリボンも角砂糖も手に入れた。

とまあ、他の動物達からするとモリーは『ずるい裏切り者』なんですが、なぜかその『ずるい裏切り者』のほうが望んだものをちゃんと手に入れている。
一方で、豚の言葉を信じて真面目にひたすら働いたボクサーは、何一つ報われず、お肉にされた。
同じ『馬』であり、知能だって両者そんなに高くない。にもかかわらず、その結末は雲泥の差。
これはどうしてでしょう?

明暗分かれた2頭、宙船に乗って

この2頭のことを考えてて、思い出したのがTOKIOの名曲『宙船(そらふね)』。

その船を漕いでゆけ お前の手で漕いでゆけ
お前が消えて喜ぶ者に お前のオールをまかせるな

オールを豚に丸投げした結果、こき使われた末に廃馬処理場へ消され、お肉になって豚を喜ばせたのがボクサー。
『豚に任せられっか』と、自分のオールで自分の船を漕ぎ、居着く先を自分で決めて欲しいものを手に入れたのがモリー。

ボクサーのダメなところは、『自分の頭で考えなかった』こと。たしかに作中でも『自分で考え、何かを生み出すのは苦手』と書かれていますが、『自分が楽しく生きるにはどうすればいいか』でさえも考えなかった。
一見、『責任感の強さ』から人一倍働いたように見えますが、『自分の人生』に関しては『人一倍無責任だった』とも言えます。(『自分』を幸せに出来るのは『自分』だけ)
盲目的に豚を信じたのは『自分のオールを豚に譲渡した』も同然。だから『ボクサーのオール』を握っていた豚は、『もう働けません』となったボクサーに『最後のお仕事』としてお肉になってもらった。
ボクサーもボクサーで、『オールを豚に譲渡』した瞬間から、豚とは『対等の関係』ではなくなっていた。つまり自ら『豚の奴隷』になった。

一方で、モリーは守るべき『大切なもの』があった。それは自分。
動物主義のすばらしさを教える豚に『反乱の後もお砂糖はあるの? リボンをつけるのは?』と聞いたのは、モリーには『大切なもの』がはっきりしていていて、そしてそれは、他のどんなものより『重要』だったから。
それが守れるなら『動物主義』を支持しても良かったんだろうけど、豚が『それはダメ』と言ったから、モリーは豚にさっさと見切りをつけた。

もしボクサーが元気なうちに『これ奴隷ジャン!』と気づいて、自分のオールを取り戻しに豚と戦う選択をしていれば、自分だけでなく農場の他の動物達も追随して救われたかもしれないけど、ボクサーは自分の頭ではなんにも考えなかったから、『自分ががんばってみんなより多く働けばいいんだ』と『豚の奴隷』になってることにすら気づかなかった。
少ない報酬でよく働いてくれるから、豚はどんどん仕事を増やし、ボクサーのがんばりで増えた分の収穫は自分達で食べた。
つまり、豚を肥えさせたのはボクサーであり、ボクサーをお肉にしたのもボクサー。

世の中には『不真面目なのに楽しそうに生きてる人(モリー)』と『誠実で真面目なのに不幸な人(ボクサー)』がいるけど、『自分のオールを人任せにしてるかしてないか』の違いではないか。そんなことを考えさせてくれる2頭でした。

モリーにならなかったジャンとボクサーになったアイツ

さて、このモリーのちゃっかりした感じ、進撃で言うとヒッチがこのタイプかな。おいしい思いをするために憲兵団を目指し、そして報酬に見合う仕事をちゃんとこなしてますからね。
そしてジャンも、本来ならモリーになれる素質があったのに、『マルコの死』はそれを凌駕するくらい大きなものだったんだろうな……お前ってヤツは……(;ω;)

進撃の巨人18話[ 諫山創 ]

進撃の巨人18話[ 諫山創 ]

でもってボクサーは、進撃で言うところの、始祖ユミルちゃんでしょうね。最後、お肉になっちゃうとこまで似んでも……(豚はボクサーのお肉でウィスキーを買った。初代王はユミルちゃんのお肉で娘達を巨人にした)

あと、フロックもある意味ボクサーなんですよね。
悪魔的思想に取り憑かれ、エレンが語った『世界が滅びればみんな幸せ!』を盲信し、自分を犠牲にめっちゃがんばった。

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]


『スクィーラー』であり『未来のナポレオン』であり『ボクサー』でもあったのがフロック。

フロックが、結局『ナポレオン』になれなかったのは、『進撃の巨人』にはハンジさんがいたから。
『動物農場』には、最初から最後まで『ハンジさん的存在がいなかった』から、ナポレオンもスクィーラーも『めでたしめでたし』で終了することが出来た。
『ハンジさんの有無』によって、スクィーラー・フロックがナポレオンになり、ボクサーにもなれるってのは面白いなぁ……
フロックが『単なる嫌われキャラ』のまま終わらず済んだのは、ある意味ハンジさんのおかげ。

否定する家畜たちと否定しない野生動物たち

そもそも論として。
豚が読み書きをマスターしてんのがおかしいんですよね。
いや、『これそーいうおとぎ話でしょ』という意味ではなく、『あなたががんばって覚えたその文字、人間が作ったものですよね?』という意味で。

『人間を否定』しているのに『人間の本』で『人間の文字』を覚え、『人間の道具』で『人間が建てた建物の壁』に人間を否定する言葉を『人間の文字』で書いた。
お前これもう人間大好きだろ。

進撃の巨人62話[ 諫山創 ]

進撃の巨人62話[ 諫山創 ]

しかも人間追い出した後、当たり前のように収穫を行い、人間の書物で人間の知識を得て、農場の仕事を続けるという……いや、『農場』って『人間が』生計立てるために作った施設でしょ……山とか森行って自由に暮らすんちゃうんかい。なんでこの子ら、人間みたいに『仕事』しとるん……
そしてそのことに関して、誰一人ツッコミを入れる者がいない。そら、豚も人間になるわ。(もちろんそういう点は度外視して書いてるだけなんでしょうが)

動物達には『動物独自』の『文化』がなかった。だから『人間の文化』を取り入れていった。
その結果、一番『人間の文化』に詳しくなった豚は『人間』になった。
本当に人間を否定するんなら、自分ら独自の文字を作り出すくらいしなきゃダメってことでしょうね。
豚を人間にしたのは豚であり、農場の動物達。

一方で、野生動物は豚達の訴える『動物主義』に一切興味を示さなかった。少なくとも野生動物は、人間を『否定』してないんですよね。
これ、当然っちゃあ当然で、野生動物は別に人間に支配されていないし、恨みもない。そりゃあ人間に狩られることはあるけれど、狩るのは人間だけじゃないし、人間を狩るヤツだっている。
幸せな人に宗教の勧誘したって感心もたれないのと一緒。宗教にのめり込むのは不幸な人。

エレンは誰だ?

気になるのがエレンなんですよね……ポジション的に、エレンは『メージャーじいさん』であり『ナポレオン』なんだろうけど、どう見ても『今のエレン』は『豚』には見えない。
むしろ、最初はナポレオンと見せかけて、気が付きゃすっかり『豚の奴隷』になってたボクサーじゃない?
そして『未来の記憶に従う(何もしない)』と決めた点に関しては『希望を持たないベンジャミン』とも言える。

進撃の巨人131話[ 諫山創 ]

進撃の巨人131話[ 諫山創 ]


エレンさん、お顔がユミルちゃんと同じになってるけど、もしかしてユミルちゃんは『自分のオール』を取り戻したんじゃなくて、『エレンのオール』をいただいたってこと?
進撃の巨人133話[ 諫山創 ]

進撃の巨人133話[ 諫山創 ]


じゃあ、エレンは『絶望したボクサー(家畜)』で、ユミルちゃんは『ナポレオン(豚)』ってことになるよ?

このご夫婦大丈夫? 乗ってるの『宙船』じゃなくて海賊船になってない? エレン、海賊旗みたいにホネホネの体にされちゃったし、巨人ストラップ大量にぶら下げられる魔改造までされちゃったし。これ、ユミルちゃんのセンスだよね?

進撃の巨人135話[ 諫山創 ]

進撃の巨人135話[ 諫山創 ]


ユミル「美しい……」

そしてユミルちゃんがナポレオンであるなら、エレンに多額の保険金も掛けてるなこれは。(『お前が消えて喜ぶ者にお前のオールを任せるな』ってそういう……?)

かつてリヴァイ兵長に『コイツの意識を服従させることは誰にも出来ない』と言わしめた男を、出会って4日で尻に敷くとは、やりますね奥さん……

進撃の巨人25話[ 諫山創 ]

進撃の巨人25話[ 諫山創 ]

ユミルちゃんがナポレオンでエレンがボクサーでリヴァイがクローバーでヒストリアがベンジャミンなら、最後、『奴隷』のエレンは『お肉』になって『支配者』のユミルちゃんを喜ばせ、『無力』なリヴァイが『思想』を後世に伝え、『何もしない』ヒストリアが『絶望だけが人生だよね……』で〆になるんでしょうが、『進撃の巨人』には『動物農場』の誰にも属さないハンジさんがいた。

『自由の翼』のハンジさん

『動物農場』の動物の中に『最初から』人間を肯定してた動物っていないんですよね。
しいてあげるなら『野生動物』がそれっぽいけど、野生動物はたしかに人間を『否定』はしなかったけど、別に『肯定』もしていないし、農場の動物でもない。
だからハンジさんは、『動物農場』の誰にも当てはまらない。

エルヴィンはある意味『豚』のポジションだけど、どの豚にも当てはまるようで、どの豚とも違うような……それに『自分の夢を大事にしてた』って部分に関してはモリーっぽい。
メージャーじいさんの思想とスノーボウルの知性とナポレオンの狡猾さだけを足してモリーで割ったのがエルヴィン?(どんなんや)

『思想だけ』だったメージャーじいさんは豚に否定された。『力だけ』だとナポレオンになる。

これまで『巨人を否定』するやり方してた調査兵団にモヤモヤしてたエルヴィン団長は、エレン登場で『やっぱこれ、巨人やっつけりゃええってもんちゃうわ』と確信し、『巨人を否定しない』ハンジさんに調査兵団を託した。なぜなら『否定するやり方』がうまく行かないことはすでにわかっていたから。

進撃の巨人20話[ 諫山創 ]

進撃の巨人20話[ 諫山創 ]

そしてエルヴィンから調査兵団を託されたハンジ団長が、調査兵団の『思想』を完成させた。

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]


そして『巨人の力』を持っているアルミンへと『思想』が継承され、ついに『力』と『思想』両方備わったのが今ってとこでしょうか。

つまりエルヴィンがフシギダネでハンジさんがフシギソウでアルミンはフシギバナなんだよ! あとはトレーナーとのキズナの力でメガシンカするだけだ! 知らんけど!(何故突然ポ●モンになる)

アニ「行くよアルミン! メガシンカ!」
アルミン「キョダイマックスじゃないの!?」
ミカサ「石になってたから……!」

進撃の世界に『ハンジさん的存在』がこれまで一切いなかったとは思わないけど、恐らく『巨人の力』が圧倒的すぎて、潰されてきたんだろうなぁ……
仮に『動物農場』にいたとしても、数の暴力で一番最初に追い出されそうだし。

進撃の狂人・超人・変人トリオ

進撃の狂人・超人・変人トリオの中で、ハンジさんだけが幼少期の話が一切出てきてないんですよね。エルヴィンは自分のせいで父親を殺された。リヴァイは悲惨な生い立ちだった。
そういう話が出てこないのって、逆に考えると『幸せな子供時代』を送っていたからなんじゃあ……
ここからは完全に想像だけど、ハンジさんは誰からも否定されることなく、ありのままを肯定されて育ったから、巨人さえも肯定できたの?(巨人を憎んだ時代もあったろうけど、『理解』することで乗り越えた)

エレンも幸せな子供時代だったと思うんだけど、壁の存在に気づいた瞬間、『許せない』と怒りを覚えたのは、壁に『自分の自由』を『否定』されてるように感じたから? 『否定されてる』と思ったから、『否定』し返すために調査兵団を目指した?

進撃の巨人73話[ 諫山創 ]

進撃の巨人73話[ 諫山創 ]

一方でハンジさんは、壁の存在に気づいても『こっちから向こうに会いに行けばいいじゃない!』と『壁の存在』を『肯定』した? だから調査兵団に入ったの?

進撃の巨人108話[ 諫山創 ]

進撃の巨人108話[ 諫山創 ]

『存在を否定』することで自らを『不自由』にしたのがエレン。
『存在を肯定』することで最初から最後まで『自由の翼』だったのがハンジさん。

そんなハンジさんが唯一否定したのが『存在を否定』すること。だから地鳴らしを止めに行った。

進撃の巨人127話[ 諫山創 ]

進撃の巨人127話[ 諫山創 ]


『誰か』が『誰か』を『否定』する限り『順番』が回り続けるのであれば、それを止められるのはその『逆』が出来る人しかいない。だからエルヴィンはハンジさんに調査兵団を託した。

そんなわけで進撃の巨人すげぇ人選手権ぶっちぎりの第1位は、登場から退場まで『巨人の存在』を肯定したハンジさん。

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

進撃の巨人132話[ 諫山創 ]

* * *

『動物農場』、考察がたぎる面白いお話でした。(結果として『ハンジさんの自由の翼っぷり』の再認識になってしまうという……)
ちなみに、個人的に『進撃』を連想した話は、現実にあった事件かなぁ……昔の学生運動とか。どんどんエスカレートしてく感じが。

漫画なら『寄生獣』も『存在の否定』から物語が始まり、最後は『存在を肯定』して終わる感じは共通してるかも。描写も結構グロいし。(原作はガラケーすらない時代の漫画ですが、数年前に映画化やアニメもやってたんで、知ってる人は多いと思う)

『人間を否定』していたのが実は『人間』で、当の寄生生物たちは最終的に『人間』としてちゃっかり生き延びる感じも、『人間の肯定』ですね。田宮良子、今思うとハンジさんタイプだなぁ。(性格全然ちゃうけど)

『人生なんて無意味だ』って小説も、『人生を否定』するピエールを『否定』するために、クラスメイト達のやることがどんどんエスカレートしていき、最終的にやらかしたことが『ピエールを肯定しているも同然』な感じが似てるか?

お互いがお互いを『否定すること』から物語が始まり、形はどうあれ『肯定』することで物語が終わるってのは、どんなお話にも共通してるのかもしれません。知らんけど。

それでは、今回はここまで。
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進撃の巨人136話 心臓を捧げよ 無限車力のピークちゃんとジャン 感想と考察

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オーウェルの『動物農場』で考察する進撃の巨人 フロックはどの動物?【豚編】

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